『ふしぎ電車』は2003年にWIN用として、デジアニメ・コーポレイションから発売されました。
ループする電波ゲーとしても有名な本作。
鬼才・田所広成さんらしい作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
作品紹介・・・酔いつぶれて見知らぬ町で目を覚ました主人公。
謎めいた‘少女車掌’に促され、彼は一日一本片道運行の路面電車に乗り込む。
停車駅はどこもシュールな町ばかり。
「不条理の町」「戦争の町」「サイケデリックの町」「SMの町」「想い出の町」……それぞれ町にいるヒロインとの不条理とエロスに満ちたセックスを体験し、終着駅に突き進む。
しかし、そこは出発した駅。
夜明けまでバーで飲みあかし、全ての記憶のなくして再び電車に乗り込む……。
どこかレトロで文芸調な言葉で表記されたジャンルは‘無限ループ・アドヴェンチュア’。
いつ果てるともなく繰り返す路面電車の旅は、回を重ねるごとに新たな選択肢、新たな展開が出現し、プレイヤーをさらなるエロスの迷宮に誘う。
果たして、このループを脱出する手段はあるのか?
作品の持ち味はよくあるファンタジーやSFとは異質で、不条理漫画の傑作「ねじ式」(著・つげ義春)や、言葉の魔術師と謳われた詩人‘寺山修司’の映画やテント芝居の世界――いわゆる「アンダーグラウンド」に属する。
理論と客観性を排除して欲望と本能を直感的に感じさせる方法論から、本作を心理学史最強のエロジジイであるフロイトが描いた「銀河鉄道の夜」と評する声もある。
ありきたりなエロゲーで満足できなくなった玄人のアナタ、ともかくたっぷりとオカズシーンを楽しみたいアナタ――そんなアナタに是非オススメしたい!
<はじめに>
発売時期、紹介や宣伝の仕方は、本来は作品の内容と関係のないものです。
しかし、そういった作品の内容と直接関係ないものにより、作品の運命が大きくかわってしまうこともあります。
本作を発売したのはデジアニメであり、代表は菅野ひろゆきさんです。
そして、本作のシナリオを担当したのは、田所広成さんになります。
この2人のコラボを最初に目にしたのは、2002年発売の『仄かに視える絶望のmemento』でした。
ゼロ年代にエロゲを始めた人だと、あまりピンとこないかもしれません。
もっとも、菅野ひろゆきさんの方は、剣乃ゆきひろ時代の作品が家庭用ゲーム機に移植もされましたので、それで知った人も結構いると思います。
他方で、田所さんの方は、移植できないような濃いエロゲだったり、複数の名義で作品を出していたことから、その功績が後世に伝わりにくくなっています。
田所さんは、調べて知れば知るほど、凄い人だったと分かるはずなのですが、エロゲ業界で最も過小評価されているクリエイターの一人でしょうね。
そういう方たちなので、PC98時代のアダルトゲームを、詳しく知っているユーザーであればあるほど、この二人のコラボというものに衝撃を受け興奮したと思います。
当然ながら、私も非常に期待していたのですが、この期待は大きく裏切られることになりました。
というのも、『仄かに視える絶望のmemento』は発売されましたが、事実上、2人ともこの作品に関わっていなかったのです。
私のように大きな期待を寄せていた人ほど、2人への失望は大きなものだったでしょう。
前年にそのようなことがあったため、翌年の2003年にデジアニメから田所作品が発売されたとしても、しばらく興味を持つことができませんでした。
私と同じような人も、おそらく結構いたでしょう。
また、本作は無限ループと称しているように、ループ系の作品になります。
ループ系の作品自体は、ADVと相性が良いように思います。
しかし、ループ系作品ばかり増えてくると、どうしてもどれも似たような感じに思えて、食傷気味になってきます。
私は、2001年の頃には既にループネタに飽き始めていましたし、むしろ欠点の方が目立ち始めていたことから、2003年頃にはループ系というジャンルに対しては、ほとんど興味が薄れてしまっていました。
ゼロ年代に入ってからエロゲデビューした人は違うかもしれませんが、古くからアダルトゲームをプレイしていた人ならば、おそらく同じような印象を抱いていたのではないでしょうか。
本作は、『仄かに視える絶望のmemento』とは異なり、菅野×田所という部分を前面に押し出していませんでした。
『仄かに視える絶望のmemento』の件があることから、また菅野×田所と言われても、ふざけんなと思う人もいるかもですが、一定数はもう一度だけ期待してみようと思ったでしょう。
しかし、上記のとおり前面に押し出していなかったことから、本作は『仄かに視える絶望のmemento』ほどの注目を浴びませんでした。
他方で、詳しく調べていた人なんかだと、本作が田所作品だと分かっていたかと思います。
しかし、菅野×田所ないし田所作品に興味を持つ人なんてのは、古くからのユーザーなのでしょうが、上記のとおり1度期待を裏切っていることから、本作が田所作品と知っていても、すぐには手を出しにくかったでしょう。
また、本作の題材がループであるという点も、上記の理由から、古くからのユーザーにとっては、
むしろ関心を失わせるものだったかと思います。
本作は、全然売れなかったようですが、以上からも分かるように、売れなかったのもある意味当然なのでしょう。
もし菅野×田所と前面に押し出した最初の作品が本作だったら、そして本作の題材がループではなかったら、或いは宣伝の際に、ループではなく不条理の方を強調していたら、本作はもっと多くのユーザーに知られていたことでしょう。
そう考えると、本作は発売時期や宣伝の仕方次第では、今と大きく異なる結果になっていたように思います。
<感想>
さて、前置きが長くなりましたが、問題は肝心の中身です。
本作の紹介の仕方については、プレイヤーの世代によっても、少し変わってくるのではないでしょうか。
90年代末からゼロ年代前半にかけて、ループゲーが増えました。
また、2000年前後は、知名度こそ低いものばかりですが、なぜか電波ゲーが増えた時期でもあります。
マニアックな電波ゲーをプレイしたければ、この時期の作品を探すのが良いですしね。
本作はループゲーでありつつ、不条理な内容を扱ったことにより、電波ゲーとしての側面も強く有しています。
そのため本作は、ループ+電波ゲーということができるのでしょう。
上記のとおり、本作の発売当時、ループゲーや電波ゲーが増えていたため、その両方の要素を組み合わせたのが本作ということもできます。
もっとも、この2つを組み合わせた作品が他にないことから、この時期にエロゲを始めた人には、とても新鮮で異質な作品に見えたのではないでしょうか。
他方で、昔の漫画を好む人に紹介するならば、「ねじ式」+「銀河鉄道999」となるでしょうか。
また、ゲームという観点からも、PC88やPC98の中には、不条理な内容の作品も少なからず存在しており、本作をプレイしていると、斬新とか異質と感じるのではなく、むしろどこか懐かしさすら感じてきます。
私はどちらかというと、90年代前半の頃の作品をプレイしているようで、心地良い懐かしさを感じながらプレイしていました。
また、本作は、一見すると意味不明な不条理ゲーのようなのですが、じっくりプレイしていると、どこか哲学めいて見えてきます。
その辺りが、田所さんの上手さなのでしょうね。
本作は、田所さんが一番やばい時に作られたということで、作品内にもその狂気じみたところがあらわれています。
他方で、数々の名作を作ってきたその実力が、哲学めいたものとして作中にあれわれているのでしょう。
本作は、その両者が絶妙に組み合わさることにより、噛めば噛むほど味わい深くなる独特の雰囲気につながったのだと思います。
本作は全然売れなかったことから、知名度はほとんどありませんが、その割には今でも根強いファンがいるようでして。
そのようなファンがいるのは、こうした理由からなのかもしれません。
また、冒頭のちんどん屋っぽい音楽とかも、本作のカオスな雰囲気に合っていて良かったです。
冒頭からあんな音楽を用いるなんて、普通はありえないですし。
以上のように、本作の持つ独自の世界観は素晴らしいのですが、他方で欠点も存在します。
まずは、ストーリーの展開が単調なことが挙げられます。
電車に乗って、どこかの町で降りて、何かエピソードはあっても、オチは結局電車に戻ることになりますので、展開の幅が少ないです。
加えて、本作はループゲーであり、何周もすることになります。
もちろん、細かな変化はあるのですが、その細かな変化だけで全く飽きずにプレイできる人というのは、少なくとも多数派であるとは思えません。
それから、グラフィックもしょぼかったですね。
ストーリーやグラフィックというのは、ノベルゲームの中でも大きなウェイトを占める部分ですから、どうしても本作は地味に感じられてしまいます。
したがって、テキストの持つ魅力に魅了されたユーザーはともかく、そこまでハマれていないユーザーだと、プレイしていてだれやすいように思います。
まぁ、そういう本作の持つチープさ、強烈な個性はあるのに、グラフィック等がチープに感じられるのも、PC98時代までのマイナー作品に見られる傾向ですので、そういう作品が好きな人であれば、本作は十分楽しめるのでしょう。
<評価>
ゼロ年代からのユーザーにとっては、新鮮で異質な存在として、80年代や90年代前半からのユーザーにとっては、どこか懐かしさすら感じられる存在として、本作は在るように思います。
私は後者ですので、新鮮な驚きではなく、懐かしさからくる心地良さの方が強かったですね。
どこまでも知る人ぞ知るマイナーな良作感の漂う本作ですが、魅力だけでなくマイナスな要素もいろいろあることから、総合では佳作としておきます。
関係者がもうほとんどいなくなってしまい、もう少し早くこの作品の記事を書くべきだったのでしょうが、それを言い出しても仕方ないですからね。
本作は癖のある作品であることは間違いなく、『書淫、或いは失われた夢の物語。』とかと同じように、長所短所が明確な作品であることから、合う合わないがハッキリ分かれやすい作品ではあるのですが、もし未プレイだけど興味を持ったという人がいれば、ぜひプレイしてみていただきたいですね。
ちなみに、パッケージ版はプレミア化しているのですが、DL版なら安くプレイすることができるようです。
Last Updated on 2025-08-29 by katan




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