ハルカの国 ~大正星霜編~

2020

『ハルカの国 ~大正星霜編~』は2020年にWIN用として、スタジオ・おま~じゅから発売されました。

シリーズ3作目になります。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
選択肢や分岐もなく、完全な1本道になります。

あらすじ・・・
時代は進み、近代化の波にのまれる大正。
東京の片辺で暮らすユキカゼが、営みなかで見つめる絆と、やがて訪れる別れの物語。

<感想>

本作は『ハルカの国』として、全6章が予定されている中の3作目になります。
続きものになりますので、必ず1作目からプレイするようにしてください。

本作に対する私の基本姿勢や、このシリーズのマイナス面については、1作目と2作目の記事で書いてありおり、本作でも共通する内容ですので、まずはそちらを見ていただければと思います。

本作では、時代が進み、大正時代になっています。
前2作では、ユキカゼとハルカの物語が描かれていましたが、本作では2人は分かれて別々に過ごしており、ユキカゼのその後が描かれた作品になっています。

ユキカゼは、おトラとクリの3人で生活をしていて、ゲーム前半は、この3人の生活が描かれています。
このおトラとクリが魅力的なキャラでして。
この3人の生活をいつまでも見ていたいという気にさせてくれます。

ただ、若干気になったのは、キャラがエロゲとかのノベルゲーのキャラの描き方に近付いたことでしょうか。
したがって、エロゲ等のノベルゲーが大好きな人は、本作の方が受け入れられやすいように思います。
しかし、エロゲ等のノベルゲーがあまり好きではなく、前2作の他とは異なる雰囲気が好きだった人には、魅力が失われて見えたのではないかと危惧してしまいます。

ストーリーについては、本作では死生観、特に「老い」という観点から描かれています。
前作までのヒューマンドラマに加え、この要素が加わったことで、題材的に刺さる人はとても刺さる作品になったと思います。
こういう題材の作品が好きそうな人って、一定数いますからね。

ただ、題材的に珍しいわけではないですし、リアルで似たような経験をする方もいるでしょうから、ゲームの世界でまで、こういうのはもういいよと感じてしまう方も、少なからずいるでしょう。
そういう意味では、若干人を選ぶのかなと思います。

個人的には、前半から、おトラの症状が出てくるあたりまでは、雰囲気も良いとは思うし、面白いことは面白いのですが、いまいち新鮮味を感じることができずにいました。
厳しい言い方をするならば、ドラマとか小説でも良く見かけるようなシナリオを、スタジオ・おま~じゅ風に書いただけとも言えますし。

もっとも、本作はそのままでは終わらず、そこからクリのうどん屋のエピソードを中枢に据えていきます。
平凡なノベルゲーであれば、お涙頂戴的な感じで、おトラのエピソードだけで終わらせていたでしょう。
そうしないで、クリのエピソードを入れてくるあたり、やはりこの作者は違うのだと感じさせてくれます。
ここは、とても良かったですね。

他方で、グラフィックや演出について。
前作では演出の進化も感じさせてくれましたが、本作では、特に惹かれたり、おぉっと、こちらを唸らせるようなものはなく、進化を感じ取ることができませんでした。

このシリーズは、ADV的なゲーム性も、ノベルゲー的なゲーム性も、音声もありません。
また、UI等に工夫がなされているわけでもありません。
つまり、他の作品との違いは、文章と絵しかないのであり、進化や意外性等を見せるのも、このどちらかしかないのです。
どちらかだけでも良いので、新鮮さやインパクトを感じ取ることができれば良かったのですが、本作においては、どちらからも感じ取ることはできませんでした。

<評価>

総合では、佳作寄りの良作といえるでしょうか。

本作は、前2作より刺さる人は刺さるでしょうが、それはあくまでも、今回扱った題材的な要因が大きいと思います。
そのため、特にシリーズの大ファンや信者である人ほど、前2作より楽しめるかなと思います。

他方で、私は、今作からは、目新しさや進化を感じることができませんでした。
プレイをしているときは確かに面白く感じていたし、満足もしていたのですが、その一方で、どうにも行き詰まりのようなものを感じてしまいました。
結局のところ本作は、ライターのテキストが自分に合うか否かだけの作品になってしまったのではないかと思います。
だからもし、この方向性が続くのであれば、もう続きをプレイする価値はないのではと思いました。

作者が4作目を作るにあたり、クオリティを上げるためのクラウドファンディングをしており、その時に私は、まだ本作をプレイしていませんでした。
そのため、当時は、何で今更追加のクラウドファンディングなのだろうくらいにしか思っていませんでした。
しかし、本作をプレイすると、作者がクラウドファンディングをしたくなった気持ちも分かるように思います。
このシリーズを続けるのであれば、てこ入れは必須だと思いましたし、てこ入れがなされなければ、私は4作目をプレイしていなかったかもしれません。

繰り返しになりますが、本作は前2作が大好きな人ほど、特にテキストとキャラの描写が好きな人ほど刺さる可能性は高いです。
しかし他方で、一つの作品として、テキストとキャラ描写以外にも求める人からすると、このシリーズはもういいかなと、何も言わず去っていく可能性も十分にある作品だと思いました。
本作自体は、決して悪い作品ではないので、2作目までを楽しめた人であれば、少なくとも一定以上の満足は得られるはずです。
だから本作を叩くとか、不満を言うということはされにくいと思うのですが、次回作への興味がす~っと失せて、去られてしまうタイプの作品だと思います。
信者の大きな声だけ聞いて、サイレントユーザーの方を向かないと、ファンは増えていかないのではないかと、余計かもしれませんが、ふと心配になりました。
まぁ、4作目の制作にあたり、作者自身が先んじて動いていますので、大丈夫でしょうけどね。
※もったいぶったような書き方になっていますが、実のところ、私の評価は4作目で跳ねています。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2025-01-24 by katan

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