『月は東に日は西に ~Operation Sanctuary~』は2003年にWIN用として、AUGUSTから発売されました。
通称「はにはに」。
オーガストの知名度を一気に高めた作品と言えるでしょう。
<前置き>
5年以上前になるでしょうか、mixiでAUGUSTが好きという人を一杯見かけて、ビックリした記憶があります。
そんなに凄いと評判の良かった作品はないはずなのに、何でいつの間にこんなに人気が出たんだと不思議に思ったものでした。
そういうブランドは他にもあるのですが、その認識のズレは、当時の私のアンテナの張り方に大きく関係していたのかなと思います。
どういうことかと言いますと、オタク一般の好み流れにあまり興味がないのは今も昔も変わりませんが、私は基本的にオリジナルのPCゲーにしか興味がなかったので、移植された作品に関心を抱いていなかったのです。
それでもサターンとかPC-FXの頃は、音声のない作品に音声が付いたということで、少しは興味がありました。
しかしゼロ年代に入ると、オリジナルのPC版にも音声がありますから、Hシーンもなくなった後発のゲーム機版に何の価値があるのかという事で、ゲーム機版は完全に眼中になかったのです。
また、ゲームをアニメ化した作品も幾つかあります。
京アニ作品などの登場により、今でこそ面白いと評されるアニメも出てきましたが、ゼロ年代前半まではオリジナルより格段に劣るとされるアニメも多く、あまりアニメ化に良い印象を抱いていない人も多かったと思います。
この辺はゼロ年代前半と後半以降とで、大きく印象が変わってきますしね。
だから私は何が移植されたとかアニメ化されたとか、一応情報は目にしているはずなものの、全く頭に残っていなかったのです。
でも、その眼中になかった移植版やアニメにより、初めてその作品を知ってアダルトゲームに入ってくる人も多いわけでして。
えっ?このブランドいつの間にこんなに人気がと思ったブランドは、ほとんどの場合が移植版やアニメ化により18歳未満のユーザーを対象にすることで、後のファンを拡大する機会を設けていたのです。
それに気付いて、なるほどなと思ったんですね。
そしてそんなブランドの、私の中での代表格がAUGUSTでした。
<概要>
ジャンルは学園恋愛物のノベル系のADV。
王道中の王道ですね。
ブランドとしては3作目になります。
個人的には可愛い絵柄と変わった設定との妙ということで、デビュー作の『バイナリィ・ポット』から知ってはいたのですが、世間的には次の『Princess Holiday』で認知度が上がったのかなと。
それを受けての本作なわけですね。
前半の日常部分は良かったと思います。
各ブランドが似たようなことをやっている中でも楽しめたのですから、単純に良かったと言えるのでしょう。
ただ、終盤のシリアスな部分が物足りなく、まぁここがAUGUSTの伝統的な弱点でもあるのでしょうね。
<感想>
だからもし、これが下手糞な絵柄でやられていたら、作品に対する印象はほとんどなかったのでしょう。
終盤も物足りなさを考慮しても多くの人が楽しめてしまうのは、やっぱりべっかんこうさんの絵の力が大きかったのだと思います。
ただ、好きな絵柄ではあるのですが、この作品の頃までは、別格と思えるほどには良いと思えていなかったわけで。
もろさというか、同人っぽさというのか、いまいち垢抜けないような、何かちょっと素直に褒めきれない部分もありました。
純粋に良いなと思えるようになったのは『夜明け前より瑠璃色な』(2005)からで、2003年の本作からはもう少し先の話になりますね。
<評価>
恋愛ゲーも元々は好きでしたし、かなりの数をプレイしています。
しかし本数が多くなりすぎて、どれも大差がないように感じるようになり、あまり元を取ったと言えるほど楽しめなくなりました。
最近はエフェクトとか演出面が進化したので、また新鮮な気持ちで楽しめたり名作と感じることもあるのですが、いろんな意味で中途半端だったゼロ年代前半が一番、王道学園恋愛ものを楽しめなかった時期かもしれません。
もっとも、PCの普及もあって、この頃に恋愛ものにはまり出した人も多いですし、その気持ちもわかるのですけどね。
個人的には一番冷め切った時期だったかなと、今になって振り返ってみたり。
本作も可愛い絵柄で途中までは楽しくあったのですが、特にこれという独自性もないですし、あまり印象に残らない作品でもありました。
そのため、個人的には凡作としておきます。
ちなみに、「けよりな」は佳作で「FA」は良作と思っているので、個人的には上り坂のスタート地点みたいなイメージです。
また、本作に関して言うならば、たぶん一番印象的なのは通称なのでしょうね。
タイトル自体は他の漫画と被っていますし、特にひねっているわけでもありません。
しかし、これを「はにはに」と略した人は天才ですね。
「はにはに」って何?っていうことで知った人も見かけましたし、作品の知名度アップには結構貢献していると思うのですよ。
以後、こういう略し方も増えましたから、それだけに印象深く感じたものです。
ランク:D(凡作)
Last Updated on 2025-08-18 by katan