『展望台 MURDER ON THE TOP』は1989年にPC88用として、ビクター音楽産業から発売されました。
ヒッチコックの「裏窓」をご存知でしょうか?
<感想>
ヒッチコックといえば代表作がたくさんある偉大な監督でありますが、「裏窓」もその代表作の1つであり、それどころか「裏窓」こそが最高傑作と言う人も結構いたりします。
その大まかなあらすじは、自宅の裏窓から望遠鏡で隣のアパートを覗いていたら、殺人事件に出くわしてしまったというものです。
そして、その発想をそのままゲーム化したのが、『展望台』でした。
舞台はメトロポール市のエンペラービルにある展望台。
プレイヤーは展望台で覗いた先で、殺害現場に遭遇してしまいます。
プレイヤーはその展望台にいながら、その殺人事件を阻止することが目的となります。
足を使う推理物は数多くありますが、本作の主人公は基本的にその場所から動きません。
展望台から覗きながら、離れた現場に対して自分の出来ることを考えなければならないのです。
無事殺害を阻止できればそれでOKですが、仮に殺人を阻止できなければ今度は犯人がプレイヤーを殺しに来ます。
最初の殺人を阻止できない場合はまだ大丈夫なのですが、プレイヤーも犯人に殺された場合にはゲームオーバーになります。
平たく言えば、2段構成になっているわけですね。
どちらかを阻止することができれば、晴れてクリアとなるのです。
本作のゲームジャンルはコマンド入力式ADVになります。
選択式的な部分も兼ね備えていたので中間的ではあったんですけどね。
でも80年代末期ということで、当然ほとんどのADVがコマンド選択式だったわけです。
それを考えれば完全なる選択式もありえたのでしょうが、あえて入力式の名残を残したことは、このゲームの性質からは正解だったと思います。
コマンドを入力させる必要性やプレイヤー自身に考えさせる必要性と、物語上の設定が上手くマッチしており、すんなりと熱中したプレイにつながっていきましたからね。
似たり寄ったりな推理物が多い中で、本作は本当に異彩を放っていたと思います。
アイデア賞とか企画賞をあげたくなる作品でしたね。
ただ、基本的にはアイデア先行な作品で、小粒な作品ではありました。
展望台は全部で4つ。
4つの事件があり、中には2通りの解決方法がある事件もありました。
4つもあるというと遊び応えがありそうですが、1つ1つがとても短いものでしたからね。
やっぱりちょっと小粒って感じがしたんですよね。
<評価>
基本的にはアイデア特化の作品といえますが、それでもその斬新さから、名作と判断しても良かったのかもしれません。
ただ、当時の主流は既にコマンド選択式に移っており、それどころか、更なる新形態としてノベルゲーも出始めていた時期だけに、私もそちらを評価しがちでして。
そのため、総合でも限りなく名作に近い良作としておきます。
逆に、この時期のコマンド入力式ということをプラスに評価できるのであれば、本作は名作と感じられるのではないでしょうか。
作品にボリュームを求める人にはどうかとは思いますが、山椒は小粒でもぴりりと辛いという言葉があります。
なるほどな、こういうのもあるんだよなって、ちょっとしたアイデアやひらめきを感じさせてくれるという意味で、非常に感心させられた作品でした。
ランク:B(良作)

Last Updated on 2025-05-11 by katan
コメント
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ヒッチコックの裏窓がゲームにならないかなあ…と思っていましたが、まさに!なゲームがあったのですね。
手に入るか分かりませんが探してみたいと思います。
紹介ありがとうございました。
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古い作品なので、今から入手するのは難しいかもしれませんが、良い作品なので、見つけたらぜひやってみてください!