『花帰葬』は2003年にWIN用として、HaccaWorksから発売されました。
ゼロ年代前半を代表する同人ゲームの一つであり、特に同時期の女性向け同人の中では一番有名な作品ではないでしょうか。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・その世界では「雪」は終局を呼ぶものだと伝えられていた。
何もかもを終わらせてしまう、忌むべき物なのだと。
事実、今、雪は世界を浸食し、徐々にとはいえ確実に人々の生活を脅かし始めていた。
しかし、七つに分けられた国々では日々戦が絶えず、降り止まぬ雪さえもそれを阻む事は出来ずにいた。
ある国に身を置く白羽の預言師はこの雪を「嘆き」だと云った。
人が人の命を奪うことに主が嘆いているのだと。
それを信じる者は少なくなかった。雪は人々の心まで侵し始めていた。
人々は預言師に嘆きを止める方法を請うた。預言師は「ひとつだけ」と応えた。
たったひとつを消せば世界はまた続いてゆくのだと…。
<感想>
私が一番好きなジャンルは何かと聞かれると、たぶん実写を用いたP&C式ADVなのだと思うのだけれど、発売されている作品の絶対数の関係もあり、記事で最も多く扱っているのが男性向けアダルトゲームになります。
そして男性向けアダルトゲーマーに近いようでいて、ノベルゲームの枠内では最も遠いのが一般女性向け同人ノベルなのでしょう。
本作は、そんな一般女性向け同人ノベルの中の一つであり、同系統の作品の中で唯一CS化された作品ということらしいので、ゼロ年代前半で最も有名な女性向け同人ゲームと言えるかもしれません。
まぁ同人に詳しくない私でも、名前は早くから知っていたんですけどね。
でも、やっぱり男性向けでないということは、例え中身がどれだけ優れていても、中々浸透しないんだろなと。
2002年~2003年頃には優れたBLゲーとかも出始めていたけれど、その女性ユーザーが皆同人にまで手を出す余力があるとは思えないし。
また、男性向けでは『月姫』(2000)以降、同人ショップも増えたのだけれど、慢性的にヒット作に飢えていまして。
だからショップ側は何か猛プッシュできる作品を望んでいたのだけれど、該当しうる作品がなかったんですよね。
そこに出てきたのが『ひぐらしのなく頃に』(2004)であり、したがって、ひぐらしはユーザー間での口コミが広まっていくよりも先に、まずショップでの猛プッシュが先にあって、それから世間での人気に繋がっていったわけです。
今だと、そういうのはステマって騒がれて潰されますので、あの時期だからこそ成り立った商売方法だったのかもしれませんね。
話を戻して、本作はひぐらしより先ですし、本作の内容の出来、これは後の他媒体での成功が証明していますように、本作の出来からすれば同人界を牽引するだけの力もあったのでしょうが、やっぱり当時の主なユーザーである男性向けでないということで、店側の猛プッシュの対象からは外れたんでしょう。
だから当時は知る人ぞ知るというだけで終わり、CS化で本格的に日の目を見ることができた作品と言えるのでしょうね。
さて、前置きの方が長くなりましたし、そもそも書きたかったのは前置きの方だったりしますが、一応内容についても。
あらすじからも何となく分かるかなと思うのですが、ぶっちゃけ雰囲気ゲーなんですよね。
淡々と進行しますし、私はあまり得意ではない系統の作品です。
ただ、ここが本作の特殊なところでもあるのですが、こういう作品って多くの場合、くどいくらいに心理描写がなされ、それが好きな人にはたまらないとなりやすいわけです。
しかし本作の場合、会話が主であり、あまり心理描写がないのです。
だから無駄にくどくならずに比較的誰でも楽しめるのだけれど、逆にもっと書き込んでくれた方が信者は増えたんじゃないかなと思うわけで。
どっちが良いかは一概に言えないのだけれど、構造的にはマニア向けというよりも、むしろ一般向け寄りの作品なんだろうなということで、そこはちょっと変わっていましたね。
個人的にはストーリーは普通だと思うし、立ち絵とかも特に動くわけでもないのだけれど、それでも本作は特別だなと思えてくるのは、OPやイベントCGやサウンドからなる演出なのでしょう。
同人作品の中には荒削りだけど、センスの良さだけが抜群に秀でている物がたまにありますが、本作はまさしくそういう系統の作品なのです。
特にサウンドの志方あきこさんは、本作を未プレイでも知っている人が多いように、今では多方面で活躍していますし、
とにかくサウンドの良さと演出のセンスの良さが、本作の一番の魅力だったと言えるように思います。
<評価>
本作はCSにも移植されていますし、そっちだと完全版になっているので、CS版の方が良いとも言えます。
今楽しめるかという点を重視するならば、CS版をプレイした方が良いでしょうね。
私のように、まずオリジナルにあたってみたいという人、その作品の出た頃に遡った気分で楽しめるならば、そして女性向け同人の歩みを辿りたい人ならば、原点たる本作にあたった方が良いでしょうけれど。
どちらが良いとは一概には言えませんので、個人の好みで選べば良いのかなと。
本作は、同人でたまに出てくるセンスの塊のような作品であり、はまる人は猛烈にはまるタイプの作品ですので、雰囲気の良い作品が好きな人なら一度は触れて欲しい作品ですね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2025-08-20 by katan


