大正メビウスライン

2012

『大正メビウスライン』は2012年にWIN用として、LoveDeliveryから発売されました。

大正浪漫ファンタジーADV。
ストーリーと演出の優れた作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・『天命に生き、そして死ぬ――』
時は大正末期。日本が軍事国家として世界と争わねばならない、熾烈な時代。
主人公・柊 京一郎は帝国大学へ進学するため、帝都へと上京する。
郷里のためにひとかどの人物になると決意していた京一郎は、しかし己が持つ特別な力のために、軍部―大日本帝國陸軍―に目をつけられることになる。
死んだ人間――死霊が見えるようになったのは大病を患った幼少時。
京一郎にとって恐怖の対象でしかなかった死霊を、軍部は死なない軍人、死兵として外国の脅威に対抗するための力として用いようとしていた。
軍部とその計画を阻止しようとする者たちの対立が、京一郎の運命を巻き込んで、帝國の未来を変えていく――。

<感想>

ストーリーは大正時代をベースにした伝奇ものですね。
そこに、一部でホラーっぽい要素が加わっています。

元々本作に興味を持った理由は、ストーリーの評判が良かったからなのですが、それだけで名作と言い切れるほど抜群に秀でているとまでは思わないものの、概ね評判通りの面白さはあったのかなと。

それと、本作は全体のボリュームが結構ありつつも、共通パートは少なめであり、その代わりに各キャラの個別ルートが長いです。
そして個別ルートは展開の幅も広いことから、だれることなく長時間にわたり楽しめるわけですね。
そのため質の良いストーリーだけでなく、同時にボリュームを重視する人なんかだと、かなり好印象を抱けるのではないでしょうか。

男性向けだと、最近は共通ルートが長くなり、個別ルートがいい加減な作品が増えている傾向があります。
それで最近のフルプライス作品に不満を抱くことが多かったのですが、上記のように本作は個別ルートに力を入れた構造であるため、その点は個人的にも好印象でしたね。

ストーリーについては、上記のように本作は大正時代を扱った作品です。
大正時代を扱った作品というだけならば、男性向けのエロゲないしギャルゲにも幾つもあります。
ただ、男性向けの作品の場合、特に後の年代の作品になればなるほど、ヒロインとの恋愛色が強くなってしまうわけでして。
もちろん、大正時代の女の子は服装からしてそそられるものがありますし、個人的にも大好きなんですけどね。

でもさ、それだけじゃないだろうって思いも常々有していまして。
考えてみれば大正時代を舞台にした作品は幾つもあるけれど、男性向け作品だと、どれもこれも女性絡みになっていますからね。
女の出て来ない、大正の男たちの物語なんてのも読んでみたいわけですよ。
でも、そういう物語は今の男性向けエロゲに求めるのは困難であり、男性向けよりも女性向け作品を探した方が早いのでしょう。
本作はBLゲーでもあり、当然そういうシーンもあるものの、基本的にはストーリー重視の作品になります。
Hシーンは、ちょっと自分が苦手とするタイプではありましたので、そこは全く楽しめなかったのですが、Hシーンが出てくるのは後半ですし、基本的にストーリーを堪能する作品なので、男たちによる大正時代の物語として十分に楽しめました。

ちなみに、テキスト自体は読みやすいと思います。
しかし、大人の事情での当て字を用いたり、雰囲気を出すために難読漢字を用いることが、かなりあります。
これらの漢字が雰囲気や「らしさ」を形成するのに役立っているのも確かだけど、普段よりも読むのに時間がかかるのも確かでして。
難読漢字を多用する作品を苦手とする人も見かけますし、その点で若干人を選んでしまうのは仕方ないでしょうね。

<グラフィック>

普段男性向けを中心にプレイするのに、そして特にBLが好きでもないのにBLゲーをプレイするというのは、ストーリーなどに男性向けにはない魅力を感じるからなわけで。
そして、中には凄く面白い物もあるのだけれど、その一方で女性向けの作品全般に対し、以前は演出面やシステム周りが男性向けより弱いという印象がありました。

その格差は年々埋まってきているし、同等と思える作品も出てきていたけれど、本作辺りになると、どうなんでしょう?
本作は背景とかも動く場面がありますし、立ち絵とかもスライドさせる場面が結構ありまして。
カットインも豊富で、その使い方も良いなと思いましたし。
技術的には男性向け作品の全てを超えたとまでは言えないけれど、それでも本作より明らかに劣る男性向け作品なんてて幾らでもあります。
加えて、男性向け作品で演出の良い作品は、えてしてストーリーが弱い作品が多く、ストーリーも楽しめる作品で演出の良い作品なんて本当に少ないのが現状です。
本作はストーリーも楽しめる作品ですから、本作並にストーリーも演出も揃って良い作品なんて、男性向けでも滅多に存在しないでしょう。
女性向けは演出面が劣るからな~という印象は、少なくとも本作には全く妥当しません。

<評価>

こういう大正ものはなかなか得難いよなということで、全体としても楽しめました。
決定的と言える特徴となると少し弱いかなという気もするので、少し悩んだのも確かなのだけれど、ストーリーでも楽しめて演出も良い作品って稀ですからね。
総合でも名作と言って良いのなかと思います。

そもそも本作は、ノベルゲーとして全ての面で優秀なタイプの作品であり、非常に完成度・総合力の高い作品と言えるのでしょう。
もし完成度を重視するのであれば、重視する人ほど私以上に楽しめると思います。
そして何より、女性向け作品であっても、演出面やシステム周りで男性向けを超えうる時代が来たのだと、それが一番大きかったように思いますね。

ランク:A-(名作)

大正メビウスライン
DVDソフト大正メビウスライン

Last Updated on 2024-12-01 by katan

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