青と蒼のしずく -a calling from tears-

2003

『青と蒼のしずく -a calling from tears-』は2003年にWIN用として、Lassから発売されました。

同ブランドのデビュー作ですね。
個人的には、この作品をどの様に認識するかが興味深かったかなと。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・舞台は今よりすこし進んだ近未来。
人間の科学は少しずつ進歩し、人間のサポートを目的とする汎用人型アンドロイドが開発されることとなった世界で、突如原因不明の海面上昇が起こった。
世界は徐々に沈み始め、人々は生命の起源である海に恐怖し、逃れようと必死にもがき始めた。
十数年後、世界はまだ溺れかけていた。
沈み行く世界を舞台に、とある小さな街で生まれる小さな恋の物語。
沈む想い出と共に主人公は誰と出会い、何を思うのか?

<ゲームデザイン・グラフィック>

本作において、ブランドがウリとしたのはゲームデザイン・システムでした。
まず良かった点としては、細かくキーコンフィグが設定できることが挙げられます。
これは今でも不十分な作品が多いだけに、他社も見習ってほしいなと思いましたね。

問題は、それ以外のシステムなんですよね。
本作ではキャラに目パチがありますし、例えば電車の車内では背景が流れていくなど、演出に力を入れているのです。

もちろん、動かないよりは動いた方が良いのだけれど、背景が動くのも目パチも、90年代のADVに詳しい人ならば、既に経験しているはずでして。
だから、目新しさはないのです。
もっとも、目新しくはなくても、十分に使いこなして完成度を高めていれば、それは十分に評価に値します。
しかし本作の場合、百面相のようにキャラの表情がむやみに変化し、ヒロインの顔までギャグのようになってしまっていたので、ヒロインが可愛いと思えなくなってしまいました。
変化するのは基本的には良いことのはずなのだけれど、だからと言って絶えず百面相をさせる必要もないわけでして。
子供が新しく買ってもらったオモチャを触りたくて仕方ないような感じで、せっかくの機能を深く考えずに、とにかく使ってみたって印象を受けたわけで、この作品に関しては、むしろマイナスに作用した感じですね。

それからデュアル(マルチ)ウインドウシステムというものが、本作では採用されています。
文字通り複数のテキストウインドウを表示させ、会話の同時性も視覚的に演出しようとしたシステムです。

これも紹介では、今までになかったというような書き方ですが、マルチウインドウのADVって昔は結構あったんですよね。
だから決して、目新しくないのですよ。
PCの解像度が上がってからの方が使い道のある構造だと思うのだけれど、なぜか逆に減っていった手法です。
この手法が新しいものとして紹介され、新しいと感じるユーザーがいることで、あぁエロゲユーザーは入れ替わったのだなと、しみじみ感じたわけでして。

私なんかはゼロ年代前半って、それ以前の焼き直しばっかの印象が強いですし、本作のこの手法も新しいとは思わなかったわけで、たぶん古くからのADVファンは同様の印象を抱いたでしょう。
でも、この時期に入ってきた人には新しく見えたのでしょうから、この時期は新しいものがどんどん出てきたと感じ、それが私との認識の違いになるのでしょうね。
某エロゲ批評家で、自分の言葉が通じなくなったと言って辞めた人がいますが、例え正論でも事実認識の異なる相手には話が通じないものですから。
少し余談になってしまいましたが、結局本作のシステムは、古くからのユーザーには目新しくもなく、それでいて完成度を高めたわけでもないので、あまり記憶に残らないと。
他方で新規ユーザーには、人によっては新しく見えただろうけれど、演出軽視の時代だったので、シナリオにしか興味のない人は、こういう部分には注目がいかなかったのでしょう。
むしろ、読みにくいとか言い出す人もいそうですし。
だから結局、いろいろやろうとしたわりには目立たなかったと。

まぁ少し辛口になっているかもしれませんが、名作と言えるような高い評価することはできないってだけであり、他の平凡なノベルゲーよりはずっと印象が良いのは間違いないでしょう。

<感想>

ストーリー上のジャンルは、非常に大雑把に言ってしまえば、学園恋愛ものになるでしょうか。
後述するキャラの影響もあって、バカゲーっぽいイメージも強いですが。
ただ、内容に関しては、あらゆる要素を詰め込んだような作品でもありました。
この時期には珍しくなり始めていたタイプであり、言うなれば90年代までに多く見かけたタイプなんですよね。
それを懐かしいと捉えるのか、それとも古臭いと捉えるのか。
まぁ人によって印象は変わりうるのでしょうが、個人的には、もし良く出来ていれば懐かしい雰囲気と考えたでしょうし、逆に出来が芳しくない場合には古臭いと感じるのだと思います。
そして本作の場合、ストーリー上に新しく見るべき点もないことから、単に古臭い作品に見えてしまったというところですね。

本作に関しては、ストーリーそのものよりも、むしろキャラの印象の方が強い作品なのでしょう。
良く言えば脇役の光る作品なのだけれど、逆に脇役の光りすぎる作品でもありました。
主人公の友人にヒロッチョ君というのがいて、これがまた異常に濃いのですよ。
しかも主人公がヒロインと絡んでいると、大抵はヒロッチョ君も絡んできます。
他のヒロインと会話していても、またヒロッチョ君が出てきます。
挙句の果てには、ヒロインを差し置いてヒロッチョ君と仲良く下校します。
・・・なに、このホモゲー?って思うくらいに、ヒロッチョ君の印象が強いわけでして。
今でも百面相をしていたヒロインの名前はすっかり忘れたのに、ヒロッチョ君だけは覚えている感じで、ぶっちゃけこの作品って、ヒロッチョゲーだよねと。

また他にも、ヒロインらより親父の方が目立っていたりしますからね。
愉快な親友や男性キャラの出てくる作品が好きな人には良いのですが、ヒロッチョ君や親父など癖の強い男性陣が合わない人には、それだけで拷問になりかねない作品でもあり、恋愛ゲーとしては、これってどうなんと思わざるをえない作品でもありました。

<評価>

何か工夫しようとする姿勢は好きだったのですが、研究不足から詰めの甘い作品になった感じですね。
過去の作品を知っているがゆえに、辛口な記載になってしまいましたが、何もしていない作品よりは、よほど好印象です。
そのため、総合でもギリギリ良作とします。

それにしても、地味な部分だけを頑張っても誰も見てくれないのだと悟ったのか、次の『3days』では釣りやすいネタを仕込んできたわけでして。
それが良いのか悪いのかは一概に言えませんが、幾ら頑張って作っても注目されなければ意味がないと早々に判断したことは、ブランド存続の観点からは賢明であり、間違ってはいないのでしょう。

とりあえず、もし今からプレイすることを検討している人がいるならば、まずは体験版をプレイして下さい。
上述のようにヒロッチョ君の印象が強く、彼の存在が合わない人は高確率で本作は楽しめないし、逆にツボなら本作を非常に楽しめるということで、ある意味非常に分かりやすい作品ですからね。

ランク:B-(良作)

Last Updated on 2025-08-24 by katan

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