『ハルカの国 ~大正決戦編~』は2023年にWIN用として、スタジオ・おま~じゅから発売されました。
シリーズ4作目。
前作ではバラバラに別れていたユキカゼとハルカがようやく再会です。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
天狗の国、愛宕にて再会したユキカゼとハルカ。
半世紀の時を経て、場所を違えながらも、再びユキカゼは挑む。
<感想>
前作では、別れて過ごしていたユキカゼとハルカ。
その2人が、半世紀の時を経て、ようやく再会します。
その展開を誰しもが待ち望んでいたはずですが、いざその場面が来ると、やっぱり何かこう、心にグッとくるものがありますね。
しかもそのシーンの演出も良かったものだから、思わず鳥肌が立ちそうでしたよ。
また、この時、ハルカ側の心情を描写したのも、とても良かったですね。
このハルカとユキカゼの再会だけでもファンなら感涙ものですが、本作はそれだけではありません。
これまでに打ってきた布石が、ここにきてすべてつながっていった作品でもありました。
様々なエピソードがつながるというだけでなく、本シリーズ以外の他の国シリーズ等をプレイしていると、様々なところで対比ができるようであり、それだけ作り込まれた作品でした。
今までの流れは、すべてこの作品のためにあったかのようで、まさに集大成のような作品でした。
ところで、クライマックスに相当するエピソードというのは、えてしてこれまでの伏線回収等に奔走し、それ単体では新規の魅力がない場合も多いです。
その点、本作は、上記のとおりこれまでのエピソード等をつないでまとめる作品でもあるのですが、それらを風子や八千代という魅力的な新キャラを通して描いているわけで、新たな魅力と総まとめとの両立を図れた点が、作品の質の高さを底上げしているのでしょう。
シリーズとしてはまだ2作品残っていますので、本作で完結するわけではないのですが、いったん一区切りとでもいいましょうか、本作をプレイすることで、シリーズを通してプレイしてきて良かったと思えるでしょう。
こういう積み重ねが、シリーズ作品の良いところですよね。
さて、前作をプレイした時、私はこのシリーズの先行きに対し、期待よりも、むしろ不安を抱いておりました。
前作は、一部の刺さる人には深く刺さる内容ですが、それは扱った題材に依存するところも多いことから、他方でもういいやと見限る人もでてくるような内容でしたからね。
ゲームとしての、作品としてのクオリティを上げるためには、方法はいくつも考えられるのでしょう。
本シリーズは、ノベルゲーとしてのゲーム性を向上させる道も、音声を加えるという道も選びませんでした。
また、快適なUI等による利便性の向上という道も選んでおりません。
そうなってくると、このシリーズを小説でやるのではなくゲームとして表現する意味を見出すには、グラフィックと演出の向上しかないのかもしれません。
そこで本作は、演出を進化させてきたのです。
このシリーズはテキストに魅力があるところ、その魅力は本作でもかわりはありません。
しかし、すべてをテキストに委ねてしまっては、描写にも限界が生じてきますし、そもそもゲームにする意味もなくなってしまいます。
本作は、そのテキストで魅了させつつも、それでも絵で見せた方が良いところでは、ハッキリと絵に委ねてしまっています。
読ませるところは読ませる、絵の動きを見せるところは動きを見せると、その場その場で最適な手段を選ぶことにより、グラフィックとテキストの相互補完作用が生まれ、その相乗効果で、よりストーリーに輝きが増したのでしょう。
前作をプレイして懸念していたところを、見事に克服してきたわけで、さすがとしか言いようがないですね。
前作できらないで本当に良かったです。
他方で、システム周りの貧弱さは相変わらずですね。
小説の方が良いのではという不満を出させないためにも、最低限、CGモードの完備とセーブ箇所の増設はお願いしたいところです。
これらがないと、好きな時に読みかえせる小説の方が便利と思われかねないので。
<評価>
総合でも名作といえるでしょう。
ストーリーやテキストだけであれば、少なくともA以上の作品だと思います。
ただ、如何せんシステム周りの弱さが致命的で、どうしても1ランクは下がってしまいます。
テキストさえ読めれば十分という人も、特に同人ゲーを好む方の中には一定数おられるのかもしれません。
そのような方であれば、本作は傑作にみえたことでしょう。
しかし、プレイヤーがより快適にプレイできるようにと、縁の下の力持ちではないですが、そういうところにも力を入れているブランドだってあるわけですからね。
特に最近は、Steamで海外のノベルゲーも増えてきている時代であるところ、Steamのノベルゲーはシステム周りが貧弱な作品が多いわけでして。
したがって、ノベルゲー文化が進んでいる日本の作品は、ここで他国のノベルゲーとの違いを示すことができるわけですから、決して軽視して良いものとは思えません。
本作で一段落となり、次作は時代も結構とんで昭和になるようですが、本作で盛り返した勢いのまま次作にも期待したいものですね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2025-02-08 by katan
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