SWAN SONG

2005

『SWAN SONG』は2005年にWIN用として、Le.Chocolatから発売されました。

ノベルゲーでは珍しいタイプの作品でしたね。
オマージュを受け入れられるか否かで、印象のかわる作品といえるでしょうか。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・その夜。
それまで通り過ぎるだけの他人だったぼくたちは大きな運命の煮えたぎる一つの釜の中に投げ込まれてしまった。
まもなく一年を終えようとする12月24日。
降誕祭の前日。その山奥の都市には昼頃から雪が舞い落ちて、ホワイト・クリスマスを祝う喜びに満ちた空気が街中を覆っていた。
レストランや駅を飾るイルミネーションは、陽が落ち、人々が眠りについた後も、しずかに瞬いていた。
その幸福な眠りを乗せた大地が、突如として揺れ、そして平和な世界は一変する。
アスファルトは裂け、建物は崩れ落ち、暗闇のあちこちから恐ろしい悲鳴があがった。
ごく平穏な住宅街の光景は、瞬時にして地獄の景色となる。
その街で一人暮らしをする大学生尼子司は、混乱の中で奇跡的に一命を拾った。
廃墟のなかを彷徨ううちに自閉症の少女八坂あろえと出会う。
そして彼女と共に避難先を求めて歩きはじめた。
風が強くなり、すっかり吹雪となってしまった街。
瓦礫を踏みしめながら、司たちは辛うじて体を風雪から守ってくれる建物を見つけた。
それは古ぼけた教会で、司はひとまずその場所で休憩を取ることに決めた。
司と同じ様に地震で家を失った若者達が、やはり同じ様にして、集まってくる。
そうして、雪の降る教会で、彼らは出会った

<感想>

本作は、災害後の極限状態における狂気を扱ったということで、当時のエロゲ的には珍しい設定だったかと思います。
安易に売れ筋に走るブランドも多い中で、萌えでもバトルでもトリックでもない、こういうものに挑戦しようとした姿勢自体は良いと思います。
Le.Chocolatは、平凡な作品もいくつもあるのですが、『CANDY GIRL』や『萌・エ・ロ鬼ィちゃん』のように、売れ筋とは一線を画す作品も出すことがあるので、侮れないブランドですね。

それと、本作は群像劇スタイルをとっていまいした。
本来的なADVでこういうスタイルは採りえないのですが、ADVとノベルは厳密には異なりますからね。
ノベルなら幾らでも使うことが出来るわけです。
それなのに今までは、下手にADVの縛りに囚われていた作品も多かったわけでして。
本作はそういう縛りに囚われずに作品を作り上げたって点も、評価に値すると思います。

ただ、より小説っぽくなったことで、ゲームとして判断するポイントが減ってしまい、どうしても純粋なストーリーの評価に目がいってしまう、小説等と比べてしまうのもやむを得ないかと思います。

そうなった場合、先程、本作の扱う題材について、エロゲでは珍しいと書きましたが、それはあくまで当時のノベルゲーの中ではそうだったというだけであり、本作のような題材って、小説等ではわりとよくあるものです。
そして、それらの中には当然名作と呼ばれる作品もあるわけでして。
もっというと、本作には元ネタと呼べる小説があり、そのオマージュでしかありません。
オマージュでも何かしら独自性やプラスアルファがあれば、それはそれで評価できるのかもしれませんが、本作でそれは言えるのでしょうか。
元ネタの小説から、大事な宗教観や民族性の部分が削られてしまい、プロットの大枠だけをコピーした印象がぬぐえません。
その結果、要所要所で不自然さが残り、まるでリアリティを感じられない劣化コピーのような印象を受けてしまいました。
オマージュならオマージュでも構いませんが、あえてこの題材を選んで、それで何がしたかったのでしょうか。
そういう本作ならではってものが伝わってこなかったため、個人的には大きなマイナスです。

まぁ、ストーリーがパクリでもなんでも、そこにゲーム性と連動させることができたならば、疑似体験として遊べますし、それにより文字だけでは得られないゲームならではの感動も出てくるのでしょうが、純粋なノベルにしてしまったのでそれもないんですよね。

<評価>

こういう題材の場合、初めて触れた作品はとても衝撃的に思えます。
そのため、本作で初めてこういう題材に触れたならば、たぶん衝撃を受けるでしょう。
そういう意味で、普段小説を読まないような人で、気分を変えてちょっと視野を広げてみたいって人には、本作はお勧めできるかもしれません。

でも逆に、こういう題材の作品に数多く触れてきた人には、本作はまったくお勧めしません。
たぶん、なにも得られるものはないと思いますから。

私は詳しい人ほど楽しめない作品、評価できないような作品は、作品として評価すべきでないと思います。
そういう意味では、本作に関してはストーリーに関しては駄作相当です。
ただ、似たような作品が多い現在のアダルトゲーム市場で、あえて本作を出そうとした意欲は評価したいように思いますし、1枚絵は良いものもありましたからね。
したがって、もっといろんな作品が出て欲しいよねって期待も含めて、総合的にはギリギリ凡作とします。

ランク:D-(凡作)


SWAN SONG 廉価版
DL版
SWAN SONG dl

Last Updated on 2025-01-27 by katan

コメント

タイトルとURLをコピーしました