『SPARK!』は1999年にWIN用として、Cat’s Pro.から発売されました。
PC98時代のゲームの魂を宿したWINゲーという、今となっては貴重なタイプの作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品紹介・・・
この「SPARK!」にはオープニングとエンディングも存在するが、特に結末に向かって収束していくような話ではない。
どこから初めてもどこで終わっても構わない。
お気に入りの詩集や短編集をパラパラと気ままにめくるような感覚でプレイでき、さまざまな女の子との会話やイベントを楽しめるようになっている。
あらすじ・・・善良な学生である主人公近藤ハジメは、最近現実とも夢ともつかない変なシーンを見ることがあり、落ち込んでいた。
そんなある日、人界管理局という“胡散臭い”機関のエージェントを名乗る転校生の女の子、「山南みちる」と出会う。
みちるによると、ハジメには迷い込んだ天使によってバランスを崩している世界を“見る”能力があるという。
エージェントとは言ってもただの人間であるみちるに頼まれたハジメは、学校に迷い込んだ天使たちを一緒に探しだすことになる。
<感想>
「何を言っているのか わからねーと思うが・・・」っていう、有名なジョジョのAAがありますが、まさにそんな感じの作品です。
人の感想読んでもどういう作品なんだかイマイチ分からないけれど、自分がプレイしても、やっぱりイマイチ良く分からないような、とても不思議なふわふわした感覚の唯一無二の作品と言えるのでしょう。
まぁ一応、本作にも天使探しという目的はあるのだけれど、あまり目的が大事ではなくて、学校内を徘徊しつつ、いろんなイベントを体験することが主となる作品であり、基本的には学園を舞台にしたコメディ系の作品になります。
なお、コメディ系って言っても、過激な笑いというのではなくて、能天気でお気楽なゆるふわ系って感じですかね。
上記のような説明だけだと、わりと良く見かけるような設定だし、それで何で意味不明なんだよと思われるかもしれないけれど、本作では主目的である天使を捕獲するために、日中は47のキーワードを探すことになります。
そしてキーワードを見つけて条件を満たすと、夜中に夢を見ます。
その夢は本編とは関係ない内容であり、しかもジャンルは多種多様なものが用意されています。
また1回のプレイ時間は短くて、1回のプレイではキーワードは集まりません。
そのため、状態を引き継ぎつつ周回することになるのです。
とてもノリが良くてテンポの良い作品で、読んでいるだけで楽しくなってくる作品なのですが、そこにきて様々な夢により多彩なシナリオが読めますからね。
次は何が出てくるんだろうってワクワクしてきますし、そのカオスな感覚が一貫して続きます。
この雰囲気というかノリというか、またカオスな感覚は、PC98時代のゲームに通じるものなんですよね。
まぁキャッツプロ自体がPC98時代から活躍していたブランドですし、他所が時代の変化に合わせて変えてきたのに対し、本作は、お得意分野で挑んできたとも言えるのでしょう。
99年は、例えば『Kanon』が発売された年でもあり、まぁ泣きゲーがブームになって類似作品が増えていくのは翌年だとしても、WINゲーの時代になってからは一本の筋の通ったストーリーであるとか、主人公やキャラの内面描写を重視したり、シリアスな恋愛を扱った作品がもてはやされるようになったわけでして。
そういう90年代後半の流行からすると本作は、ある意味オムニバスのような感じの作品でもあり、混沌とした内容なので、すっきり筋の通ったストーリーがあるわけではありません。
また、心理描写がどうのという小難しいことにこだわるのではなく、考えるより感じろというプレイヤーの感性に訴えかけてくる作品です。
さらに、本作も広い意味では恋愛ゲーに含まれるのだろうけれど、あまりヒロインとの恋愛をメインにしたわけではなく、能天気でシリアスな恋愛って作品ではないですからね。
当時人気を得るようになってきた路線とは異なるのです。
だから当時の濃いオタクへの訴求力は強くなかったと思うし、PC98時代のユーザーからすれば楽しくても、必ずしも目新しい方向性でもなかったということで、月日と共に埋もれていきやすかったのかもしれません。
しかし、楽しいものは楽しいですからね。
それと、本作は上記のように、PC98時代の良作らしい雰囲気を有しています。
98ゲーがどうのと言っても、98ゲーなんてやったことないよと言う人も、年々増えてくるのでしょう。
またPCとはいえ、全然機種が異なるわけですから、今更プレイするのも敷居が高いでしょう。
そうなると本作のような、98ゲーの魂を宿したようなWINゲーというのは、実は今となってはかなり希少で貴重な作品なのかなと思ったりも。
ちなみに、前世紀のWINゲーでありつつも、WIN8でも動きますしね。
いや~こういうのはホントに貴重ですよ。
98ゲーのためにPC98を用意するのは面倒でも、何となく雰囲気を知りたいというのであれば、本作はオススメなんでしょうね。
<演出>
それと、本作にはもう一つ特徴があります。
具体的には演出が非常に優れていて、かつ98ゲー的なのですよ。
ここも少し説明が必要になってくるのかもしれませんが、PC98時代末期にはカットインを多用するなど、演出の優れた作品も多かったです。
しかしWIN95が登場し、エロゲでもWINゲーが増えていきましたが、それによりグラフィックにも変化が生じました。
色数や解像度が増したこともあり、また、技術力不足から急にはWIN用に対応しきれなかったのもあってか、イベントCG、一枚絵の質の向上にばかり注力されるようになったのです。
もちろん一枚絵のレベルが向上することは良いことなのだけれど、その代わりに立ち絵やカットインや画面上の細かい動きなど、演出面が非常に退化してしまいました。
当時の私は一枚絵の質の向上に気持ちが向かっていたので、特に気にしなかったのもありますけどね。
今になって振り返ってみると、90年代末からゼロ年代前半の作品って、本当に動きの乏しい味気ない寂しい時代だったよなと思うわけでして。
エロゲの全盛期がいつと考えるかはどこに着目するかでも変わりますが、少なくとも演出面に限っていうならば、90年代末からゼロ年代前半って失われた暗黒期でしかないよなと思います。
そんな中にあって本作は、立ち絵もころころ変わるし、画面一杯に文字が表示されたり、キャラがスライドしてみたり、字の書かれた垂れ幕が横から流れてきたりと、とにかく賑やかで、見ているこちらを休ませないのです。
一枚絵の質自体は特に秀でたものでもなかったので、それで当時の基準からは、グラフィックの良い作品として名が残りにくかったかもですが、こと演出に関して言うならば、最近のゲームですら凌駕しかねません。
ゼロ年代後半以降、特に最近は、一枚絵だけ良ければOKだろみたいな悪しき風潮からは抜け、また立ち絵の動きや演出が大事に扱われるようになっています。
本作の、PC98末期を彷彿とさせる演出は、当時の98ゲーマーなら楽しめるのはもちろんのこと、演出も重視する最近のゲーマーも、下手なゼロ年代前半の作品よりも楽しめるように思いますね。
<評価>
古いけれど新しい、懐かしいのに斬新な、一見すると矛盾するかのような言葉が同居する本作。
その独特な雰囲気は、年数が経っても色褪せることはないのでしょう。
そのため、総合でも名作とします。
まぁエロが濃い作品でもありませんし、スッキリと筋の通ったストーリーが展開されるわけではないので、そういうのを求める人には合わないだろうなという点で、人を選ぶ作品ではあるのでしょうけどね。
ただ、作品自体の持つ魅力に加え、現在では98マインドを宿したWINゲーという、付加価値も加わったことで、今尚注目に値する作品でもありまして。
こういう作品もあるのかという経験をしてみたい人がいるならば、本作はオススメの掘り出し物だと思いますね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2025-01-15 by katan
コメント