好き好き大好き!

1998

『好き好き大好き』は1998年にWIN用として、13㎝から発売されました。

奇ゲーであり、陵辱ゲーであり、フェチゲーであり、でも根っこは純愛でもある。
とにかくインパクトの強い作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・『やっと、ボクの夢がかなったんだ。
ボクの好きなゴムの衣装に身を包んだ、ボクの大好きな女の子。
誰にも渡さない。誰にも触れさせない。絶対、誰にも触らせるものか。』
『蒲乃菜は、ボクだけの蒲乃菜なんだ・・・。』
一人の少女を愛しすぎたが故に、彼女を自宅の地下室に監禁してしまった男は、ラバーマスクで目隠しをされ、視力まで失ってしまった怯える少女に宣言した。
─── 何もしない。ただ、傍にいて欲しい・・・と。
ひたすら彼女に優しく接し、その愛を得ようとするする男と、怯え、絶望し、狂気へと駆り立てられていく無力な少女。
たった一人の少女にのみ向けられた男の盲愛に、彼を取り巻く少女達は気づかない。
男を慕い、一途に愛情を寄せてくる大学の後輩。
十数年振りに再会した幼なじみ。
従姉妹を愛するあまり主人公に辛くあたり、憎悪してしまうスポーツ少女
心理学を研究する美女は、常に謎めいた微笑を浮かべ、男の疑心暗鬼を誘う。
一人の少女を監禁し、それ故に誰も信じられなくなってしまった男と彼を取り巻く少女達との物語・・・

<テキスト>

いわゆるノベルゲームというジャンルは、文章を読むことに時間の大半を注ぎます。
そうなってくると、当然ながらテキストの酷いものは楽しめません。
よりよく楽しむためにユーザーが上手いテキストを望むのも、当然と言えば当然な流れでしょう。

もっとも、私自身はそんなに上手いテキストを求めてはいません。
ライターはプロの小説家ではないわけだし、文章の良し悪しだけを求めるならば一般小説を読みます。
まぁ、ゲームとして苦痛にならない程度の最低限のものは求めますけどね。
大抵の場合、テンポ良く読めるような簡潔な文章であればOKです。

また、仮に上手いテキストを求めたとしても、本当に上手いなって感じたこともあまりないですし。
それが鬼畜系のノベルとなれば尚更です。

ただ、何にでも例外は存在するわけでして。
うわ~、この人は上手いな~って思わされる場合もあるのですよ。
その代表例が『好き好き大好き』なのです。

<感想>

ストーリーは単純。
主人公がヒロインを拉致、監禁。
後は主人公がヒロインに対し、その好きという気持ちをぶつけるだけです。

もっとも、拉致監禁の動機は、主人公の不順な欲望のためではありません。
危険だらけの汚れたこの世の中から、ヒロインを隔離し守ってあげたいとうもので、アダルトゲームのいわゆる調教物とは正反対の思想でもあったりします。

ある意味純愛というか、純粋な恋なのです。
ただ、手段が非常に歪んでいるだけで。
歪んだ人間の歪んだ愛情の形が、本作ではこれでもかってくらいに表現されています。

しかもこの主人公、ラバーフェチなんですよ。
それで、ゴムに関する異常なまでの薀蓄を披露してくれます。

好きな娘を拉致監禁するだけでなく、ゴムを被せて喜んでいる主人公。
ぶっちゃけ、変態以外の何者でもないですね。
こっちは、その変態の心理描写を延々と読まされるわけです。
とはいえ、なまじ文章が上手いだけに、読んでいるうちに何か洗脳されてしまいそうな気になってくるんですよ。

主人公の歪な感情に無駄なゴムの知識。
正直なところ、私には全然興味のない話だったし、当然知識もありませんでした。
それがどんどんストーリーに引き込まれていく。
興味のない(ってかむしろ嫌悪してる)人間に興味を抱かせるって、実は結構凄いことですよ。

やめろ、俺をそっちの道に引き込まないで~って思いつつも、ズルズルと共感していく怖さw
駄目人間への道、まっしぐらです。

その強烈なまでの心理描写に薀蓄。
もし興味のある人がいたなら、ぜひ体験して欲しいものですね。
(そんな人がどれだけいるかは謎ですけど・・・)

ストーリーの大枠は大体以上の通りなのですが、それだけだと誤解されるおそれもあるので少し補足しておきます。
この作品、ヒロインはラバーで視覚等外部への感覚が遮断されています。
ある意味、隔離された世界にいるわけです。
ヒロインは当然不安で仕方ないわけですが、主人公はとにかくヒロインを守りたいわけだから酷いことはしません。
次第にその主人公の気持ちは、ヒロインにも伝わっていくことになります。
意思を伝達する手段は、いくらでもあるはずなのに、上手く伝えることのできない不器用な主人公。
逆にほとんど外部との関係を遮断されているにもかかわらず、少しずつそこから何かを感じ取っていこうとする聡明な少女。
不器用な主人公と聡明なヒロインがどれだけ心を通わせることが出来るのか、このゲームの本質はそこにあります。

その部分を無理なく描くために、ゲームの大半が心理描写にあてられていますしね。
主人公とヒロインの心の機微は、巷にあふれてる恋愛ゲームよりよっぽど丁寧です。
鬼畜ゲームの仮面を被っているものの、他のどの恋愛ゲームよりも愛について深く掘り下げて扱っているわけでして。
そこら辺が、この作品が純愛作品と評される所以なのでしょうね。
また、単に純愛だけというのではなく、上記のように、人間同士の意思疎通という観点からも興味深い作品になっています。

こうして最後には、当事者間の問題は解決します。
しかし目的と結果は何であれ、行った手段自体は世間的には許されない行為です。
だからその報いもきちんと受けることになります。
単にご都合主義で終わらない点にも、非常に好感が持てたものです。

以上、ストーリー・シナリオ部分は絶賛に値する出来でしょう。
恋愛ゲームに限れば、これ以上の物はないくらいにね。
音楽もシンプルながら秀逸です。

しかしながらこのゲーム、キャラデザが濃くて何ともビミョ~なんですよ。
私は正直、好きになれませんでした。
そのため、好きなサブヒロインもいなかったですね。

幸か不幸か、主人公が監禁しているヒロインの顔にはゴムが被されていて、どんな顔なのかゲーム終盤まで判りません。
そう、こっちは知らない顔相手に妄想しなきゃならんのです。
仕方ないので、自分の好きなキャラを思い浮かべて妄想してましたが。

まぁしかし、開けてはならないパンドラの箱とはよく言ったものでして。
ぶっちゃけヒロインって最後まで顔出さなくて良くね?って思ったのは、私だけではないのでは?

<評価>

そんなわけで、何とも他には替え難い稀有な作品でした。
総合でも十分名作といえるでしょう。

一部の人に非常に高く評価されている本作。
その内容から、決して一般受けするとは言えませんし、他人には、なかなかすすめにくいですけどね。
でもこういう経験は、得ようとしても得られるものではないですから。
せっかくアダルトゲームをやっているのであれば、こういう作品こそ楽しんでもらいたいなと思いますね。

ランク:A(名作)


Win95 CDソフト 好き好き大好き

Last Updated on 2024-12-26 by katan

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