サキュヴァス ~堕ちた天使~

1998

『サキュヴァス ~堕ちた天使~』は1998年にWIN用として、あかとんぼから発売されました。

声優の豪華さで話題になった作品でしたね。

<概要>

商品紹介は以下の通り。
「主人公・神無月俊樹は平凡なサラリーマン。
俊樹にとって、恋人「香坂尚美」の存在は掛け替えのないものだった。
ある日、尚美は従妹の弘子から海外旅行に誘われる。行き先は中東「タグラニア国」。
女性二人きりの旅行と聞き、素直に賛成できない俊樹であったが、結局それを許すことに……。
後日、二人は中東へと旅立っていった。
二人にとって、中東旅行はとても楽しいものとなった。
滞在期間は瞬く間に過ぎ、帰路につく頃には後ろ髪を引かれる思いであった。
しかし、そこで思わぬ悲劇が……。
二人を乗せた飛行機は、離陸後間もなく墜落炎上!原因は不明…。
いくつかの遺体が身元確認のできぬまま、乗客は全員死亡と発表された。
事故を信じることができない俊樹は、真実を知るため、一人ダグラニアへと向かう。
事故現場へたどり着いた俊樹は、そこで謎の美女「マヤ」と出会う。
足をくじいたマヤを、なりゆきで家まで送ることになる俊樹。
しかし行き着く先が娼館サキュヴァスであることは知るよしもなかった。」

<感想>

概要にあるように、主人公は事故にあった恋人の生死を確かめるべく、現地に飛ぶことになります。
なりゆきで辿り着いたのが娼館サキュヴァスなのですが、そこで恋人の尚美が客をとっているところを発見してしまいます。

ストーリーとしては尚美と弘子を連れ脱出を図るというものであり、単純に言えばそれだけなんですね。
娼館が舞台なので、館ものではあるのですが、館ものと言われて期待するようなものがあるのかというと、ちょっと微妙なわけでして。
ぶっちゃけ、ストーリー自体は薄いのです。

もっとも、尚美が客の相手をさせられていたり、それ以外にも随所にヒロインらが犯られてしまうシーンがありますので、不意打ち寝取られのオンパレード的な作品なのかなと。
当時は寝取られ(NTR)ゲーという言葉はありませんでしたが、言葉がないだけでヒロインが犯られてしまうゲームは幾つかあり、本作もその中の1つと言えるのでしょう。
したがって、ストーリー面から端的に言えば、本作はNTR好きのための作品になると思います。

<音声>

この作品を語る場合、一番の特徴は音声にあるのでしょう。
声優は非公開だったようにも思うのですが、建前上非公開でも詳しい人には分かっていたケースも多々ありまして。

一応本作で言われているのが、主人公の恋人であるメインヒロインが川上とも子さん。
他にも西原久美子さん、田中敦子さん、矢島晶子さん、高野直子さん、佐久間純子さんが出演しているとのこと。
以下、それを前提に話を進めます。

この業界、中々厳しいようで、残念ながら既に若くして亡くなられてしまった方もいて、知らないよって人も出てきていると思うので少し説明しておきます。

川上とも子さんは前年の97年を代表するアニメ、『少女革命ウテナ』の主人公「天上ウテナ」役が一番有名でしょうか。
田中敦子さんは『攻殻機動隊』の草薙素子で、矢島晶子さんは野原しんのすけや『ガンダムW』のリリーナ、高野直子さんは『機動戦艦ナデシコ』のメグミ、佐久間純子さんはとっさに浮かぶのが妖獣戦記の天城冴子ですが、当時はアイドル声優的に人気が高かったように記憶しています。
西原久美子さんにしてもそうですが、皆多くのアニメに出演しているわけでして。

今風に言えばどうなるのだろ?
人気声優と言われると、パッと浮かぶのが花澤香菜さん、豊崎愛生さん、日笠陽子さん、竹達彩奈さんあたりか・・・
声優はあまり詳しくないので、偏っていたらスミマセンw
ここ1年で新たに覚えたのは赤崎千夏さんくらいですし、基本的には最近の声優には疎いものですから。
そのため、ここは各自が思い浮かべる人気声優で構わないのですが、もしその人がまだマニアックな属性の作品で熱演して喘いでくれたら・・・
そのように想像すれば興奮してくる人もいるのではないでしょうか。

私は特に声優に思い入れがあるタイプではないのですが、ただ単純に上手いなと思ったわけでして。
本作に関しては、メインヒロイン役の川上とも子さんの独壇場でしたかね。
今ではアダルトゲームの音声は当たり前の存在ですし、エロゲ専門で経験を積み非常に上手い方もおられます。
だから、いわゆる表声優がいきなり参加しても、必ずしも良いと思えるとも限らないかもしれません。
しかし98年は、抜きゲーでは音声付も増えていましたが、まだ一般的に音声が普及していたわけでもないですしね。
有名なエロゲ声優なんてのが出始めたのもゼロ年代辺りからだと思います。
ゲームの声をやるということに単純に慣れていない人もいれば、中には舐めていた人もいるかもしれないし、つまりは結構下手な演技も多かったわけでして。
そんな時代だけに、本作における熱演は特筆すべきであり、際立った存在でもあったのです。

ただ、今は声優が誰か欠かさずチェックしてゲームを買う人もいるでしょうが、時代的な意識の違いなどもあり、当時は声優を気にする人は少なかったですからね。
声優非公開のケースはもちろんのこと、D.O.なんかは有名声優を起用してその名も表示していたものの、声優の豪華さが必ずしもセールスポイントとして浸透していなかったのかなと。
それで後に気付いて、プレミア化みたいな。
本作も今はDL版が出ていますが、それまではプレミア化していたみたいですしね。
今だったら埋もれず絶対に発売時から話題になったでしょうから、そういう点では早すぎた存在なのかもしれませんね。

<ゲームデザイン>

上記のように豪華声優がセールスポイントになるのかが、本作に含まれた一番の特徴ではあるのでしょう。
しかし、それ以外にも考えるべき点はあるわけでして。

本作はコマンド選択式のADVになります。
「みる」とかの汎用コマンドが3つ表示されるのですが、たまにノベルゲーのように選択肢が登場し分岐していきます。

コマンド選択式にもいろいろあるわけで、総当りする必要のない作品も多数あります。
何でもかんでも総当りと表現する人は、「やってない」か「馬鹿」かのどちらかなのでしょう。
画面クリック式まで総当りとか書いてあるのを見ると、もはや意味不明ですし。
でも、中には総当りと揶揄されても仕方ない作品もあり、本作もまたそういう作品なわけでして。
また、コマンド数自体は少ないのですが、一つコマンドを選ぶと一文だけ表示されるような感じで、ブツ切れにされてダルいのです。
これでは、批判されても仕方ないでしょうね。

それだけなら我慢もできるのですが、選択肢による分岐でENDも14種ありますし、同じENDでもコンプするために異なるルートを通る必要のある場合もありました。
しかも難易度が高かったのです。
加えて、セーブポイントは任意ではなく、定められた場所でしかできません。
一つ一つならまだ大丈夫だったのですが、だるい総当りに、難度の高い分岐に、セーブ箇所の制限の相乗効果で、コンプするのが非常にだるい作品になってしまったわけです。
98年でこれは、ちょっときつかったですね。

このゲーム部分の厄介さが埋もれてしまった要因の1つなのでしょうが、実はもう1つありまして。
上記のように音声が本作の特徴であります。
場合によっては、強烈なセールスポイントになりえたのでしょう。
ただ、せっかくの豪華声優と抜群の演技も、きちんと伝わらなければ魅力が減じてしまいます。
つまりせっかくの熱演なのですから、やっぱり通して聞きたいのですよ。
本作は一文程度でブツ切れで進みますので、せっかくの音声もブツ切れで聞かされるわけですね。
これでは音声の魅力も薄くなってしまいます。
確かに本作の段階でも上手いことは伝わりますが、ノベル形式だったらもっと魅力的に感じられたのではないでしょうか。
その点で、ゲームデザインと音声の在り方について、少し考えさせられた作品でもありましたね。

<評価>

とにかく長所と短所しかないような作品です。
両者を相殺した結果、良作としておきますが、非常に凹凸の激しいゲームではあったのでしょう。
だるいのでまたやりたいとは思わないのですが、当時の時点で既に時代遅れな部分もあれば、逆に早すぎた新しい部分もあり、しかも、それらが混在することで更に考えさせられる部分もあるということで、印象深い作品ではありましたね。

ランク:B(良作)


サキュヴァス

Last Updated on 2024-12-29 by katan

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