『死に逝く騎士、異世界に響く断末魔』は2024年にWIN用として、バグシステムから発売されました。
「にくにく」シリーズ第2弾。
グロ+スカ+リョナという方向性に、モンスター娘を食すというカニバリズム的な特徴を加えてきた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
物語の舞台は、人間や魔族、エルフ、ドワーフ等、様々な種族が生きているファンタジー世界。
それぞれの種族に文化があり、バランスをとって生きている。
しかし、近年は人間と魔族との折り合いが悪く戦争に発展。
人間側は徐々に押され、ついに勝負を決めるべく魔族の総攻撃を受けているとそこに異世界から来た上位種族の少年が襲撃。
騎士の仲間や魔族を次々に殺していく。
少年の目的はこの世界の食材(人間含む)も使って美味しく食べたいということであり女騎士は姫を守るため、姫を絶対に殺さないかわりに究極の料理を作る協力をする交渉をする。
姫を守るため、上位種族の少年とのグルメな旅が始まる。
<感想>
本作は、2016年に発売された『死に逝く君、館に芽吹く憎悪』(通称「にくにく」)の後継作になります。
直接の続編ではないので、本作からのプレイでも支障はありません。
ただ、「にくにく」の一部のキャラが本作にも登場します。
しかも、ストーリー上に絡んできますので、ストーリーをより楽しむという観点からは、「にくにく」を先にプレイすることをおすすめします。
さて、「にくにく」の特徴というと、グロ+スカ+リョナとなるのでしょう。
その基本的な方向性は、本作にも受け継がれています。
特にグロとスカですね。
私は、エロさの伴うグロ、つまりエログロは大好きです。
また、ライターの和泉万夜さんは、『MinDeaD BlooD』や『EXTRAVAGANZA』等、過去にエログロ方面で傑作を生み出してきた方です。
そのため、個人的にはエログロ路線を期待したくなるのですが、「にくにく」や本作は、エロさを伴わないグロだけなわけでして。
私としては、ただのグロ画像では楽しめないのですが、それも個人の好みの問題にすぎないのであり、「にくにく」シリーズは、エログロではなくグロリョナという方向性のシリーズということなのでしょう。
ジャンルとしての基本路線は前作と似ている今作ですが、決定的に異なる部分があります。
それが、リョナの部分です。
「にくにく」の場合、主人公に対するリョナでした。
それに対して本作は、主に主人公以外に対するリョナになります。
これだけ書くと、少し誤解を招いてしまうかもしれませんね。
あらすじにもあるとおり、本作では、上位種族の少年が登場します。
この上位種族は、世界の食材を美味しく食べたいという目的があります。
具体的には、各地に赴き、そこで人魚とかオークとか、様々な人型のモンスターを痛めつけ殺してしまいます。
そして、館に戻り、その日の料理を選択し、モンスター料理を堪能するというのが、序盤から終盤近くまでの基本的な流れになります。
注目すべきは、この料理ですね。
選択肢が複数ページにまたがり、とても多く、妙に凝っています。
凄いですよね、この発想は常軌を逸していますし、お見事としかいえません。
カニバリズムそのものではないにしても、カニバリズムの亜種とでも言いましょうか。
「にくにく」の時は、主人公に対するリョナでしたので、素直にリョナが好きかどうかで、作品を好きになれるかどうかが決まってきました。
本作は、リョナが主人公に向いていないので、リョナが好きかという観点はあまり重要ではないのでしょう。
むしろ、カニバリズムが好きかどうか、その視点が大事になってくるように思います。
おとぎ話にも出てくる有名な人魚姫。
人魚姫が実際に自分の目の前にいて、好きにして良いと言われたら、あなたはどうしますか。
美少女であれば、エロいことをしたいと考えるのは、健全な変態紳士の発想なのでしょう。
しかし、皮を剥いで、肉を切って刺身にして食べてみたいと考える人もいるのかもしれません。
女の子モンスターにエロいことをしようというゲームは、これまでにいくつもありますが、女の子モンスターもモンスターである以上、料理して食べてみたらどうなるのかという発想もありえるのでしょう。
だから本作を楽しめるか否かは、そういう女の子モンスターを食べてみたらという、カニバリズム的楽しみ方ができるが大きいように思います。
特に本作の場合、ストーリー自体はわりと単調であり、それだけで満足できるものではありません。
『MinDeaD BlooD』や『EXTRAVAGANZA』の再来を望んだ人ほど、ストーリーにも期待したでしょうが、残念ながら本作は、ストーリーだけでいえば、過去の代表作に遠く及びません。
だからこそ本作を楽しめるかどうかは、ライターの過去の代表作であまり注目されてこなかった要素、つまりカニバ的な特徴を楽しめるかどうかにかかってくるのでしょう。
正直なところ、私は本作が好きではありません。
残念ながら、私にはカニバ的な要素を好む嗜好はなかったようです。
ただ、こういう他にはない方向性で攻めてくるという発想は評価されて然るべきだと思います。
したがって、そのモンスターを食すという行為の部分の出来が、本作の評価に大きく影響してくるのでしょう。
私個人の好き嫌いは、評価とは別問題であり、仮に私が気持ち悪くなって嫌だと思っても、作品として徹底していれば、私は名作として判断します。
では、本作はどうなのか。
本作の場合、よくこんなの考えたなと思うような様々なメニューが出てきます。
ここまでは良くできていたといえるでしょう。
また、料理を選択して、その内容次第で上位種族の機嫌が数値として増減し、それによりエンディングにも影響を及ぼすということで、物語上の設定をゲームに落とし込むことについても、まぁギリギリ及第点ではあるのでしょう。
もう少しゲーム部分は煮詰めることもできたと思いますが、何もない普通のノベルゲーと比べれば、十分マシな方です。
足りない部分があるとすれば、その料理の描写と食した上位種族の感想なのでしょうね。
この料理はこういう料理で、どういう味や食感がするのかとか、食事中や食後に説明や感想がしっかりと描写されていれば、読んでいるこちらにもイメージが沸いてきます。
そんなことしたら、それでなくてもグロとスカの時点で十分に人を選ぶ本作が、更に人を選んでしまうのは間違いないでしょう。
読んでいて気持ち悪くなってくる人も出てくるかもしれません。
でも、そこまで徹底していたら、本作は名作と言えていたように思います。
しかし残念ながら、完成した料理の描写や感想はあっさりしているうえ、使いまわされていたりして、十分な描写はありませんでした。
これでは、読んでいるこちらにイメージが沸いてきません。
モンスター料理の味なんて、実際に食べたことのある人はいないわけですから、想像することすらできません。
だからこそ、丁寧に描写して、こちらにイメージさせることが大事なのでしょうに。
まぁ、イメージさせることができたら、読んでいて気持ち悪くなってしまう人も出てくると思うので、より一層、嫌悪感を抱く人が出てきてしまうでしょうが、どうせやるなら、そこまで徹底してもらいたかったですね。
<評価>
グロ+スカ+リョナというそれだけで癖が強いなかで、更にカニバ的な楽しみ方を入れてきたという、その本作ならではの特徴から、総合でも良作といえるでしょう。
残念ながら名作に届かなかった理由は、上記のとおりです。
どうせやるなら、ほとんどの人が吐き気を催し、嫌悪感を抱こうとも、丁寧に料理の描写をしてほしかったものですね。
ジャンルからしてニッチすぎて、どう考えても万人受けする作品にはなりえないのですから、刺さる人にだけ刺さる方向性で突き抜けるしかないと思うのですよ。
最後に、私が複数の作品で傑作評価をしたライターは、非常に少ないです。
その中でも、今でも現役で作品を続けている人、さらにエロゲのライターとなると、そんな人はもう、和泉万夜さんくらいしかいないのかもしれません。
そのため、どうしても過去の傑作の再来を求めてしまいがちなのですが、考えてみると『無限煉姦』からも10年以上経っていますからね。
もうそういう方向性を求めること自体が間違っているのでしょうね。
本作をプレイして、過去の代表作のような濃密なストーリー性がないことにガッカリしたことも、私の正直な気持ちではあります。
もっとも、他方で、こういうマニアックな作品もまだ作れるんだという驚きもあったわけでして。
今後は過度な期待はしませんし、本作のような小粒でマニアックな路線でも構わないので、もう一本くらい、記憶に残る作品を作ってもらいたいですね。
ランク:B-(良作)

Last Updated on 2024-10-01 by katan
コメント
なるほど、katanさんはこの作品を結構評価しているんですね。
私はこの作品どうにも好きになれず、自分の記事では結構文句を言っちゃってます。
『MinDeaD BlooD』や『EXTRAVAGANZA』の感動が忘れられない老害の成れの果てと言われそうですね…。
まあ他の人の感想を聞くのも楽しいですし、katanさんの2023・2024年の他のゲームの感想も気になりますね。
更新が大変な状況でしょうが、陰ながら応援しております。
>yukimuraさん
記事内にも書いていますが、好きか嫌いかでいうと、私はこの作品は好きではありません。
また、好きになろうという気も特にないので、再プレイすることもないでしょう。
ただ、特徴はみてとれたので、もう少し練りこめば良い作品になる可能性はあったのかなと思いますし、惜しい作品だったと思いますね。