リフレインブルー (Refrain Blue)

1999

『リフレインブルー (Refrain Blue)』は1999年にWIN用として、エルフから発売されました。

エルフノベルシリーズ第1弾ということでしたが、結局第2弾は発売されなかったですね。。。

<感想>

夏の海辺で運命的な出会いをしてから七年。
主人公はバス会社の添乗員として再びその地に訪れたわけで・・・って感じの夏と海を連想させる切ない恋愛物語でした。

本作は、一見すると普通のノベルゲーっぽいのですが、ヒロインの個別ルートをクリアするごとに、選択肢が増え新しいヒロインが攻略できるようになります。
そして全ては思い出の女性である深景さんにつながるということで、実質的には一本道に近い構造になっています。

本作に対してよく言われるのは、伏線が回収されるラストは素晴らしいのだけど、途中がだるいってことでしょうか。
これは私も、分かる気がしましたね。
本作の場合、全てはラストがやりたいがための物語って感じでしたから。
ライターのテキストは決して悪くないのですが、それに落ち着いた主人公とヒロインと初対面という状況など、さまざまな要因が組み合わさって、とにかく動きのない展開になってしまったように思います。
それが多くの人に、だるさを感じさせた理由なのかもしれません。

もう1つ加えるならば、本作を含めノベルゲーの中には、クリアするまで評価できないとか、全てが終わらないと理解できないと言われる類のゲームがあります。
こういう構造は刺さる人には刺さるので、ファンも生みやすいのですが、同時に敵も作りやすいということです。
数本のシナリオがあってどれからでもOKというならば、プレイヤーは好きにプレイすることができます。
中にはメインを先にやって、時間の空いたときにのんびりサブをクリアしたい人もいるでしょう。
しかし攻略順を制限されると、そういう楽しみ方ができないのであり、プレイヤーが楽しみ方を強いられるという意味では、ノベルゲーの中でも特にゲーム性の低い構造となってしまいます。

また、興味のないシナリオを飛ばすというのも、1つの楽しみ方です。
好きなシナリオだけやったとしても、それでプレイヤーが満足できたなら、それはそれで構わないと思いますからね。
しかし、全ルートクリア必須になると、合わない部分も強制される可能性があり、そうなると楽しめない時間も生じやすいことになります。
だから全ルートクリア必須構造というものには、個人的にはいろいろ疑問もあるのです。

本作の場合、1シナリオだけなら私も問題なかったのですが、平坦なシナリオを何本も強制させられ、その後にメインだったために、余計にもだるく感じたのでしょうね。
それと、全てが最後の深景ルートのためにあるという構造ゆえに、他のヒロインが捨て駒扱いに見えたわけで、その辺も少し引っかかってしまいました。

それでも、ラストで感動できればそれも全部帳消しになったのでしょうが、無駄にくどく見せられたようでかえって白けてしまったわけでして。
ライターは最後のルートをやりたかったのかもだけど、ある意味蛇足なような気がしたので、いっそのことなくしてしまって、全てを個々のヒロインの中で解消させるというのも、個人的にはありだったんじゃないかなって思います。
まぁ、結局は我慢してプレイしたわりには、最後のオチはその程度かよって思ってしまったので、トータルではあまり楽しみきれなかったかもですね。

その代わり、グラフィック面は、画質は良かったです。
原画は門井さんで当初は凄く期待していたし、実際画質は綺麗でしたしね。
ただ、大きなプラスになると予想したよりは、印象に残らなかったですね。
ライターのキャラ描写の薄さが問題だったのか、それとも下級生の続編用のキャラを流用したことにより、それでミスマッチが生じたのか、そこは正確には分からないですけどね。
まぁ、でも何だかんだで絵は綺麗でしたし、基本的には良質な部類の作品ではあるのでしょう。

だからここから先は評価とは全然関係ない話ですが、これがエルフの作品というのが、エルフファン的には問題だったんですよね。
文章を読んで選択肢を選ぶという構造のノベルゲームは、エルフは既に何本も作っています。
それをあえてノベルゲーム第1弾と銘打ってきたわけで、最初はどういうことかと思ったんですけどね。
ある意味納得。
確かに、葉鍵などの主だったノベルゲーを良く研究しています。
でも、既存の作品の影響が端々に表れ、葉鍵の模倣に終わってしまったのが致命的でした。
昔のエルフだって大当たりもありましたが、中にはハズレもありました。
でもその多くは、今までの市場にないものに挑戦してきた結果なわけで、常に先頭に立って市場を切り開いてきたのがエルフだったのです。
だからこそ盟主とも言えたわけです。
たとえノベルであっても、新しい形を示せれば問題なかったのですが、追従するという行為に出られては、葉鍵の軍門に下ったと見られても仕方ありません。
私は当時、あぁノベルでは葉鍵に敵わないんだな、でも他のジャンルならまだまだ大丈夫と思っていました。
源平の合戦で言えばまだ一の谷だと思っていたわけです。
しかし、当時を振り返る意味で昔のネットの反応を見てみると、2000年の時点でもうエルフは終わったというムードになっていました。
つまり世間では既に壇ノ浦まで行ってるとの認識だったわけです。
新作が中々出なくても、出れば望んだものが出てくると信じられれば、ファンはついてくるものです。
それこそ型月ファンなんて、もう何年もゲームが出ていないのにそれでも信じて待っていますし、ブランドも大手と認識されていますしね。
それができないというのは最新のゲーム、つまりはこのゲームに問題があったからなのでしょう。
昔のエルフに一貫していたのは、前述の切り開く挑戦の精神と、ゲームの端々に見られた遊び心でした。
本作では、その遊び心が失われた上に模倣路線を歩んだわけですから、仮に良作を今後も作ったとしても葉鍵路線の中の何番手の1つでしかなく、もはや新しい風は期待はできないのだと、鈍感な私のようなのがいる一方で、敏感な人はこの時点で察していたのかもしれませんね。

奇しくも99年から2000年にかけては、ゲーム機のノベルゲーが、他にもノベルゲーのやり方はあるだろうと気を吐いていたように思います。
『キャプテン・ラヴ』とか『P17N』とか『高2→将軍』とかですね。
エルフファン的には仮にノベルをやるにしても、そういうのを望んでいたのではないでしょうか。
それだったら、仮に中身が物足りなくとも、まだ希望を持てていたと思うんですけどね。
気の早い葉鍵ファンはとっくに天下は自分らのものと思っていたかもですが、99年のこの時が名実共に変わったときなのでしょう。
媚肉の登場などで最近はようやく独自路線を歩みだしたようにも思いますが、90年代のADVはエルフが作ってきたと思う人間には、この没落は残念な出来事でしたね。

ランク:C-(佳作)

Last Updated on 2025-01-06 by katan

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