『Satyr (サティア)』は1994年にPC98用として、アーヴォリオから発売されました。
端的に言うならば、花育成SLGになります。
アダルトゲームにおける育成SLGの先駆的な作品でした。
<概要>
対象に育つ意思があるのかで育成と調教を分けるという考えならば、競走馬調教SLGというように花調教と言うべきではないのか?
でも、字面的には花には育成だよなとか、くだらないことを考えちゃいそうですが、花の精を育てるということですし会話をしたりもするので、本作に限っては花(の精)育成SLGで良いのでしょう。
<感想>
花を育てるという珍しさに、きゃろらいんようこさんの描く可愛いキャラ、サクサク進む展開に適度に心地良いテキストと、全体的にはとても雰囲気の良いゲームでしたね。
万人向けと言うか、誰でも楽しめるタイプのゲームだと思います。
アダルトゲームにおける育成ゲームの元祖との見解もありますし、私もどこかでそういう表現を用いているかもしれません。
しかし、PC88時代にもあったので、正確には違うと言えるでしょう。
でも、そういう作品も、PC98に入って一時期途切れていましたからね。
非常に珍しいのも確かだったし、PC98における以後のブームのきっかけにもなりえたのでしょう。
例えば、ノベルゲームにおける『河原崎家の一族』がそうであったようにね。
ただ、現実には先駆けであることは確かであるものの、ブームの火付け役とまでは至らなかったのかな。
ノベル系で例えるならば、河原崎家の前の『奈緒美』みたいな立場でおわっちゃったんですよね。
その原因を具体的にみていきますと、まずはシステム。
ゲームの目的は花を育てるということになりますが、基本的に天気や湿度に応じて花の置き場所を変えるだけです。
パラメーターも少なかったですし、ボリュームも少なかったです。
この当時は一般PCゲーでは育成SLGが流行っていた時期で、かなり出来の良い物も多かったわけです。
そういう一般PCゲーの名作と比べちゃうと、本作はどうしても見劣りしちゃうのですよ。
もっとも、本作はアダルトゲームなのですから、それならそれで別の魅力の出し方ってものもあるでしょう。
でも、エロ要素とかも薄かったですし、あんまりアダルトってことを活かしているとは言えなかったと思います。
<評価>
つまり、このゲームならではって要素があまりなかったのです。
明確な欠点もないし、プレイでストレスを溜める要因もありません。
短時間でも育成SLGの良さを味わえますので、多くの人が良作と感じる内容ではあります。
でも、それ以上に名作と感じさせる何かが足りなかったのですよ。
ノベル系ADVにおける河原崎家の立場を勝ち得た育成・調教SLGは、間違いなく『SEEK』と言えるでしょう。
『SEEK』は、育成SLGに強烈なSM要素を取り入れることで、アダルトゲームの利点を最大限に活かしたゲームでした。
本作がその立場になれなかったのは、そこら辺に理由があったんじゃないでしょうか。
そういう意味では勿体無い作品ではありましたが、テンポ良く育成物の醍醐味を味わえ面白かったのも確かですし、アーヴォリオの代表作と言える作品ではあったかと思いますね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-10-06 by katan
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