はるまで、くるる。

2012

『はるまで、くるる。』は2012年にWIN用として、すみっこソフトから発売されました。

悪夢と終末のハーレムって響きに惹かれたもので。
キャッキャうふふワールド、欲しいな~

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

商品説明を一部抜粋すると、以下の通り。
俺は4人の女の子達と人里離れた場所で長い春休みを過ごすことになってしまった。
ファンタジックな出来事も、SFちっくな出来事も、ミステリーみたいな出来事もなく、それなりにいろいろありながらも俺は4人の女の子と平穏な毎日を過ごしていたつもりだったが、それは大きな間違いだった。
女の子の1人。無茶なことをしがちな静夏が、唐突に言ったのだ。
「ここをこの男のハーレムにするわ!」

<感想>

体験版はプレイしていないので分からないのですが、もし序盤がそのまま収録されているのであればハーレムゲーと勘違いするかもしれないし、逆に後にシナリオゲーと聞いて手を出す人は、開始直後に少々面食らってしまうかもしれません。

つまり概要に書いてあるように、序盤は「キャッキャうふふワールド」でハーレムが進行し、Hシーンの連続となるのです。
まだヒロインがどんなキャラかも分からない状態からいきなりそれなので、こっちもビックリしてしまうというか、ちょっとHシーンの使い方が勿体無くも思うのですけどね。
それが後半になると一転してシリアスになりますので、何を求めてプレイしたかでも印象が異なってくるかと思います。

完全にネタばれなしというのも難しいのでジャンルだけ書いちゃいますが、本作はいわゆるループものになります。
ループ系の作品は元々は好きだったのですが、ゼロ年代に入った頃に乱発されまして、中頃には少々うんざりしていました。
つまり個人的には今から10年前には既に飽きたジャンルでもあります。
でも、こちらが飽きた後に出た作品でも、その頃に始めた人には新鮮に見えたみたいですし、いつの時代もその時期に始めた人には好かれやすいジャンルなのでしょう。
元々好きなだけに好きとなった要素もあれば、うんざりする要因になった要素もあります。
嫌な要素がなくなれば、元の好きなジャンルに戻りうるわけですから、嫌な要素への対処がどれだけなされているのかが、個人的な関心でもあるわけでして。

さて、その嫌になった要因の1つには、同じ展開を何度も見せられるのは苦痛というものがあります。
共通ルートが長い上にループなんてのは最悪な組み合わせです。
その点、本作にはそうした苦痛はなかったわけでして。
ストレスなく読めるものだから、すんなりと楽しめました。
序盤のハーレム展開及びHシーンの連続も、つまらないシモネタ・パロネタ混じりの会話で何時間も費やされるよりは、よっぽど楽しめます。
立ち絵全裸は全てのゲームに入れろと思うくらい立ち絵全裸好きでもあるので、立ち絵全裸があるというのも好印象でした。
ライターの文章が自分に合い、しかもライターが一人であることから、違和感なく最後まで楽しめるというのもあるでしょうが、構造的にもストレスの溜まらないような配慮がなされていると思います。
もう1つ付け加えるならば、ラストのHシーンを取り除けば容易にゲーム機に移植できてしまうような、アダルトゲームの必要性を感じないシナリオゲーは、ライターの独りよがりに思えて年々嫌いになっています。
本作は「キャッキャうふふワールド」にもシナリオ上の必然性がありますし、そうなると簡単にゲーム機に移植できないことから、アダルトゲームでしかできないという点でも評価できます。

かように好印象な点・評価できる点もあるのですが、必ずしも良いところばかりでもありません。
ループゲーにありがちな苦痛がないことは良いことなのですが、それはあくまでもマイナス要因がないというだけ。
じゃあ、逆にループゲーとしての良さがあるかとなると、序盤は上記のようにハーレム展開ですし、後半に入ってもこの世界はどうなっているのだとミステリーっぽく進行し、終盤でループ構造が一気に説明されて終わりです。
ループ構造に一応のSF的説明をしていますので、設定としては問題はないのかもしれません。
しかしループと気付いた頃にはネタバレに入りますので、繰り返されるループものとしての魅力を楽しむ時間が短すぎます。
だから一見するとSF作品のようでありながらも、SF好きが求めるものが書かれている時間は駆け足気味で短いため、楽しめる時間があまりないのです。
個人的には、これはSF好き向けとは思えないんですよね。
もう1つ加えると、こういう指摘は別のゲームでもしたのですが、人選がありえないよねと。
細けぇことは気にするなって人なら問題ないところでもありますが、ちょっと基礎となる土台作りで問題があるように思います。

全体のボリュームが普通な中でハーレムに時間をそれなりに割いているため、ストーリー本筋の量はそれほど多くありません。
その中で、確かにマイナス要因も少ないのですが、逆にプラスとなる要因も少ないわけでして。
だから不満もないのだけれど、あまり印象に残らないストーリーでもありました。

<グラフィック>

この印象の薄さというのは、グラフィックの使い方も大きく影響しています。
本作における一番の不満はここでしたから。
確かにキャラは可愛いし、個人的にも非常に好みなのです。
上記のように立ち絵全裸がある点も好印象ですし、ちょっとしたエフェクトなんかも良いのでしょう。

でも、結局これ、ハーレムゲーをやりたいだけなの?と、最後まで思ってしまったわけでして。
一枚絵とかデフォルメキャラを用いた絵とか、それ自体は良いのです。
でも、限られたCGをそこに使うの?って思ってしまう。
本作にはミステリー的な側面もあるし、SF的な側面もあります。
ライターの書いた文章は結構エグイ内容も含んでいますし、もっと怖く、もっとエグく、もっと魅力的に表現できたのではないでしょうか。
これはハーレムゲーなのだからHがメイン、シナリオはオマケと言われてしまうと、私の意見は頓珍漢なものになってしまいますけどね。
シナリオゲーとして欲しいところ、盛り上げる場面に絵がないことで、余計にも盛り上がりが欠けてしまったのかなと。
このライターの実力、グラフィック陣の技術力を上手くかみ合わせていれば、何倍にも面白い作品になりえたでしょうに。
勿体無いなと思うだけに、残念でもありました。

<評価>

ゼロ年代のループゲーの中では相対的に良く出来た部類でもあるのかなとも思いますが、総じて全体的にインパクトに欠けていることもあり、佳作とします。
繰り返しますが、もっとできたはずと可能性の欠片が見えていただけに、勿体無い作品でもありましたね。

ランク:C(佳作)


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Last Updated on 2024-11-23 by katan

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