はじまりの季節 ~居酒屋冬物語~

1998

『はじまりの季節 ~居酒屋冬物語~』は1998年にWIN用として、R.A.N Softwareから発売されました。

年上の彼女との恋愛、寝取られを描いた、最近では少なくなったタイプの作品ですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・俺、相川修平(主人公:名前変更可)、ただいま大学3回生。
ごくごく一般的な学生である。関西から出てきて東京の大学に入り、この学生街にある居酒屋でバイトをしながら生計をたてている。
江口香織、ただいまOLの彼女とは、1回生の時のコンパで知り合ってから付き合っている。
しかし、最近彼女との仲がギクシャクしだしたのだ。
しかも、他に男がいるみたいで…。思い悩んだ俺は、最後の望みをかけて、彼女をスキー旅行に誘ったのだったが……。

<感想>

基本的には恋愛ものになるのですが、幾つか当時らしいなと感じられる点と、逆に当時の他の一般的な恋愛ものとは異なる点があります。

まず本作は、当時から流行っていた恋愛ゲームになります。
もっとも、恋愛ゲーの多くが高校を舞台としているのに対し、本作の主人公は大学生ですし、主人公の彼女は2歳年上の社会人のOLでして。
そのため、ちょっと対象年齢が高めになっています。
とは言うものの、確かに流行路線ではないかもしれませんが、今よりは大学生主人公の作品が多かった時代の作品でもありますので、必ずしも珍しくはないのでしょう。

それと上記のように、本作の主人公には既に彼女がいます。
彼女との仲がギクシャクしているという状況から始まり、彼女との仲を回復させても良いし、旅行先で出会った別の女の子と結ばれるというルートもあります。
どういうキッカケがあったのか、ハッキリとした理由は分らないのですが、この年は彼女がいる状態で始まる作品とか、特定のヒロインとの関係を強調した作品が目立って増えた年であり、本作もその中の1本となるのでしょう。
恋愛ゲー全般という点では彼女付きという設定は比較的珍しいのですが、98年の作品らしいと言えば、らしい作品だったのかもしれません。

キャラ全般に関しては、当時の恋愛ゲーでは、人間以外のキャラが出てきたり、物語が非日常の展開に進む傾向がありました。
しかし、本作には人間しか出てきませんし、内容もリアリティのある展開ですので、ちょっと当時の恋愛ゲーとは毛色が異なる作品でした。

日常の中に混ざる非日常が好まれた当時にあっては、本作のような類の作品は地味に見えてしまうのでしょう。
私も当時は非日常の要素を好んでいましたので、最初は本作が地味に見えたものです。
だから当時というよりは、何年か経ってから、そういえば、ああいう雰囲気の作品は珍しかったなってことで、その良さが分ってきた感じなんですよね。

本作は原画も少女漫画風というのか、流行りの萌え絵とは違っていました。
設定やグラフィックが相まって、当時の流行路線とは明らかに異なるものの、流行路線とは異なる方向性の恋愛ものを描くことには成功できたのでしょう。

また本作は、単に彼女との純愛だけを描いた作品ではありません。
旅行先には彼女の上司も来ており、展開次第では寝取られてしまいます。
したがって、本作は恋愛+NTRとなるわけですね。
こういうハッピーとNTRの両方がある作品は、個人的には大好きです。
自分の選択次第で天国にも地獄にもなりますが、そのギャップを楽しむこともできますし、両方を描けるのがゲームならではの良いところですから。
当時は本作に限らず結構存在していたジャンルですが、今は煩い人が増えてしまい、商業では絶滅状態になってしまいました。
何とも残念ですね。
まぁ同人ゲーを探せばあるのだけれど、今だとNTRゲーを作りたい人が作るので、メインがNTRで、純愛の方がオマケのような作品ばかりですからね。
個人的には恋愛オンリーでも通じるくらいの良質な恋愛ストーリーがあり、そこにアクセントとしてNTRがある方が好きなので、そういう作品は同人でも今はほとんどないように思います。

そういや、ハッピーとバッドの両方がある作品、しかもバッドで寝取られのある作品は幾つかありましたが、ちょっと定義次第でややこしいのかなと。
一般に用いられる寝取られと異なり、ゲームにおける寝取られは、当初は彼女などが他人に犯られるシーンを目撃するというものでした。
だから彼女が主人公の目前で陵辱されるシーンのある作品を、寝取られゲーと言っていたわけですね。
その意味での寝取られゲーは90年代にも幾つもありましたが、最近は体だけでなく心も間男のものになる物を寝取られと捉える傾向があり、そのように心まで間男に傾いている寝取られ作品は、90年代にはまだ少なかったと思います。
本作での寝取られというのは、彼女が気になる上司と関係を結ぶもので、上司に陵辱されるというのではなく心からという意味では、当時としても比較的珍しかったかもしれませんね。

ストーリー自体は特別秀でているってほどではないですが、全体の流れのメリハリがあったので、まとまった内容の作品だったと思います。

またシステムに関しても、スキップやヒント機能、直前の選択肢に戻る機能など、当時のノベルゲーの中では充実していました。
この辺も好印象でしたね。

<評価>

この年の作品らしいなという部分を有しつつも、流行路線からはずれた本作。
全体としては、一見すると地味なのだけれど、なかなかに個性的な作品でした。
当時の私は炉利系の萌え作品を好んでいたこともあり、本作が地味に見えたわけでして。
だからクリア直後は佳作くらいの印象だったのですが、後になって良さが分ってきた作品ということで、総合では良作としておきます。

ただ、本作の場合、今からやっても、あまり良さは分からないと思いますね。
少なくとも当時のゲーム事情を理解している人でないと、本作の異質さは理解できないように思います。

R.A.N Softwareは、その後は完全に、人気作の二番煎じばかり作るようになりました。
したがって、一番ブランドとしての個性も発揮できていたのが本作であり、個人的には本作のような路線を続けて欲しかったものです。

ランク:B(良作)


はじまりの季節

Last Updated on 2024-12-30 by katan

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