『PILcaSEX (ピルケース)』は1996年にPC98用として、PILから発売されました。
SM専門ブランドによるオムニバスのマゾ向けゲームになります。
<概要>
オムニバスということで、5本の作品と音楽コーナーが収録されています。
5本の作品はどれもSMに関連するようなADVなのですが、ADV内の細かいゲームジャンルは異なっていることが多く、一工夫加えることの多かったPILらしい作品となっています。
収録作品は以下のとおり。
『AFTER SEEK』 『犬』 『輪 ~リンチ~ 恥』『無題』 『性欲の強い看護婦』
『AFTER SEEK』は『SEEK』ファン向けの作品ですし、内容も想像がつくと思うので、それ以外の4本を軽く紹介します。
<犬>
人として扱われず犬と認識された男が、飼い主である3人の女性に調教される、マゾ向け特化作品。
ゲームジャンルはコマンド選択式のADVになります。
SMというとSとMの両方が含まれてしまい分かりにくいですが、調教ゲーなど当時は基本的にSなゲームの方が多かったです。
本作のようなマゾ向け特化作品は、当時は非常に珍しく、SM専門ブランドの懐の深さを示した作品でした。
今で言えば、『夢幻廻廊』が似ていますね。
<輪 ~リンチ~ 恥>
いじめ問題に一石を投じる作品ということで、いじめられっ子の主人公がクラスメイトにいじめられ、それが次第にエスカレートしていく話。
アダルトゲームなので、いじめも輪姦されたり性的なもの中心。
救いがないのでつらいですね。
ゲームジャンルはノベル系のADV。
画面下部にテキストが表示され、基本は読むだけなのですが、たまに選択肢が表示され分岐していきます。
<無題>
究極のマゾ。
いじめられるだけでは足りなくなってしまい、自分を殺してくれる者を探す女性の狂気を描いた物語。
上部の画像は、この「無題」の画像になります。
マゾのいきつくところはここなのだろうか。
SMプレイをしていた相手が、俺には家族もあるんだと泣きを入れるところが、「プレイ」と「本気」との違いを感じさせます。
デジタルノベルとあるように、これは完全一本道のノベルでした。
モノクロ画像に血だけが赤く浮かび上がり、インパクトのあるグラフィックも特徴でした。
<性欲の強い看護婦>
これは他の作品と少し方向性が異なりまして、ドSな看護婦がやりまくる作品になっています。
長岡建蔵さんが原画を担当し、狂ったような表情が特徴でした。
ファンなら絵目当ても良いかもしれません。
ゲームジャンルはノベル系のADV。
確か、始まった後は一本道なのだけれど、どのシナリオが始まるかはランダムみたいなシステムだったかと。
<評価>
どれもSMと関連する作品なのだけれど、物語の方向性も異なりますし、ゲームジャンルも異なるので、全然被らず楽しめます。
内容的には、かなりハードだったのですが、オムニバスということで一つ一つが小粒なのと、作品によっては欲しいところに絵がなかったりで、テキストの内容ほどには過激に感じないのかなと。
とはいえ、当時は陵辱系作品全般をみてもS向けの作品ばかりで、M向けの作品が皆無だった時代であり、その中で、様々なタイプのM向け作品を出してきたことは、それ自体とても意義があると思います。
その点を考慮し、総合でも良作とします。
良い作品だとは思うのですが、一本一本を単独の作品として作りこんで発売していれば、どれかは名作として名が残ったかもしれません。
なまじ可能性が秘められていただけに、アイデアの原石のような形で世に出てしまったことは、少し勿体無かったように思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-11-20 by katan
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