ファンタズム

1996

『ファンタズム』は1996年にWIN用として、パイオニアLDCから発売されました。

海外では一部で発禁処分になったようで、その猟奇的な過激さが話題になった作品でした。

<概要>

オリジナルの英語版は『PHANTASMAGORIA』という題名で、1995年にSIERRA社から発売されていました。
本作は、その日本語移植版になります。

ゲームジャンルはポイント&クリック式ADVになります。
あるいは実写ムービーが主ということで、当時の言い方としてインラタクティブムービーでも良いでしょう。

内容的には、館モノないしホラーモノであり、数々の惨殺シーンなど、残虐なシーンが話題となった作品でした。

<最多CD枚数>

PCではWINDOWSが標準となり、ゲーム機ではPS等のいわゆる次世代機が主流になることで、ゲームにCDが使われることが当たり前な時代になりました。

これによって従来よりも容量が一杯使えるようにはなったのだけれど、だからといって無限なわけではありません。
フルカラーのムービーや音声を大量に入れると、CD1枚の容量なんてすぐに埋まってしまいます。

圧縮技術も進歩した今日では、ディスクの枚数でゲームの規模や面白さを測ることには、大して意味がないのでしょう。
でも、CDを用いたゲームが出始めた頃は、圧縮技術が未熟だったので、ディスクの枚数もゲームの規模や面白さを測りうる大きな指標となりえました。

まぁ、ジャンルにもよるんですけどね。
アクション系やSLGとかリアルタイムで処理するゲームなら、容量を使わずにボリュームを出すことも容易ですから。

しかし、これがプリレンダのムービー等が主となるADVとなると、話はかわってきます。
全編高解像度のフルカラーのムービーで進行、しかもフルボイス。
96年頃のアダルトゲームはまだPC98が主流だったのですが、WIN用の一般ゲーム(主に海外製)では、わりとこういうゲームも多かったです。
でもね、中には全部ムービーやボイスのくせして、CD1枚ってのもありました。
圧縮技術が未熟な以上、ムービーやボイスが倍になれば容量も倍近くなるわけでして。
それなのにCD1枚で済むってのは、それだけボリュームが少ないって事です。
そういうのは、ほぼ間違いなく凡作以下でしたね。
この頃の粗製濫造が、後の海外ADVの衰退に繋がったのは間違いないでしょう。

もちろん、CDの枚数が多ければ面白いってわけではないけれど、枚数が多ければそれだけボリュームがあったのも確かなわけでして。
映画のビデオよりも安い値段で、映画よりも長いムービーが使われたゲームがあったら、私はそれだけでも一応の満足はできちゃいます。

さて、国内で発売されたゲームの中で、最もCDの枚数が多かったゲームは何か?
私の記憶している中では、答えはこの『ファンタズム』になるんですよね。
WIN版が7枚で、サターン版が8枚でした。
PC用の方が高解像度に出来るのでしょうが、CS用はハードディスクにインストールできないので、それでCD枚数が増えたのでしょう。
この7枚ないし8枚というのは、少なくともオリジナルの英語版が発売された95年の時点では、間違いなく世界最高と言えたかと思います。
97年に発売された『FF7』が3枚でしたからね、如何に多いかが分かるというものです。

CDを7枚も費やしたCG&実写ムービーとボイス。
そんなゲームがあったというだけでも、ADVファンには一見の価値があったと思いますね。

<感想>

とはいうものの、本作が話題を呼んだ理由は、そんなCDの枚数とかって部分ではなく、また別な点にあったりします。

というのも、本作はサスペンスホラーな作品だったのですが、これがかなり残虐で過激だったのです。
確かアメリカの一部の州だったと思いますが、年齢制限がついたとか、発売禁止になったとか、そういった騒動にまでなったはず(細かい内容は忘れてしまいました。スミマセンです。)。

そんないわく付きの過激な大ボリュームゲームが、日本語化される。
それを聞いただけでも、非常にワクワクしたものです。
雑誌とかでも、凄く気になって発売を待っていましたからね。

当時のWIN用ゲームはかなり手放してしまったのですが、いろんな付加価値のある本作は結局手放さずに手元に残っています。
そういう気にさせてくれるってだけでも、十分に意義のある作品だったのではないでしょうか。

<ゲームデザイン>

前置きが長くなってしまいましたが、本作は当時の言い方からすると、インタラクティブムービーに属するのでしょう。

『MYST』のように1人称視点ではなく、主人公の姿が映されます。
画面をクリックして進めることからも、P&C(ポイント&クリック)タイプのADVというのが、最も素直なのでしょう。

ただ、通常のP&C式ADVは豊富なテキストを楽しむものですが、本作の大半は音声と実写キャラの動きで表現されており、テキストを読むという作業はほとんどありません。
クリック箇所の少なさも含めて、楽しさの方向性としてはMYST系に近かったです。

ここが何とも難しいところなんですけどね。
このゲームは話題性は高かったし反響も大きかったものの、海外のコアなADVファンからの評価は芳しくなかったりもします。
P&Cのようだけどクリック箇所は少ないしテキストも少ない。
MYST系のようだけど謎解きっていうものがない。
P&C系とMYST系の中間のような構造であり、それでいて両者の悪いところをとったような作品だったのです。

もっとも、これは本作に限った話ではありません。
インタラクティブムービーと呼ばれた作品のほとんどに言えた話です。
ただ、本作を製作したSIERRA社では、『Gabriel Knight』シリーズ(日本語版はなし)をはじめとして、名作・傑作が一杯ありましたからね。
特に同じ95年には、傑作中の傑作たる『Beast within』が発売されていますし。
そうなってくると、目の肥えたあちらの人は辛口にならざるを得ないんでしょうね。

とはいえ、海外のGKシリーズとかと比べると酷だなっていうだけで、日本語で遊べるADVの中では、本作のゲーム性もかなり良い方に入るしょう。
そういう意味では、私は素直に評価したいかなって思いますね。

<ストーリー>

ストーリーはサスペンスホラーになります。
海沿いにある、世間とはちょっと離れた洋館に引っ越してきた新婚夫婦。
しかしながら主人公である新婦は、そこで殺されそうになる夢に悩まされることになり、それで心機一転ということで館の改築を始めることにします。

そのためにまず、広い館内を探索することから始めようってことになるのですが、するとその新婦の身に次々と奇妙な現象がおこり・・・ってな感じで物語は進行します。

CGと実写を交えた猟奇的なムービーが随所に散りばめられ、プレイヤーを飽きさせずに楽しませてくれます。
ただ、私は販売に制限がかけられていたのを知ってましたからね。
どれだけ過激なんだろうって期待しすぎたんでしょうか、騒ぎになったほどには過激でもなかったかと思います。
この程度の猟奇さなら映画でも普通にあるような気もするのですが、ゲームだと基準が厳しいのですかね。
それとも、新婚夫婦がベッドで抱き合ってたのがまずかったのかな?

それから、上で散々書いていたボリューム面ですが、若干見掛け倒しだったりします。
確かに7枚組だけあって並のゲームよりは多いです。
ただ、思ったほどではなかったかと。
作り方次第でCD枚数を半分に抑えられた気もしますね。
サターン版なんか特にそうですね。
ハードディスクにインストールできない分、それで枚数が増えたのかもしれませんが、何も考えないで移植したら増えちゃった感が強かったです。

<評価>

とにかく、そうですね・・・
英語がバリバリで海外のP&C式ADVも普通にこなす人には、本作はそれ程の作品とも思えなかったんじゃないかと。
でも、逆に日本語で遊べるゲームに限った場合、全然違った評価になってくるとも思えるんですよね。

アダルトな雰囲気(何気に嫁さん美人)とスプラッタで猟奇な展開。
それが豊富なCGや実写で表現されているゲーム。
しかもゲーム形式はP&CタイプのADVですからね。
そういうのが好きな人も少なからずいるかと思いますが、探すとこれが意外にないんですよね。
個性が強いから、私もずっと手放せず持っているわけですし。
そう考えると本作もまた、代替の利かない貴重な1本なのかもしれませんね。
そのため、総合でも名作とします。

ランク:A-(名作)


CDソフト ファンタズム

Last Updated on 2024-11-18 by katan

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