『ウォーキング・デッド』は2013年にPS3用として、サイバーフロントから発売されました。
『The Walking Dead』をゲーム化し、話題となった作品ですね。
<概要>
オリジナル版は2012年にsteam等で発売され、日本語移植版は2013年にPS3用とPC用が発売されています。
商品紹介・・・本作は、全世界で大ヒット中の『The Walking Dead』の世界観をベースにしたADVゲームです。
「ウォーカー」と呼ばれるゾンビに支配されつつある世界で、仲間と共に生き残る為のドラマを体験できます。
映画のようなカメラワーク、主人公を取り巻く人間ドラマなど、これまでのアドベンチャーゲームにはないシリアスでドラマティックな深みが、プレイヤーをウォーキング・デッドの世界へと誘います。
<感想>
原作もドラマも大人気だそうで、日本でもドラマは人気らしいので、ファンも多いのでしょうね。
もっとも、私は原作もドラマも見ていないので、キャラや世界観に全く思い入れはありません。
ストーリー云々の話は濃いファンが語った物を読んだ方が良いだろうと思うので、それ故に私が深く語るつもりもないのですが、とりあえず原作未見でも面白かったです。
全く知らなくても楽しめるし、ファンにも評判が良いようなので、ファンなら加点されるってところでしょうか。
まぁ、評判の高さから過度に期待してしまうと、それほど絶賛するほどの物かとか思ってしまいますが、ムービーを存分に堪能しながら十分にストーリーも楽しめるので、それだけで良作に値するでしょうね。
ただ、本作はQTEやポイント&クリックを用いつつも、基本的にはムービー中心のゲームですので、ムービーゲーが苦手な人には全く合わない可能性は非常に高いのでしょう。
私はムービーゲーが大好きなので、それでこのストーリーなら文句はないってのもありますし。
さて、ここから少し気になったところでもあるのですが、本作は一昔前ならインタラクティブムービーと呼ばれたような、ムービー中心のADVになります。
まずグラフィックに関してですが、3Dの映像は確かに良くできていますし、同系統のADVの中でも抜き出ているのかもしれません。
しかし他ジャンルの優れたゲーム、つまり最先端のFPSとかよりも抜き出ているとまでは思えませんし、そもそもこのゲームでこのグラフィックの必要はあったのかなと。
FPSのようなアクション系の作品など、3Dがゲームシステムに密接不可分な場合、その中で演出を強めるためには3Dグラフィックの向上は必要不可欠です。
しかし、ムービーを見ることを主とした本作のゲームシステムからは、3Dにする必要性はなく、また技術が進化したとはいえ、それでも実写とか2Dより画像は劣ります。
結果として、20年前のインタラクティブムービーより満足できたのかとなると、どうしても疑問が生じてしまいます。
2Dよりも3Dの方がどうしても粗くなってしまいますが、そうまでしてあえてこのグラフィックにこだわる必要が感じられないのです。
ゲームシステムはQTEによる選択肢の連続と、たまに探索するポイント&クリック(P&C)の要素が加わります。
これを部分的に判断すると、まずP&Cの部分はP&C式のADV好きには非常に物足りないものですし、逆に純粋にストーリーを追いたい人には邪魔に感じられかねません。
つまり中途半端なのです。
まぁ本作はP&C式ADVではなく、ポイント&クリックはオマケでしかないのだと、別の部分に特徴を見出すこともありなのでしょう。
そこで選択肢の連続が問題となってくるのですが、この選択肢の連続も数こそは多いものの、それにより物語が大きく変化することもありません。
ゲーム紹介なんかを見るとマルチストーリーマルチEDっぽいものの、実質的には一本道のゲームです。
したがって、この方面でのゲーム性の評価もできません。
まぁぶっちゃけた主観的な感覚で述べますと、確かにLDゲームとか初期のインタラクティブムービーよりは優れているものの、MYST系ADVが盛んだった頃に一部で存在した、後期のインタラクティブムービーよりは劣るわけで、20年近く前のPCの同系統の作品よりも劣るよなと。
強引に例えるなら中期のインタラクティブムービーを3Dでやっただけでもあり、ゲームデザイン面での退化には不満が強く残ってしまいました。
ムービーゲーは基本的に好きなので、楽しめはするのですけどね。
でも、これではJRPGがどうのって笑っていられないよなと。
最近は海外の評価されるADVのゲーム性の退化が顕著で、少し気になってしまいます。
20年前の洋ゲーのADVは、伝統的なポイント&クリック式に、MYST系、それにインタラクティブムービー系と大きく3種類ありました。
本作はP&C式ではなく、MYST系でもなく、インタラクティブムービー系に属する作品です。
当時、真っ先に廃れていったのがインタラクティブムービー系だったのですが、それが本作らの様に形を変えて複数登場し、今一番元気になっていることには、不思議な因果を感じてしまします。
私はLDゲームみたいな初期のインタラクティブムービーは、実はそれほど好きってわけでもないのですけどね。
しかし後期のインタラクティブムービー系は大好きでしたし、まだまだ発展の可能性の残っていたと思います。
まぁ、後期のインタラクティブムービー系と言っても、例えば『殺意の証明』のように選択肢の連続から分岐を繰り返す物や、『タイタニック』のようにオープンワールド系の原型の類、『トータルディストーション』のようなマルチメディアとしての発展、ないしヴァーチャルリアリティの模索など、いろいろ方向性はあったわけでして。
つまりはMYST系の様に一定数の作品が揃わない物を一纏めにしているだけですから、単純にまだ遊び足りないってのもあるわけです。
だからこのジャンルが復活すること自体は嬉しいのですが、本作はゲームデザイン的には全盛時のラインにも立っていないよなと。
もちろん複雑な発展など不要という人もいるだろうし、また優れたグラフィックと良いストーリーの需要が多いからこそ、インタラクティブムービーとなったのかもしれませんが、それはそれで寂しい話に感じてしまいます。
国内のADVは様々な要素が削られていき、ジャンルではノベルゲーが大半となり、その中でも選択肢すらほとんどない物も増えてきています。
それらと同じ方向を向いているように感じられ、何だか寂しくなってしまうのです。
ADVはストーリーさえ良ければそれで構わないのでしょうか。
本作の1周目は確かに楽しくもあるのだけれど、その一方でADVとしては、どうにも迷走しているようにも感じられた作品でした。
ゲームデザイン等も考慮し、総合では佳作とします。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-11-07 by katan