『乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-』は2013年にWIN用として、Navelから発売されました。
前年に発売された『月に寄りそう乙女の作法』の続編になります。
この作品をプレイすることで、つり乙シリーズは一つの作品として完成といえるでしょうか。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
主人公『大蔵遊星』は、日本の財界を代表する‘華麗なる一族’大蔵家の末端に、望まれぬ子として生を受けた。
長じて人並みの夢と希望を手に入れた遊星は、性別を偽り『桜小路ルナ』に仕えることで、大蔵家という自らを閉じこめる籠を脱して夢の一端に触れることができた。
しかし些細なミスで掴んだ夢の端は崩れおち、居場所をなくした遊星は、兄に拾われて再び籠の中の鳥となった。
遊星の妹『大蔵里想奈(りそな)』は、大蔵家の嫡子と正妻の間に生まれ、愛の上に愛を重ねて大切に育てられた。
何一つ不自由なく育てられた里想奈だが、幾重にも重ねられた両親の愛は、やがて固まり歪な繭となって、さなぎになる前の彼女を包みこんだ。
里想奈が気付いた頃には、その繭は自力で破れなくなってしまった。
居心地の良い繭の中で抵抗する気力を奪われ、里想奈は外へ出ることを捨てた。
―ある日、彼らの兄は試みとして、籠の中へ繭を放りこんだ。
里想奈は外の世界に憧れて、兄に尋ねた。「私は繭の外へ出られますか」
遊星は繭を啄き、その殻を嘴で壊せることに気が付いた。「出られるよ」
安全だった籠と繭を捨て、遊星と里想奈は微笑みあいながら同じ言葉を口にした。「二人なら旅立てる」――
『フィリア女学院日本校』へ通えなくなった遊星のため、りそなは『パリ本校』への留学を提案する。
遊星は再び庶民の娘『小倉朝日』となり、りそなに仕えるメイドとして、服飾専修機関へ通うこととなった。
果たしてお互いの願いを支えあいながら、遊星兄妹は学院生活を送ることができるのか?
<感想>
前作の「つり乙」については、辛口に書いてはいるのですが、キャラについては結構好きでしたし、十分魅力的に描けていたと思います。
プレイしていて楽しめましたしね。
じゃあ何で評価が伸びなかったのかというと、ストーリーがこぢんまりとしていて盛り上がりに欠けていたのと、あとは大蔵家という存在の扱いが引っかかっていたのだと思います。
本作は、前作の続編になります。
前作では非常に良い味を出しながらも、サブキャラ扱いだった妹の「りそな」。
本作では、そのりそながヒロインとして描かれています。
他にもヒロインはいるのですが、やはりりそなの存在感は大きいです。
りそながヒロインとなり、あらためて大蔵家に焦点があてられることで、主人公を巡る物語がようやく完結したように思いました。
もし「つり乙」に最初からりそなルートが含まれていたら、私の「つり乙」に対する評価は、もしかしたら名作相当にまで上がっていたかもしれません。
本作をプレイすることで、あらためてそう思いました。
他方で、本作により作品として完結したのだから、本作を名作と判断しうるかとなると、また違った問題も出てきます。
もちろん、りそなルートを素直に楽しめた方からすれば、それだけで十分高く評価しうるのでしょう。
しかし、本作が続編として制作された以上、前作の存在があるわけで、前作のキャラが好きで前作で完結したと思っている人ほど、本作の存在は微妙に感じてしまうのかもしれません。
大蔵遊星の物語としては本作は素晴らしいのですが、「つり乙」の続編としては少し引っかかってしまいました。
<評価>
Navelの作品としては、個人的には一番高評価の作品となるでしょうか。
もちろん前作あっての本作ですから、つり乙シリーズ全体を通して良作といえるように思います。
シリーズとして十分面白い作品ではありましたが、2作品を最初から1つとして纏められることができたら、もしかしたら名作にもなりえたかもと思うと、非常にもったいない作品でもありましたね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2025-03-24 by katan