『鬼監督と俺の彼女 ~女優の卵が鬼監督と肉体関係を結んだ理由~』は、2012年にWIN用として、めくじらから発売されました。
これを1500円でやられてしまっては、脱帽するしかないですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
それぞれ俳優と女優を目指す主人公とヒロイン。
前半はその二人の出会いから親密になるまでを描いた物語。
後半は映画監督であるキモいオヤジにより、ヒロインが調教されてしまうというものになります。
途中でどの視点で見るかをプレイヤーに選ばせる場面がありますので、視点をどう捉えるかで寝取られ(NTR)でもあり、同時に寝取り(NTL)でもある複合的なタイプと言えるでしょう。
<感想>
映画監督と女優の卵。
設定自体は、特に珍しいわけでもないのかもしれません。
だからこそ、ごまかしのきかない丁寧な描写が求められるのであり、それに見事に応えた点は素晴らしいの一言に尽きるのかなと。
どこに重点を置くかも人により異なるのでしょうが、この手のジャンルとして重要なものの一つに、ヒロインの堕ちていく過程の描写があります。
同人作品や低価格商品の場合、ボリュームが少なめな作品が多いことから、ここがどうしても薄くなりがちだったりします。
しかし本作は、低価格ながらもミドルプライス級以上のボリュームがあり、しかもヒロインが一人なので、分量的にもしっかり描かれているのです。
テキストが良好なこともあり、じわじわと堕ちていく過程の描写はしっかりしており、この部分を重視する人でも満足できる仕上がりになっています。
ここは間違いなく、この作品の強みですね。
基本的に当該ジャンルに求められるであろう要素は兼ね備えており、ほとんどケチのつけようがありません。
減点法でいくのであれば、かなりの高得点にもなりうるでしょう。
そういう意味で、NTRとしては良いお手本になる教科書的な作品でもあります。
他方で、この作品しかない独自の側面はとなると、少し弱かったのかなと思います。
想定できる範囲内では、ほぼ満点の出来でもって応えています。
しかし、思わずこちらが唸らされるような新鮮さには欠けており、私が普段求める方向性とは少し異なってしまいます。
それと、本作はNTRとNTLと両方の側面があるので、事態が更にややこしくなってしまってはいるのですが・・・
作品紹介に大きく「寝取られADV」とあるし、他の感想でも良い寝取られ作品だみたいな表現を見かけます。
確かに良い作品には違いないのですが・・・これって寝取られ?
寝取られ作品として優れていると言われてしまうと、ちょっと違うよなと私は少し疑問が出てしまいます。
つまりね、上記のように両方の視点がありますから、寝取られであり寝取りでもあるので、字面としては両方を併記するのが正しいのでしょう。
そのうえで、どちらが主でどちらが従であるのか、どういうユーザーが最も満足できるかということが問題なのです。
作品紹介の絵でもあるように、本作の場合、きもいオヤジの存在感が最初から際立っています。
それは内容面でも同様であり、オヤジのキャラクター性が存分に描かれています。
汚くきもいオヤジが、いたいけな女の子を調教する。
私にはこの部分が、最も濃厚に見えたんですね。
だからオヤジがヒロインを寝取るという、寝取りものに見えるのです。
オヤジ中心に見た場合、オヤジのキャラは非常に立っていますし、ヒロインがオヤジに調教され次第に堕ちていく過程も秀逸ですから、とても良い寝取りものなのですよ。
他方で主人公とされる人物は、絵的にもキャラ的にも、どうにも弱いです。
あくまで寝取られものとして考えるならば、主人公が葛藤する場面が物語の「途中」にもっとあって然るべきです。
確かにヒロインと出会う過程は分量も割いているのですが、寝取られ始めた後は大分後に気付くまでの間、描写が少なくなっています。
そのために、いまいち寝取られものというイメージにならないのです。
オヤジのキモさに割いた情熱のかけらでも構わないから、もう少し主人公の焦燥感とかに割いてくれていたら違ったのでしょうが。
寝取りも寝取られも好きな私自身は作品に満足できますし問題ないですが、寝取られの、そして特に主人公の描写を大事にする人の場合には、少し注意が必要な作品なのかなと。
<グラフィック>
オヤジの汚さもさることながら、一番肝心な女の子のエロさも良いですね。
サンプルでも雰囲気は伝わると思いますが、絵のレベルは高いと思います。
基本CGの枚数は16枚であり、1500円という定価からすれば相当と言えるでしょう。
ただ、何事にもバランスというものが大事なわけでして。
本作はミドルプライスどころか、下手なフルプライス作品レベルのテキスト量があります。
つまり、結構長いのです。
それでCGがこの枚数ですので、1枚の出てくる感覚が長いのですよ。
だから価格から考えたCG枚数は少なくないものの、プレイ感覚としては少なめに感じてしまうのです。
このテキスト量なら、ミドルプライスレベルの価格設定でも、おそらく誰も短いなんて不満は言わないでしょう。
価格を倍以上にしても構わないから、それに見合っただけのCGを入れてくれれば、作品に対する印象も格段に上がったでしょうに。
その点がちょっと勿体無かったですね。
<評価>
良い「寝取られ」かと聞かれると少し考え込んでしまうのですが、広い意味での「寝取り・寝取られ」であるとか、或いは一つの作品としては非常に良くできています。
もう一つ本作ならではの突き抜けた部分が感じられないので、私の基準からは良作止まりになってしまいますけどね。
それでも、価格が倍でもCG枚数が倍になっていれば、これは名作だと言っていたかもしれません。
それだけ良質な作品でもあり、この手のジャンルが好きな人ならば、まず満足できる仕上がりになっているように思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-11-29 by katan
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