『奈緒美 ~美少女の館~』は1993年にPC98用として、レッドゾーンから発売されました。
マルチストーリーマルチエンディングのノベル系ADVで、レッドゾーンの名前シリーズの第2弾になります。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
女子高生の奈緒美とミナが洋館に迷いこんでしまい、そこで遭遇する不思議な出来事を描いた作品になります。
従って、内容としては、いわゆる館ものになります。
<感想>
本作はノベルゲームであり、選択肢を選ぶことにより、物語が分岐します。
もっとも当時はノベルゲームという呼称は一般的ではなく、マルチストーリー・マルチエンディングADVとの呼称の方が、おそらく一般的なのでしょう。
こうしたマルチストーリーマルチエンディングADVに関しては、何と言っても『河原崎家の一族』(1993)が有名だと思います。
本作は、よくその比較として名が挙がる作品でもありまして。
具体的には、本作の方が『河原崎家の一族』よりも先に発売されたという紹介されることが多いです。
実際、本作の方が先に発売されたことは事実なのですが、ここで若干注意すべきことがあります。
と言うのも、マルチストーリーマルチエンディングのノベルゲーは、実は80年代のPC88のアダルトゲームでも既に存在していたということです。
したがって、『河原崎家の一族』はもちろんのこと、本作も元祖とはならないのです。
そうは言っても、『河原崎家の一族』は非常に高い評価を得ました。
確かに『河原崎家の一族』は元祖ではなかったのですが、一度廃れかけたマルチストーリーマルチエンディングに再度焦点をあてて、誰もが納得できるレベルで完成させた、いわば中興の祖的な作品と言えたからなのでしょう。
似たようなゲームシステムである以上、本作がその位置に就くことも十分にありえたでしょう。
しかしそうならなかったのは、幾つか理由が考えられると思います。
まずは見た目が寂しいこと。
黒画面に文字だけという展開が、本作では多かったりします。
これは、プレイしていてちょっとさびしかったんですよね。
黒画面でなくても無機物だけってのも多いので、画面を見て楽しめる要素が希薄だったのです。
もう一つは、分岐の仕方ですね。
『河原崎家の一族』をはじめとする、この当時のマルチストーリーマルチエンディングADVは、選択によって大きく展開が変わっていきました。
つまり、自分の選択によってダイレクトに様々に展開が変化していき、それが支持されたのです。
本作は、マルチストーリーマルチエンディングではありますが、1つの選択肢で大きく変化することはありません。
ED数とかも少ないですしね。
記憶が曖昧なのですが、6つとかそのくらいだったと思います。
いくつかの選択肢の合計で判断されていくので、いわば今のノベルゲームの好感度と同じ仕組みをとっているのです。
この手法は、長めのストーリーの作品で、ストーリーに集中させる分には良いのですが、マルチストーリーマルチエンディングの分岐の楽しさを経験するという観点からは、あまりプラスにはならないかと思います。
つまり本作は、システムの面白さを伝えきれなかったわけです。
他にもボリュームの少なさとかもありましたから、そこら辺が中興の祖になりえなかった要因なのでしょう。
では、このゲームは楽しくないのかというと、必ずしもそうではありません。
『河原崎家の一族』が分岐重視のゲームブック型であるとすれば、本作はストーリー重視の読み物型ということであり、面白さのベクトルが異なるのです。
実際、物語の持つ淫靡さは河原崎家以上とも言えなくもないですし、黒い画面に白い肌がぼわっと浮かび上がる光景は、雰囲気を盛り上げるのに非常に役立っていました。
独特の不気味さで絶えず緊張感を持ってプレイが出来ましたし、基本的には非常に良く出来た作品だったと思います。
また主人公が女性ですので、Hシーンもレズになります。
そのため、レズ好きにも楽しめたでしょう。
<評価>
総合的には良作ってところでしょうか。
小粒な作品ですが、プレイ時間以上に印象に残る作品でもありました。
何だかんだで本作もそれなりに有名ですし、本作が「名前シリーズ」の2作目ということも後押しして、
根強いファンもいる作品ですし、それだけの内容は有していたとは言えますからね。
だから歴史的意義がどうのと面倒なことは抜きにして、館ものが好きな人ならプレイして損のない作品だと思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-09-12 by katan
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