『波間の国のファウスト』は、2012年にWIN用として、bitterdropから発売されました。
エロゲでは珍しい、経済を題材にした作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
常夏の島、『直島経済特区』。ビジネスの楽園と謳われる都市。
主人公、結城律也にとっては3年ぶりの故郷だ。
特待生としてロンドンに出てから一度も戻っていない。
島へと向かうヘリの中から街を見下ろす。
高層ビルの群れの中、ひときわ高くそびえ立つフェニックスタワーにすら懐かしさを覚えた。
律也は久々に再会する幼なじみたちに思いを馳せる。
かつて、仲間たちと始めたビジネス。今思えば子供の遊びだった。
だがその思い出がこれまでの律也を支えてきた。
その幼なじみたちと、ようやく再会できるのだ。
しかし、律也の胸には喜びだけではなく、一抹の不安がよぎるのだった。
特区に降り立った律也は幼なじみの一人、今川焼屋を細々と営業する若草つぐみと再会する。
昔と変わらない笑顔を向けるつぐみに律也は安堵する。
だが再会を喜ぶ暇もなく、律也はトップファンドマネージャー試験へのエントリーが認められたことを告げられた。
通称‘ハゲタカ’と呼ばれるトップファンドマネージャー。文字通り、経済特区の頂点に立つ存在。
ハゲタカ試験は特区の頂点へと駆け上がる、栄光への道に他ならない。
この試験を受けることこそが、律也の帰郷の目的だった。
<感想>
あなたはエロゲに何を求めますか?
少なくとも90年代までのユーザーは違っていたと思うのですが、いつの頃からか、複数のヒロインが存在し、それぞれにシナリオやHシーンがきちんと用意されていなければ、評価しないというユーザーが増えたように思います。
つまり、昔はメインルートのストーリーがしっかりしていれば、サブルートが劣っていても評価されていました。
それがいつの頃からか、ヒロイン全てのルートが及第点でなければ、評価されにくい時代になっていきました。
すなわち、キャラゲーが評価されやすく、ストーリー重視の作品が評価されにくい時代になったのです。
こうした傾向は、ゼロ年代後半から強くなっていったんですかね。
自分のことではないので、詳しくは分かりませんけれど。
したがって、巷では、シナリオゲーが減ったとかいう人もいますが、シナリオゲーが減ったというよりも、まず先に、シナリオゲーの構造自体が、ユーザーに叩かれやすく評価されにくくなり、昔なら注目された作品が注目されにくくなることで、埋もれやすくなったというべきなのでしょう。
本作は実質一本道の作品であり、その内容的にも、いわゆるシナリオゲーと呼べる作品になっています。
ヒロイン自体は複数いるのですが、メインルート以外は結構あっさりしています。
したがって、上記のキャラゲー的な観点で、全てのルートが及第点でなければダメというユーザーがプレイすると、本作はもの足りない作品と評されてしまうのでしょう。
もし、未プレイの人で、一番のメインヒロイン以外のヒロイン目当てで検討しているならば、本作はおすすめできないと言えます。
他方で、本作は上記のとおり、経済を題材にした作品であり、エロゲとしては珍しいジャンルといえます。
珍しいジャンルなうえに、比較的テンポ良く進むこともあり、だれることなくプレイすることができます。
したがって、シナリオゲーが好きで、他と被らない作品を求めているならば、本作はプレイして損のない作品と言えるのでしょう。
ただ、決して気になる点がないわけではありません。
後半が駆け足気味になり、描写が不足しているうえに、盛り上がりも弱いことから、終わった時の満足感がそれほど大きくもないといえます。
そのため、面白いのに何かもの足りないという印象になってしまいます。
また、経済系エロゲは確かに珍しいかもしれませんが、ラノベとかでも増えてきているジャンルですので、ある意味、ラノベの後追いとも言えるわけです。
昔のシナリオゲー好きなんてのは、エロゲが先端を行っているからこそエロゲをプレイしていたのであり、ラノベの後追いとしての珍しさに、それほど大きな価値は見出しにくいように思います。
それから、キャラゲーなら複数原画でも良いと思いますが、本作のような実質一本道の作品で複数原画にしてしまうと、どうしてもチープに見えてしまうように思います。
<評価>
総合では佳作としておきます。
上記のとおりの作品ですので、キャラ目当ての人には向かないでしょう。
他方で、シナリオゲーが好きな方であれば、そして経済系エロゲという存在に大きな価値を見出せるのであれば、私の評価以上に楽しめるといえますので、プレイしてみる価値があるのではないでしょうか。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-12-02 by katan
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