未来にキスを -Kiss the Future-

2001

『未来にキスを -Kiss the Future-』は2001年にWIN用として、otherwiseから発売されました。

ある意味、とっても「らしい」作品なのでしょうが・・・

<グラフィック>

ふたなり関係で有名な、みさくらなんこつさんが原画を担当したということで、発売前から話題性が高かった作品ですよね。

当時から既に有名な方だったみたいで、それだけに好きな人は好きなのでしょうが、個人的に「ふたなり」に興味がなかったこともあり、この作品が発売されるまで私自身は知りませんでした。
実際のゲーム画面にしても、何かバランスに違和感がありましたし、どうもあまり良いと思えないような・・・
たまたまこの作品が良くなかっただけなのか、それともこの絵と私の相性が良くないだけなのか。
その辺は定かではありませんが、いずれにしろ個人の好みの問題にすぎないですし、ここは良いとしましょう。

ただ、事前の印象では、みさくらなんこつ絵による、エロエロ調教ADVって感じを受けたわけでして。
そういう方面の作品であれば、原画ファンも大満足となったのでしょう。
しかしグラフィックの枚数も多くないですし、仮に原画自体が好みであっても、それほど高い満足度は得られないのかなと。

<感想>

ジャンルはノベル系のADVで、一見すると調教ADVっぽいのですが、実際にはライターである元長さんのメッセージを伝えたかっただけの作品。
簡潔にまとめると、そんな作品なのだと思います。

メッセージ性が強いので、その考えに同調できればはまり、そうでなければ楽しめない傾向の強い作品ではあるのでしょう。

もっとも、個人的には同調できたか否かは、あまり重要ではありません。
まず基本的な設定なのですが、今作もまた過去の名作から引っ張ってきたようなものです。
ライターの前作の時には、模倣からの逸脱だの何だのとネタを提供していましたが、逸脱できたかどうかはともかくとして、このライターに物語の基礎部分を作る能力はないのかなと思ってしまいます。
最初は気にならなかったものの、そういう作品が増えてくるとね。
言い訳をいろいろしているけれど、結局自分で考えられないだけだろって思ってしまうわけで。
他所の模倣や後追いというのは、えてしてシナリオ重視などと呼ばれる作品に多いですが、ゼロ年代前半の悪い傾向の一つでもあり、個人的には好ましくないですね。
好きな作品も幾つかあるものの、ライターとしては作家ではなく、二次創作家でしかないと思ってしまいます。

それから、ゲームが始まると日常描写があるのですが、これが退屈でした。
何だろうな~、何作もやっているはずなのですが、私はいまだにこのライターが上手いのか下手なのか分かりません。
凄くはまった作品もあれば、あまり楽しめない作品もあるわけで、楽しめた作品も絵や音などテキスト以外の部分の相乗効果で楽しめたのかなと、そんな風に思ってしまいます。
楽しめた作品もあるだけに難しいのですが、少なくともこの作品は良くなかったです。

そのような日常の後にライターの主張がくるのですが、キャラにライターの主張を語らせているように感じる点、終盤が唐突に感じられ全体の構成に疑問が感じられる点など、いくつが疑問を抱きました。
読者を飽きさせないように展開し、キャラとライターの主張に違和感がないように上手く溶け込ませるのが、優れた物書きだと思います。
それがきちんとできていないから、ライターのメッセージばかりが目に入るのでしょう。
しかもその内容にしても、既にどっかで見たような、別に当時としても目新しいものでもないですし、分量を割いて新しい視点から深く掘り下げたわけでもないし。
エロゲしかやってないようなユーザーには新鮮に感じられたかもしれないですが、そういう何も知らない人を対象にしたような作品は、あまり好ましいとは思えません。

<評価>

PCの普及率が高まり、ユーザーがどんどん増えることで、出せば売り上げ「だけ」は良かったゼロ年代前半。
※とはいえ、既にピークは過ぎ、エロゲバブルは既にはじけていたのですけどね。
でもその一方で過去や他所の模倣に走り独自性に欠け、中途半端にメッセージ性だけありつつも、きちんとしたストーリーが構成されていない。
今になって振り返ってみて、最も得るものが少なかったゼロ年代前半の、悪い部分を凝縮したような作品でした。
こういうのが増えたら、そりゃユーザーも早く離れてしまうよと思ったものです。

まぁ褒めたり貶したり、私は同じ製作者の作品であっても、感想は全然異なります。
誰か特定の人の信者になるとか盲目的に支持するということに対し、
私は性分的に向いていないのでしょう。
だから後の作品をまた褒めていますし、今後も駄目出しすることもあると思います。
蓋を開けてみないと分からない、当たり外れの大きいライターですしね。
今回は後者だったということなのでしょう。

ランク:E(駄作)


未来にキスを

Last Updated on 2025-02-24 by katan

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