『十三機兵防衛圏』は2019年にPS4用として、アトラスから発売されました。
SF系の大作が発売されると、やっぱりテンションが上がりますね。
<概要>
ゲームジャンルは、詳細は後述しますが、横スクロールの移動式ADV+SLGになります。
概要・・・
・13人の少年少女たちが織り成す壮大な物語
「追想編」の物語は「13人の主人公」それぞれの視点で展開されます。
各主人公には関係性の深いキャラクターとの専用エピソードがあり、物語を進めるにつれて、隠されたキャラクター同士の複雑な関係性への分岐を垣間見ることができます。
全員の物語を追い、13人それぞれが抱える謎を解き明かすことで「破滅の運命」の真相に迫っていきます。
・没入感を高める作りこまれたゲームシステム
「追想編」では、会話で集めたキーワードを思考することで異なるキーワードに変化したり、相手に投げかけることで新キーワードを入手できる新感覚システム「クラウドシンク」が搭載。
「会話の中で考え、問いを投げかける」、日常に近い流れで直感的に物語と謎解きが楽しめます。
さらに「崩壊編」で楽しめる様々な「機兵」を編成・駆使して戦う爽快シミュレーションバトルなど、作りこまれたゲームシステムが没入感を高めます。
<感想>
本作は2Dの横スクロールの移動式ADVに、SLGとなる戦闘パートが加わった作品になります。
本作をプレイして、何よりも良かったのが、ADV部分のグラフィックになるのでしょう。
ここは2Dのグラフィックなのですが、一枚絵の部分が綺麗なだけでなく、キャラの動きも本当に細かく丁寧に作られており、きっちりとシーンが描かれているのです。
ADVはこうあるべきだよなと、一人で何度も頷きながらプレイしていました。
立ち絵の動きを重視するタイプの作品はこうあるべきだし、これはADVの一種の理想形でもあるでしょう。
うん、これは本当に良かった。。。
強いて言うならば、特別センスを感じるとか、凄いなこれはという驚きはなかったのかなと。
一つ一つのシーンであれば、他の会社だって作れるでしょうし。
本作は、個々のシーンが凄いというのではないけれど、手を抜かずに丁寧に作り切ったのが素晴らしいのです。
センスが良い作品とかは、真似ろと言われても難しいかと思いますが、本作のように丁寧に作り上げるということは、他所でも真似ることはできるでしょうから、他所も本作をみならってもらいたいものですね。
次に、本作の特徴として挙げられるのがストーリーでしょう。
本作は13人の少年少女たちが主人公となる、架空の日本を舞台としたSF系の群像劇になります。
この手のジャンルは、何年かに一度大作や話題作が出ますが、壮大な雰囲気があって、テンションが上がってきますよね。
また、壮大で複雑な世界観は、考察好きな人にも向いているでしょう。
こうしたユーザーが盛り上がれる作品が出てくることは、それだけでも喜ばしいものです。
ただ、謎が謎を呼ぶストーリーと言えば聞こえは良いですし、私も最初は凄く期待してプレイし始めていたのですが、途中で妙に醒めてしまいました。
というのも、本作は、上記のとおり主人公が多いだけでなく、5つの時代をタイムトラベルで行き来する作品になります。
それだけでも複雑になりがちなのに、本作では、エピソードが細かく分断されて、ぶつ切りになっています。
また、時系列とかもバラバラに描かれており、より複雑になっています。
断片的なエピソードが用意され、それをプレイヤーの方でパズルのように組み立てる類の作品はありますし、そういう作品も私は好きなのですが、本作はそういう作品ではありません。
そうだとすれば、こんなにぶつ切りにバラバラにする意味はないし、もっとシンプルに描くべきではなかったでしょうか。
私は本作に対し、ぶつ切りのバラバラにすることに、意味を見出すことができませんでした。
本作には、魅力的なキャラも多いです。
個人的には、奈津乃が好きでしたね。
もしストーリーの描き方を上記の方法にこだわるのであれば、逆にキャラを絞るべきだったと思います。
果たして主人公を本当に13人にする必要があったのか。
もう少し練り込んで人数を絞り込むことはできたのではないでしょうか。
まぁ、そこまでならまだ良かったのですが、本作は画面に映っているキャラが、本当にそのキャラなのかも怪しいわけでして。
ここまでくると、ちょっとやりすぎです。
つまり、画面上では細かくキャラの動きが描写されているはずなのに、いつどこで誰が何をしているのかが、いまいち分からないのです。
これでは何の意味もないわけで、策士策に溺れるといった印象しか残りません。
そのため、ストーリーを読み進めたいという意欲も弱くなりますし、次第に白けてしまったのです。
また、これでは、上記のグラフィックの良さまで打ち消しかねません。
多くのキャラや多くの舞台が複雑に交差するストーリーは、それだけで期待したくもなるのですが、正直なところ、本作は練り込みが不足していたように思います。
また、ゲームシステムについても、本作のベースはADVであるものの、ゲームとしてはADVとしての面白さを追求したのではなく、その部分はSLGである戦闘パートに委ねています。
この戦闘パート、ここだけ単独でみると、お世辞にも優れているとはいえないでしょう。
もちろん、戦闘パート単独でみると優れていなくても、物語を盛り上げる演出的な意味合いがあったりとか、物語と融合することにより、相乗効果が生じ、それにより作品全体を面白くする場合はあります。
本来、そういう相乗効果こそが、ゲームの良いところなのでしょうし。
だから戦闘パートがストーリーと密接に融合していれば、問題も少なかったのでしょう。
しかし本作の場合、戦闘パートが物語パートと別々になっており、この相乗効果が期待できません。
「追想編」やら「崩壊編」やらいろいろ分けていますが、一つにまとめることはできなかったのか、疑問が残ります。
<評価>
丁寧に描かれたグラフィックは必見であり、それだけでもプレイする価値はあると思います。
他方で、ストーリーの構造といい、ゲームデザインといい、練り込みが不足しており、完成度が低いというか、ハッキリ言えば、本作は未完成といえるでしょう。
壮大な設定は好みですし、キャラも魅力的で好印象ですし、グラフィックも凄く良かったけれど、そういう個々の素晴らしい素材たちをきちんと料理せずに、素材のまま出してしまったのが本作です。
相殺して、総合では良作としますが、長所も短所も大きな作品であり、グラフィックの魅力の方を高く評価しすれば、ギリギリ名作という判断もあるかもしれません。
きちんと作り込めば、具体的には最終的に統括する人がきちんとグランドデザインを描けていれば、本作の希代の大傑作にもなりえただけに、本当に本当にもったいない作品でした。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-12-27 by katan
コメント