『リトル・ウィッチ☆パルフェ ~黒猫印の魔法屋さん~』は、1999年にWIN用として、工画堂スタジオから発売されました。
くろねこさんちーむのデビュー作となった作品ですね。
<概要>
工画堂スタジオには多くの「ちーむ」が存在し、その中に「くろねこさんちーむ」があります。
本作はその、くろねこさんちーむのデビュー作となる作品でした。
工画堂スタジオはPC88の時代からゲームを作り続けている老舗ですし、古くからのゲーマーにはシュヴァルツシルトシリーズや、あるいはパワードールシリーズの印象が強かったと思います。
私の友人にも、結構シュヴァルツシルトシリーズのファンが多かったですし。
その工画堂も、時代の変化に合わせて様々なタイプのゲームを出しますし、看板となる作品の傾向もまた時代によって変わるのでしょう。
ゼロ年代前半に限っていうならば、ミュージックADVシリーズを擁した「くろねこさんちーむ」の勢いが最も強かったように思います。
本作は、そのくろねこさんちーむのデビュー作であると同時に、工画堂スタジオ全体の方向性を変えていくきっかけとも言える、そんな作品だったように思います。
<感想>
ゲームジャンルは経営SLGで、具体的には魔法店を経営し借金を返すことが目的になります。
そこにADVパートとして、物語性が付加された作品でした。
お店を舞台にした作品は今でも定期的に存在しますが、今はノベルゲーが多いように思います。
お店を舞台にしたノベルゲーを否定する気はないですが、お店ものは自分で経営した方が感情移入が違ってくるので、私はやっぱり経営SLGの方が楽しみやすいです。
本作の主人公パルフェは、自分で材料を調達し、調合し、販売を行います。
本作は、言わばパルフェの日常をシミュレートした作品であり、純粋な経営SLGとしてはゲーム性に甘さもあるかもしれませんが、この適度なゲーム性が加わることで、キャラたちへの感情移入が格段に増していくのです。
もちろん、純粋にゲームパートが好きだって人もいると思いますが、個人的には物語を盛り上げキャラへの感情移入を促進させる最高の手段という、そんな捉え方だったりもします。
ストーリーについては、基本が経営SLGということもあり、ADVのようなボリュームのあるシナリオではありません。
もっとも、上記のようなゲーム部分を通じての感情移入も加わってきますし、当時としては貴重な百合展開も若干ありますので、雰囲気はとても好きな作品でした。
<グラフィック>
雰囲気という観点ではグラフィックも大事になりますが、原画は岸上大策さんでした。
可愛い絵だなとは思っていましたが、最初は分かりませんでしたよ。
何せ前年のFOGの『久遠の絆』の印象が強すぎましたから。
その前の『みちのく秘湯恋物語』だと、もっと頭身が高くなりますしね。
後の『リムランナーズ』といい、様々な方向の絵を描きつつ、どれもきちんと様になっているわけでして。
私は専門的なことは分からないのですが、デッサンの基礎の部分がしっかりしているからこそ、いろいろ変化させても崩れないのでしょうね。
本作単独でも十分に満足できるのですが、いろんな作品をやることにより、岸上大策さんの上手さというのが更に分かってくるように思います。
なお、私は知らなかったのですが、本作は2012年にPSP用にリメイクされたようでして。
リメイク版の絵も今風に仕上がっていますので、これはこれで新規の人には良いのかもしれません。
しかし、個人的には原画は代えないで欲しかったなと。
いろいろ事情もあるでしょうが、ちょっと残念に思ってしまいます。
<評価>
総じて、主観的にはかなり好きな作品でしたね。
ただ、好きではあるのですが、ここという絶対的な要素に弱く、他方で99年にはどこか尖った作品が多かったもので、相対的に良作に落ち着いたってところでしょうか。
主観だけなら名作ですし、当時はまだ百合にあまり目覚めていなかったので、今やったら更に評価が上がるかもしれませんね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2025-01-15 by katan