『リリス -LILITH-』は1995年にPC98用として、フォア・ナインから発売されました。
GAOGAOシリーズの三峰奈緒さんがシナリオを担当し、漫画家の柴田昌弘さんが原画を担当した伝奇作品になります。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
神話に出てくるリリスを封印するというストーリーの作品であり、元々の神話をベースとしつつも、そこに三峰さんらしい解釈を加えた作品になります。
<感想>
フォアナインの多くの作品には、いくつか特徴があります。
すなわち、ケモノ娘がヒロインであり、ストーリーとサウンドが良い作品が多いというものです。
ただ、ストーリーもサウンドも、どちらも、実際にプレイしないと良さが分かりにくいですし、ゲームシステムも平凡なコマンド選択式ADVが多く、特にこれといった特徴がなかったことから、一般的には、どうしても注目されにくかったと思います。
ヒロインもケモノ娘なので、ケモナーであれば大喜びなのでしょうが、当時では、かなりマニアックでニッチな属性ではあったと思いますしね。
GAOGAOシリーズは結果的に97年の『カナン』が完結編となりましたが、当初は『ワイルドフォース』(1994)で最後とされていました。
ストーリー重視作品が好きで、かつケモナーなユーザーは、おそらくフォアナインのADVの新作を期待していたことでしょう。
ただ、『ワイルドフォース』の再来を期待していた人とかだと、本作は少し物足りなく感じたのではないでしょうか。
まぁ、3作かけて面白さを成熟させていったシリーズと、単独の本作とを比較するのは、少し酷な話かもしれませんけどね。
三峰奈緒さんがシナリオを担当した作品は、実は95年にもう一本あります。
それが『夢幻夜想曲』ですね。
『夢幻夜想曲』は発売当時から名作として高い評価を受けておりましたが、それに比べて、本作はマイナーな印象が拭えません。
これは、両作品の単純な面白さの違いだけでなく、そもそも入口段階の注目度からして違っていたように思います。
『夢幻夜想曲』は、当時のアダルトゲームで流行していた「館もの」であり、「館もの」というだけで注目されやすかったです。
私自身、特にケモナーでもなかったこともあり、当時はGAOGAOシリーズを知りませんでした。
そのため、この時はまだ三峰さんの名前を知らなかったのですが、面白い館ものを探して、それで『夢幻夜想曲』に出会ったわけでして。
たぶん、そういう人は少なからずいたでしょう。
それに対して、本作は、伝奇になります。
伝奇は、80年代まではわりと見かけたジャンルですし、90年代後半以降はラノベで増えていくジャンルのですが、90年代前半は、ジャンル的には一番目立たなかった時期ではないでしょうか。
だからどうしても、注目度は低くならざるをえなかったのだと思います。
ストーリーそのものについては、『ワイルドフォース』や『夢幻夜想曲』と比べると、やっぱり少し物足りなさは感じてしまうのですが、それでも、ライター独自の観点を上手く取り込み、十分面白かったと思います。
この当時、ここまで作家性を盛り込んでくる作品も珍しかったですしね。
私が何か書こうとすると、どうしても同じ年の『夢幻夜想曲』と比較しちゃいますが、『夢幻夜想曲』の場合、個人的にはキャラも可愛くて好きでした。
他方、本作は、漫画家の柴田昌弘さんが原画を担当しています。
ベテランの漫画家が原画を担当していたわけですし、その部分に注目した人もいたのかもしれません。
ただ、柴田昌弘さんは少女漫画等で活躍されていた方ですよね。
まぁ、少年漫画や青年漫画でも作品を出しているのですが、少なくとも、萌えが意識され始めた95年において、アダルトゲームユーザーに受ける絵柄ではなかったように思います。
本作の絵の上手い下手の問題ではなくて、あくまでも当時の流行りとの関係で、流行路線ではなかったということですね。
<評価>
考えれば考えるほど、当時の流行路線とは異なった作品であり、埋もれるべくして埋もれた作品だったように思います。
また、『ワイルドフォース』や『夢幻夜想曲』といった三峰さんの他の代表作と比べても、どうしても少し見劣りするのも事実なのでしょう。
とはいえ、当時珍しくなっていた伝奇というジャンルにおいて、ライターらしさとブランドらしさを発揮させた本作は、十分良作といえると思います。
PC98時代のストーリー重視作品が好きな人には、三峰作品はおすすめしているところであり、優先度としては、GAOGAOシリーズや『夢幻夜想曲』が先なのでしょうが、それらが楽しめた人には、ぜひとも本作をプレイしてもらいたいものですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-11-02 by katan