『レガシーオブタイム (LEGACY OF TIME)ム ~ジャーニーマン プロジェクト3~』は、1998年にWIN用として発売されました。
ジャーニーマンプロジェクトシリーズの3作目であり、最後の作品でもありました。
<概要>
ゲームジャンルはMYST系ADVになります。
そこに、疑似的なザッピングシステムを導入した作品でした。
内容的にはSFものになります。
後述するように山寺宏一さんの吹き替えが秀逸な作品でもありました。
<総論>
私がこのブログを始めたかったのは、有名な作品に対する自分の見解を読んで欲しいのではなく、こういうゲームの存在を知って欲しかったからなのです。
ある意味、キッカケとなったゲームの1つなんですよね。
さて、いわゆるCGについては、今ではすっかりハリウッドの映画に持っていかれた感がありますよね。
しかしWin95時代には、PCゲームの世界に多様な才能が集結していました。
映画業界から参入した人もいましたし、音楽業界から参入した人もいましたしね。
今なんて出て行くばかりですから、寂しいかぎりです。
いずれにしろPCゲーにおけるCGの技術は飛躍的に進歩し、1996年には水平360度パノラマ映像、1997年には全方向パノラマ映像に成功しました。
ただ、1997年の段階で全方向パノラマ映像に成功したものの、えてしてグラフィックにだけ力が入り、中身が伴ってませんでした。
一概に悪いとは言いませんが、う~んって頭を捻るのも多くって・・・
そういうのって、自分は良くても人には薦めにくいですよね。
いくらこの技術凄いよねって言っても、でも中身がクソじゃんって言われたらお終いですしw
そういうわけで、全方向パノラマ映像でありながらも、ゲームとしての出来が良いものを探していたんですよね。
これは逆からも言えるわけで、中身の優れたMYST系ADVがあったとしても、97年の段階では全方向パノラマCGの作品はなかったのです。
つまり97年までの段階では、何かが突き抜けた作品はあっても、全ての面で優れた作品はなかったということになります。
そんな状況の中で、98年に発売されたのが『レガシーオブタイム』でした。
本作は、CGを使ったインタラクティブムービー系ADVの先駆的立場にある、ジャーニーマンプロジェクトシリーズの3作目にあたる作品です。
ちなみに、シリーズ3作目ではあるものの、前作を知らなくてもプレイには支障ありません。
『MYST』と同じくストーリーそのものはあってないようなもので、ストーリーではなく世界観を肌で感じ堪能するゲームですから。
余談ですが、本作を作った会社が、後に『MYST3』を作ったんですよね。
だから『MYST3』は、ある意味ジャーニーマンプロジェクト4ともいえるわけです。
縁とは実に不思議なものですね。
<感想>
その『レガシーオブタイム』は、360度全方向パノラマ視点で描かれたCGを堪能することができました。
『MYST』シリーズが全方向パノラマ視点を導入したのは、2001年の『MYST3』からでした。
したがって本作は、それより3年も早いことになります。
それでいて、中身も非常によく出来ていました。
MYST系の場合はグラフィックの良し悪しと、世界観の良し悪しが密接に関連します。
その肝心の世界観なのですが、このシリーズはタイムトラベルのSF・ADVになります。
つまりどの作品も、時を越えて様々な時代に行くことになるわけですね。
3作目である『レガシーオブタイム』では、エルドラド、シャングリラ、アトランティス等、有名な伝説上の理想郷を巡ることになります。
これらの各世界が、美麗なCGで全方向見渡せるだけでなく、移動もできるんですからね。
これは、すっごく満足でしたよ。
個々の世界が良く描かれていただけでなく、それぞれの世界は全然違った雰囲気を有していたことから、次はどんな世界が待っているのだろうという気にもさせてくれました。
ストーリー上のラストのオチはB級SFっぽくて、ちょっと唐突な感も否めないのですが、各世界を堪能するナラティブな視点からは良くできていたと思います。
<サウンド>
しかも各世界にまつわる逸話に関して、ナビロボットのアーサーが細かく薀蓄を言ってくれるのです。
だからとても賢くなった気分にもなれましたw
このナビロボットのアーサー。
吹き替えは山寺宏一さんがやっています。
この人は本当に上手いですよね。
ゲームの吹き替えってのは、それまでの声優の仕事と勝手が違う面もあり、普段のアニメとかでは上手いのにゲームでは違和感があったりで、当時はイマイチはじけてない人も多かったのですよ。
でも、この人だけは本当に別格でした。
これもしかしたら全部アドリブか?って思うくらい、好き放題にテンポよくノリまくりで喋ってくれています。
『レガシーオブタイム』は、ある意味この声を聴く為に存在すると言っても決して過言ではないでしょう。
私は音声にはあまりこだわらないタイプですが、長年ゲームをプレイしてきて、ゲーム音声で本作ほど衝撃を受けた作品は、他には存在しませんからね。
本作に関しては、オリジナルより日本語版の方が良いと思います。
なお、この『レガシーオブタイム』には難易度設定というか、ヒントをアーサーに言ってもらうか否かの選択が出来ます。
コアなADVファンはヒントなんか要らないと、ヒントモードを切りがちだと思います。
私も最初はOFF設定で始めてしまいましたし。
しかし、本作でヒントモードを切ってしまうと、山寺さんのセリフが極端に減ります。
それまで賑やかだったゲームが途端にシ~ンとなり、まるで別のゲームのように静かになります。
この作品の見所は、山寺さんが途切れることなく、絶えず話しかけてくることにありますので、ヒントモードOFFではつまらなくなる可能性が高まります。
もちろんOFFでも楽しめますが、確実に本当の面白さの何割かは損しています。
だからプレイするときは、できる限りONにしましょう。
<ゲームデザイン>
ゲームは基本的には、MYST系のADVになります。
基本的な謎解き全般の質や難易度は、特に他のMYST系ADVと変わらないかもしれません。
もっとも、本作には1点だけ特徴があり、単なるMYSTクローンではない、本作ならではの独自性もありました。
具体的には、本作の主人公は、相手の姿をコピーすることができ、その姿を攻略に活用することができるのです。
例えばAさんからアイテムを得る必要があったとして、主人公が話しかけてもダメで、Bさんが話しかけると貰えるとします。
そこで主人公はBさんの姿をコピーして、Bさんの姿となって話しかけることで進展するのです。
これは、元の人格は一緒なのでマルチサイトではないものの、表面上のキャラを擬似的に代えていくので、システムはザッピングといえるかと思います。
国産の90年代以降のADVでは、マルチサイトとザッピングが併用されるケースばかりでして。
本作のようなマルチサイトを伴わない純粋なザッピングシステムの利用は、逆にかえって珍しいのかもしれません。
<評価>
MYST系ADVは、中身の点では97年の『RIVEN』で頂点に達し、見た目でも『アトランティス』により全方向パノラマ視点が完成。
以後、目立った進化がなくなりました。
これに加え映画の進歩、家庭用ゲーム機の発展と、様々な事情が重なり、国内に海外のADVが盛んに移植されたのは98年が最後となってしまいました。
99年以降は、有名作の続編以外は極端に減りましたからね。
そういう訳でこのゲームが発売された98年というのは、いわゆるMYST系を含めたPCのADVには、ある意味最後の年と言えるでしょう。
その98年に発売された『レガシーオブタイム』は、結果的には国内に移植された傑作ADVの最後の砦として、大きな意味があるのではと今になって思うのであります。
そのため、総合でも文句なしに名作といえるでしょう。
もう発売されてから10年以上が経ちますが、日本語でプレイできるMYST系ADVの最後の傑作だと自分は思います。
MYSTファン、山寺ファンならきっと今でも楽しめるのではないでしょうか。
絶対に手放せない作品の一つであり、評価以上に主観的にはかなり好きな作品でしたね。
ランク:AA-(傑作)
Last Updated on 2024-12-27 by katan
コメント
SECRET: 0
PASS: 08e8c551aca4da1d8f68e704ba4ad00d
いつも関心しながら読ませて頂いています!
この「レガシーオブタイム」って全く知らなくて
マックでもあったMYSTシリーズなんですね。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
>>あやちだいちさん
ありがとうございます。
インタラクティブムービー系はMACが強かったですからね。
これも確かハイブリッド仕様だったかと思います。