『くすり指の教科書』は1996年にPC98用として、アクティブから発売されました。
アクティブのゲームとしては、一般的には、これが最も話題になったのではないでしょうか。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
本作がどんなゲームなのかと聞かれると、端的に言えば純粋な萌えゲーとなるのでしょう。
本作が発売されたのは96年で、この頃は恋愛ゲームも増えてきていました。
萌えという言葉がゲームのキャラに対して用いられることも、少なくとも95年には頻繁に見かけるようになりました(その代表例が『同級生2』の鳴沢唯ですよね)。
でも、ここまで潔く萌えに特化した恋愛ADVというのも、考えてみればまだあまりなかったのではないでしょうか。
<感想>
さて、本作に対して私は当初、普通の純愛系のゲームって認識しかありませんでした。
だから本作がどうしてそんなに支持されたのか、あまり良く分からなかったんですよね。
しかし、今主流を占めている萌え特化のノベルゲーの先駆けであり、新しいニーズにいち早く対応した作品だったのだと捉えると、なるほどヒットしたのも頷けるような気がしてきます。
私自身は、凝ったストーリーやゲームデザインの方が好みです。
しかし逆に、『同級生』系にあるような難しいシステムは要らない、変に鬱になったり賛否分かれるような際どいニッチな要素も要らない、もっと純粋に萌えを堪能したい・・・というような要望は96年頃には生まれ始めていて、かかる視点に立った場合、ヒロインの属性の配置の仕方などを見ても、本作はこの当時では極めて優秀な作品だったのでしょう。
たとえ単発で優れた作品があっても、似たような作品が続かなければブームにはなりません。
だからこういう作品がなかったら、アダルトゲームの主流も違った展開になっていたのかもしれませんね。
もちろん、萌えに特価した作品は他にもあったでしょう。
それ故、数ある萌えゲーの中の1つであるならば、すぐに埋もれてしまいます。
しかし話題になる作品には何かしら他にもプラスアルファがある場合が多く、本作とて例外ではありませんでした。
たとえば、主人公には親友がいるのですが、ルートによっては主人公に告白してきます。
告白を拒否されると、ついには性転換までしてきます。
またこれが一番可愛かったりしますしね。
今風に言えば、このキャラは、男の娘とかヤンデレの先駆けみたいなものなのでしょうね。
あらためて振り返ってみると、いろいろ含まれているものです。
そういうわけで今にして実は中々大きな意義があったのではと思うのですが、個人的には良くも悪くもごく普通に楽しいってゲームだったんですよね。
強烈に惹かれる要素もないのだけれど、キャラは可愛いしテンポも良いし、あまり嫌われる要素のないゲームだったと思います。
またこの頃のゲームはCGが枠で囲まれていることも多いところ、その枠が結構センス良く感じられて好きでしたね。
枠自体はCGの領域が狭くなってしまうので、今更復活して欲しいとは思いません。
しかし、テキスト欄の表示方法などは、今でも見習う部分があるのではないでしょうか。
汎用タイプのテキスト表示スペースは、とても味気ないですからね。
ただ、ボリュームは当時でさえも少なく感じてしまいましたね。
最近のゲームのように無駄に冗長なのも困ったものですが、もう少しボリュームは欲しかったように思います。
<評価>
総合では良作ってところでしょうか。
キャラの可愛さとボリューム不足が相殺しあう感じで、それ以外は特に強烈な要素はなかったですから。
十分楽しんだので良作ではあるのだけれど、名作と呼べるほどのパンチもなかったように思いますし。
(萌えを生んだというならともかく、特化したというだけでは、長所としては弱いでしょう)
95年に発売された『同級生2』は、確かにストーリーを強化した作品でした。
しかしそれ以前にもストーリーの良い作品は一杯あったわけで、じゃあ何が決定的に他と違っていたのか、『同級生2』によってユーザーの間で何が変化したのかと考えると、一番の変化はキャラに萌えるという感情が生まれたことなのだと思います。
ここで生まれた萌えは、今日のエロゲー市場では最大派閥を形成しています。
その萌え路線へのシフトは決して一本の作品の登場で決まるわけではありません。
『同級生2』に続く良質な萌えゲーの存在があったからこそ、今日にいたったのです。
そして、その中の1つであり、かつ代表的な作品が本作なのでしょう。
萌え王道系というのは基本的に最新のゲームをやった方が楽しいでしょうし、今やっても面白いとは思えないかもしれません。
でも当時ヒットしたことと、こういう作品の積み重ねが今日につながったという意味では、その価値は決して失われないのではないでしょうか。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-11-14 by katan
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