ELYSION　永遠のサンクチュアリ

『ELYSION ～永遠のサンクチュアリ～』は2000年にWIN用として、テリオスから発売されました。

美麗なCGと、豊富な薀蓄、そして何よりメイドへの愛とこだわりの感じられた作品でした。

＜概要＞

ゲームはRPGのように画面内でキャラを動かしていく移動式のＡＤＶになります。
つまり『プライベートアイドル』とか、『下級生』みたいな感じですね。

あらすじ・・・
ヴェネツィアにほど近いアドリア海の孤島。
島に建つ壮麗な洋館では、世界各地から非合法な手段によって集められたメイド達に囲まれ、一人の老人（テオ・パドリーノ）が悠然たる日々を過ごしていた。
葛城遼一（主人公）は、老人の主治医としてそんな孤島の屋敷に招かれた。
内科医としてメイドたちへの命令権を与えられると同時に、彼女らの健康管理を一任される。
老人の真意が読めぬまま、葛城はメイドたちとの19世紀さながらに様式化された奇妙な生活へ入ってゆく……。

内容的には館ものであり、それ以上に徹底的にメイドにこだわったメイドものと言えるのでしょう。

＜感想＞

このゲーム、上記のように真の意味でのメイドゲーでした。
従来の作品のような単なる萌え要素としてメイドであるとか、虐げられ陵辱されるだけの対象としてではなく、歴史的にメイドとは何なのか、そういったあたりから解説してくれました。
アダルトゲームでは、メイドは人気属性の１つではあるものの、現実のメイドという実態からかけ離れ、アダルトゲーム的な都合の良い存在に改変され普及しました。
本作はユーザーに広く浸透してしまった誤解を正し、本当のメイドとは何かを説いた作品だったのです。

また、本作には非常に薀蓄が多く、その範囲はメイドに関する薀蓄以外にも、例えば宗教だの西洋社会に関することなど広範に及びました。
この薀蓄の多さは本作の特徴の一つであり、インテリ風と言われる類のゲームが好きな人ならば、本作を気に入る確率も大きくなるでしょう。

さらに、グラフィックも凄く描き込まれていましたね。
原画は横田守さんなので、さすがといったところでしょうか。
ここまで描くのは大変だったでしょうね。
背景も含めた美麗さという観点からは、この年の中では最高峰でしょう。
ただ、背景や塗りには全く不満はないものの、個人的には、横田守さんの描くキャラについては95年頃の作品の方が好きだったわけで、ちょっとキャラに関しては最盛期からずれてしまったかなという印象を受けました。

以上から、完成度や減点法という観点で考えるならば、本作は、かなり高水準にあるのではないかとも思います。
この作品をエロゲの最高傑作という人も見かけましたし、何を評価するかによっては、その見解も十分理解できるものだと思います。

ただ、個人的な印象としましては、何かいまいちのめり込めなかったわけでして。
薀蓄は凄いのだけれど、ストーリー本筋に魅力を感じなかったり、描き込まれた絵は凄いけど、どうにもキャラに魅力を感じなかったり。

キャラの掛け合いで楽しめるわけでもなく、ストーリーの本筋が優れているわけでもなく、雑学のような枝葉は優れているのに肝心の部分が若干疎かな感じで、どの項目も水準以上ではあるけれど、いまいち私の中に響いてくるものがなかったのです。
まぁ、2000年はノベルゲーの名作・良作が一杯ありましたからね。
また、同年はノベルゲーが一気に増えた年で、私も気持ちがノベルゲーに傾いていたこともあり、それで相対的に印象が薄くなったのもあるかもしれません。

＜評価＞

そういうわけで、欠点らしき欠点もないのだけれど、いまいち突き抜けたところもないということで、名作に限りなく近い良作とします。

とはいえ、薀蓄の凄さは確かですし、アダルトゲーマーの偏見を払拭する作品でもあります。
今でも他に被る作品もないでしょうし、プレイすれば何かしらの刺激や得るものはあるはずです。
一般的には2000年を代表する作品の１つでもありますし、上記のとおりユーザーの中には名作として高く評価する人も多い作品です。
そのため、アダルトゲーム好きの多くにプレイしてもらいたいですし、特にメイド好きには、ぜひともプレイしてもらいたい作品ですね。

ランク：Ｂ（良作）

Last Updated on 2024-06-05 by katan