『久遠の絆 THE ORIGIN』は2011年にWIN用として、XUSEから発売されました。
久遠の絆の、PC向けのリメイク版という名の別物でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
一つの‘‘想い’’をきっかけに、神代、平安、元禄、昭和、そして現代。
転生を繰り返す主人公とヒロイン。
幾千年の時を越えて交錯する愛・誤解・そして遺恨。
複雑に織り込まれた様々な想いを綴る、壮大な輪廻転生ストーリー。
<感想>
ご存知の方も多いとは思いますが、98年にPS用として『久遠の絆』が発売されまして、個人的には最も高く評価したノベルゲーでもありました。
その『久遠の絆』がPCゲーの、しかもアダルトゲームとなってリメイクされたわけですが、そこに至る過程でいろいろとありまして、
かなりの変更を余儀なくされた作品でもありました。
私は普段リメイク作品の評価は全く書かないのですが、位置付けは何であれ本作はオリジナルと別物と判断したことから、今回は感想を書くことにしました。
さて、本作は一応はリメイク作品として位置付けられるのでしょうが、オリジナルとは、ほとんど異なっています。
まず、オリジナルが伝奇をベースとしつつも、究極的には千年にも及ぶ恋愛物語であったわけです。
一方の本作はむしろ伝奇としての神々の扱いが中心となり、テーマからして異なっているのです。
その影響からか、万葉EDがなくなりハーレムEDになっていますし、終わった後の余韻がオリジナルと全く違うんですよね。
その他にも、大まかな設定が似ているようなところでも、展開が違っていたりしており、ストーリーは別物と考えた方が良いでしょう。
また、一部のキャラは名前も異なってきますし、それ以上に同じ見た目でも性格が異なっていたのが、個人的には非常に大きかったです。
特にこの作品は、長い年月と万葉の神秘さが絶妙に絡みあい、それによって他にはない雰囲気を醸しだしていたのですが、単なるツンデレっぽくなったりしていて、オリジナルの良さが微塵も感じられませんでした。
ストーリーもキャラもEDも異なってしまっては、もはや別物というしかないでしょう。
他にもオリジナル版は主人公の名前が変えられ、それがOPで表示されたりして、そういった部分からしてゲームに入り込めたのですが、そうしたこだわり要素もなくなりましたしね。
戦闘とかいらない要素は残っているのに、オリジナルの良かった部分ばかり削られてしまった感じでした。
オリジナルのPC版を望んでいた者としては完全にハズレなわけで、リメイクとしては珍しいくらい完全に失格なのだと思います。
本作の制作にあたってはアダルト化の是非をめぐり、制作陣の一部の反発にあって、版権の関係でゲームの一部はそのままでは使えなくなりました。
様々な犠牲を伴いながら導入した「アダルト要素」も、シーンは9つで少なく、内容的にもとても中途半端なものでした。
私は陵辱シーンの有無とかには特にこだわらないですし、元々久遠は結構際どい描写の多い作品だっただけに、ゲーム機ということでぼかされた部分をガッツリ書きこんでくれるならば、むしろアダルト化には大賛成ですらあります。
しかし、本作では妄想という形で入れられたりしているわけで、これでは誰が得をするのだろうという印象しかもてません。
ここまでアダルト化のメリットがないのであれば、アダルト要素を廃して素直に完全移植を目指した方が、より多くの人の希望に沿えたと思うんですけどね。
リメイク作品としては、本当に残念でした。
もっとも、ほとんど違うということで、本作を全く別物として楽しむことはできるでしょう。
神々や人の在り方に中心を据えたストーリーは、これはこれで読み応えがありました。
もし完全オリジナル作品であれば少しは楽しめたでしょう。
しかし本作は、いくら別物と考えるとはいっても、リメイクの体裁を採ったことまでは消えません。
オリジナルで使えなくなったルートの書き換え部分は、短い上に取ってつけたような中途半端さで、ストーリー全体のクオリティを下げてしまっています。
まぁ、そこはまだ妥協するとしても、いろいろ変更したことで前提が変化するならば、当然その結果も異なるはずですよね。
しかし、現代編とかをそのまま流用したりするものだから、変更した前の部分と上手く噛み合わず、結論としてストーリーの整合性という面で違和感が生ずるのです。
完全オリジナルであれば長所となりえた部分も、こういう違和感等があっては素直に褒められません。
また、グラフィックも原画が変わったのですが、オリジナルの絵と新しい絵が中途半端に交じり合っています。
リメイク的視点からは新規でショボイ絵が加わったとなりますし、別物として捉えた場合には統一感のない絵となってしまいます。
いずれにしろ褒められたものではありません。
結局、良かったのはサウンドくらいですかね。
上でもちょっと触れましたが、あの久遠の絆の加藤さんがおくる、完全新作伝奇ノベルゲームとして全部一から作っていれば良かったんですよね。
最初から新作にしていれば流用に伴うストーリーの違和感はなくなりますし、絵の使いまわしもなくなるから統一感のなさも生じません。
何故にこんな中途半端なリメイクもどきになってしまったのか。
知名度を利用した売上アップのために久遠が用いられた感じがして、ちょっと残念でしたね。
<評価>
総合的には、もし仮に完全な別物の新規作品としてみれば、多少の違和感はストーリーの良さと相殺しますので、佳作~良作レベルの内容はあると思います。
もっとも、本作はあくまでもリメイクとして、『久遠の絆』の名を入れているわけです。
その観点からは、知名度を利用した小金稼ぎ目的の改悪作品にほかならず、ファンであればあるほどプレイする価値はないのでしょう。
したがって、リメイク作品の評価としては、駄作とします。
ランク:E(駄作)
Last Updated on 2024-12-13 by katan
コメント
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どうしてこうなったのか、残念なリメイクになってしまいましたね。
原作が好きなので複雑な気分でプレイしました。
個人的には最初の平安編は楽しめたんですけどね…本当にそこだけでしたが。
今後完全新作が出ることに期待したいです。
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こんばんは、コメントありがとうございます。
>どうしてこうなったのか
本当にこの一言に尽きるって感じですね。
初プレイの人はまだしも、原作が好きであればあるほど、あまり楽しめないような作りでしたから。
>個人的には最初の平安編は楽しめたんですけどね
ここも同感です。
何も全否定するつもりもないわけで、良い部分もあったんですよね。
新規で入れた部分を再構成して全くの別の新作として出していたら、面白い作品にもなっていたように思うわけで、次は正真正銘の加藤新作の登場を望みたいものですね。