One Night Heaven ~赤と黒の人々に捧ぐオマージュ~

2001

『One Night Heaven ~赤と黒の人々に捧ぐオマージュ~』は、2002年にWIN用として、黒蝶から発売されました。

『ODEON』(2001年)の後継的作品といわれている電波ゲーですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
人間の脳が創り出した虚構の世界、赤と黒…、そして夜の街東京新宿。
舞台は新宿と真崎学園をベースに話しが展開する。
真崎学園の望月若菜は月間南に恋をしていた。
そんな愛を南は受けとめず、その心をもて遊んでいた。
やがて望月若菜の幻影が学園に出現する。
自殺したという噂が学校に広まってからの事だ。
望月若菜のイメージに入りこむ。
それは時間と空間を超越した未知の世界であった。
その頃、”ミスズ”という存在を作り上げるリュウセイ。
リュウセイはネットの世界を媒介して、ミスズを人々の心に寄生させようとしていた。
その頃、永瀬は望月若菜とミスズの関係を調査していた…。

<感想>

近年のノベルゲーは、しっかりすぎるほどに説明していないと、なかなか評価されにくい傾向にあります。
しかし、90年代後半には、考察要素のある作品が評価されがちでした。
考察要素があるといえば聞こえは良いですが、言い換えると、きちんと説明されていないだけともいえます。
そのような作品が高く評価されるわけですから、中には、エピソードや素材だけユーザーに示して、後はユーザーの方で解釈してくれ的な作品も増えてしまいました。
つまり、焼肉屋みたいなエロゲが増えたということですね。

電波ゲーというのも、細かくみるといろいろあると思いますが、その中には、きちんと理解すれば凄そうなのだけれど、上記のような説明が不足しすぎていて理解しにくい作品なんてのもあり、その典型例が『ODEON』なのでしょう。
『ODEON』は美麗なグラフィックに、壮大そうな世界観が提示され、理解すれば凄く面白そうなのですが、如何せん説明が不足しすぎていて、雰囲気は抜群だけど、意味の分からない作品でしたからね。

本作は、そんな『ODEON』を出した会社の系列会社の作品らしく、またその作風から、『ODEON』のライターの作品だろと言われた作品でした。
その正確な真偽については、私には分からないのですが、雰囲気が似ている作品であることは間違いないので、少なくとも似たタイプの作品と考えても良いのではないでしょうか。

さて、そんな本作。
『ODEON』以上に人を選ぶ作品になっています。
まず、ゲームデザインはノベルゲームになっているのですが、ビジュアルノベルの派生版みたいな構造になっています。
具体的には、掲載した画像のように、画面の一部分に、ある程度まとまった分量が表示されています。
立ち絵とかなく、このテキストだけで進行する場面も多いです。
これがまぁ、何か読みにくくて、プレイする意欲を削ぎ落とします。

ちなみに、先ほど、ビジュアルノベルの派生版と書きましたが、それだと、ちょっと誤解を招きかねないでしょうか。
というのも、本作のような構造の作品は、『宇宙駆けるビジネスマン』(1990)のように、90年頃には既にありますので、実はビジュアルノベルよりも、こういう形式の方が前から存在していることになります。
だから厳密に言うならば、本作のような構造の作品からサウンドノベルや、ビジュアルノベルへと派生したという方が正しいのかもしれません。

本作は、上記のとおり基本的にはノベルゲームなのですが、ところどころで場所移動要素があります。
これがまた地味に面倒で、更にプレイ意欲を削ぎ落とします。

『ODEON』は、難解なことは難解なのですが、CGだけは抜群に良かったことから、次のCGを見たいと思い、それがプレイ意欲にもつながりました。
しかし、本作は、CGも普通かそれ以下なので、『ODEON』の最大の魅力が失われてしまい、『ODEON』の様にCGを見たいがために読み進めるということもありません。

結果として本作は、『ODEON』からCGという最大の魅力をなくし、ただただ意味が分からない雰囲気という要素だけが残った作品となりました。
そのため、より一層、人を選ぶ作品となってしまうのです。

<評価>

独特の雰囲気は持っているものの、それ以上にマイナス要素が多すぎたことから、総合では凡作とします。

いきなり本作に手を出すのはやめた方が良く、まずは『ODEON』をプレイした方が良いのでしょう。
そのうえで、CGとかではなく、あの世界観・雰囲気が好きで、似た様な作品をどうしてもプレイしたいというのであれば、本作を検討してみる価値があるのではないでしょうか。

ランク:D-(凡作)

Last Updated on 2025-03-01 by katan

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