殺しのドレス

1987

『殺しのドレス』は1987年にPC88用として、フェアリーテールから発売されました。

美少女を愛でるのではなく、アダルトな雰囲気を有した大人向けのアダルトゲームは、この作品から始まったといえるのでしょう。

<前置き>

本作は、OPからして、インパクトのある作品でしたね。
定義論は人それぞれなので不毛と言えば不毛な話ではありますが、例えば可愛い美少女が登場した元祖という点で、よく『天使たちの午後』の名前が挙がります。
これは如何にも「美少女」ゲームでしたからね。

もっとも、それを言うのであれば、Hシーンの有無ではなく、そのストーリー性及び雰囲気からアダルト性を演出した本作は、まさに「アダルト」ゲームという言い方こそが相応しいのでしょう。

<感想>

大まかなあらすじとしては、主人公の友人の彼女が殺されてしまい、主人公が事件の真相を探ることになります。
もっとも、犯人の魔の手は主人公にも忍び寄り、やがて主人公自身の彼女も誘拐され・・・って感じです。

リプレイを紹介しているサイトもありますし、古い作品のわりには結構知る機会に恵まれた作品でもあるのでしょう。
それだけ人気のあった作品なのでしょうね。
そのため、細かい部分は省略してしまいますが、キャラや背景といったグラフィックの独特の雰囲気と相まって、終始大人向けな雰囲気がぷんぷんと漂っていましたね。
本作は結構残酷な描写もありますし、PC98時代に増えた陰惨なミステリーものの原点ないし先駆けと捉えることも可能だと思います。

そのように限定して解釈するだけでなく、もう少し枠を広げて、そもそもアダルトゲーム専門ブランドの作品の中で、ストーリーがしっかりした物が出てきたのも、本作あたりが最初と言っても決して過言ではないでしょう。
だから「本当のアダルトゲーム」が出てきた時期と区切るならば、ここからという区分もありえると思うのですよ。
一般ゲームのオマケとして、ちょこっとエロシーンを足すのではなく、最初からアダルトなゲームとしての方向性を目指しつつ、一般ゲー並の高いストーリー性も備えたという点は、やっぱりそれまでの作品と異なると思いますから。
まぁ、高いストーリー性と言うと個人の評価が絡んでしまうのですが、少なくともエロCGを見せるのではなく、ストーリーを楽しませることを意図したことは事実です。
したがって、アダルトゲーム専門ブランドの作品において、80年代前半のエロCGを見るだけのゲームから脱却したと言う意味では、非常に意義のあったゲームだと思います。
一部ではライターは蛭田さんだとも言われていますが、真偽はどうあれ非常に楽しめたものです。

<ゲームデザイン>

ゲームジャンルとしてはコマンド選択式のADVになります。
特に目立った要素はありませんが、登場人物の名前を変えることはできました。

名前を自分の身近な人物に変更すると、より一層ゲームに感情移入しやすいのですが、下手すると、かえって鬱になりかねないという諸刃の剣でもありました。
音声が当り前の近年のゲームでは、あまり主人公以外の名前を変更できないですから、このような感覚は忘れられつつあるものかもしれませんね。
あと何年か経ったら登場人物の名前を全部変えても、音声で呼んでくれる時代が来るかもしれません。
そうなった時には、またこうした遊び要素を復活させてもらいたいものですね。

さて、ここまでだと良いとこばかりのゲームにも思えますが、決して欠点がないわけではありません。
というのも、本作は、ゲームの動作がちょっと重かったように思います。
そのためにストーリーゲーとしてのテンポの良さまで削がれてしまいましたね。
それさえなければ、もう少し評価も高まっていたでしょう。
まぁこの辺は環境にも左右されますので、人によっては気にならないかもしれませんけれど。

<評価>

総合では、名作とします。

おそらく、アダルトゲーム専門ブランドにおける初のストーリー重視作品と言えるのでしょう。
これもまたアダルトゲームの歴史を作ったという意味で、今もなお資料的価値の高いゲームと言えるのではないでしょうか。

ランク:A-(名作)


PC88版
PC-8801SRソフト 殺しのドレス
PC98版
PC-9801 5インチソフト殺しのドレス

Last Updated on 2024-05-06 by katan

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