火曜サスペンス劇場の中でも名作として名高い『可愛い悪魔』。
ADVファンとしての観点からは、『狂った果実』との関係からも注目の作品といえるのでしょう。
<概要>
大林宣彦×秋吉久美子×円谷プロダクションの見事な化学反応!
名匠、大林宣彦監督初のテレビムービーであり、長い歴史を誇る「火曜サスペンス劇場」の中でも屈指の傑作ホラーとして名高い『可愛い悪魔』!
大人の目から見た「子供の恐ろしさ」をテーマにしつつ、女性が秘める情念、欲望のおぞましさをグロテスクに描き出すことに成功している。
とてもテレビシリーズとは思えないショッキングでケレン味溢れる演出、ストーリーを支える異色にして多彩なキャスティング・・・後の大林宣彦映画にも繋がる重要な作品として、『火サス』ファンはもとより、大林映画ファン、また円谷プロ作品ファンからもDVD化を熱望されてきた珠玉の一作である。
「火曜サスペンス劇場」を語る上で欠かせないCM前後の名アイキャッチも放送当時のまま収録!
【ストーリー】
197×年夏-ある野外結婚披露パーティーで〝恐怖〟は始まる。
そのパーティーで主役であるはずの花嫁が突然の転落死を遂げる。
朱に染まる純白のウェディングドレス…。
そばにいた愛らしい少女・ありすがつぶやく。
「おばさん、死んだの? じゃあ、ベールは私のものね」。
数年後、死んだ花嫁の妹・涼子がありすの音楽教師としてやってくる。
その後、涼子と死んだ姉の元夫である浩二は恋仲となる一方、次々と周囲の人間が謎の死を迎える…。
不気味にほほ笑むありすの姿。血も凍る一連の事件を引き起こしている犯人は誰か?
〝恐怖〟はさらに加速し、未曾有のエンディングに突入する…!
<感想>
本作は、1982年8月10日に火曜サスペンスで放送されたドラマになります。
5月5日に、この作品の紹介をするというのも、少々適切ではないのかもしれません。
ただ、紹介はできるうちにしておこうということで、扱ってみました。
あらすじは上記のとおりでして。
8歳の女の子である「ありす」は、自分の欲しい物を手に入れるためには、人を死なせることも平気な子です。
そして、欲しい物を所有している人や邪魔な人に対し、「死んじゃえ」と言って次々に死なせてしまいます。
本作は、子供の無邪気な恐ろしさを扱ったホラーサスペンスとして、今もなお根強いファンのいる作品です。
古い作品のファンであれば、『悪い種子』(1954)という、アメリカの作品をご存知かもしれません。
本作は、いわば『悪い種子』をモチーフにしたような作品ですね。
ストーリーの大枠とかはとても似ていますので。
さて、普通のサイトであれば、『悪い種子』をふまえたうえでの本作の感想や評価について語っていくのでしょう。
しかし、ここは基本的にゲームサイトですので、その辺の考察や評価については、映画系の専門サイト様にお任せすることとします。
私が本作を今回扱ったのは、PC98最凶の鬱ゲーと評されることもある『狂った果実』があったからなのです。
『狂った果実』は1992年に発売されたPC98用のアダルトゲームになります。
『狂った果実』に対する古いサイトとかの感想や評価には、なるほどと納得できるものが多かったと思います。
しかし、そうしたサイトが閉鎖していき、時代が経つにつれ、目にすることが増えてきた感想や評価には、少々疑問を抱いてしまうわけでして。
というのも、最近ですと、『狂った果実』のストーリーや個々のエピソードが注目され、それで鬱ゲーとして高い評価が与えられているようにみえるのです。
しかし、私は、ストーリー等には高い評価を与えることはできないと考えています。
というのも、『狂った果実』のストーリーの大枠は『可愛い悪魔』ととても似ているのです。
『悪い種子』や『可愛い悪魔』といった流れがあり、そういうジャンルの1つとして、『狂った果実』があるということなのです。
もちろん、過去の作品をふまえて、そこにプラスアルファを加えられれば、評価されて然るべきなのでしょう。
ただ、『狂った果実』のストーリーそのものには、残念ながらそのプラスアルファはなかったように思います。
とはいえ、『狂った果実』の場合、他のところで異なった魅力があります。
だから私も、総合としては名作だと思っています。
その辺は個別の感想を読んでいただければと思いますが、ちょっとだけ書いておきます。
『可愛い悪魔』の場合、主人公は冒頭で恋人を死なせたと思い込み、精神的に病んでしまいます。
場合によってはトラウマになりかねない、作中で繰り広げられる異常な光景。
それらは僅か8歳の女の子によって行われているのですが、主人公が精神的に病んだという過去も相まって、独特のホラー的雰囲気を漂わせています。
『狂った果実』は、『可愛い悪魔』の主人公の病気という設定がなくなっていますので、オーソドックスなミステリーものとして進みます。
オーソドックスなミステリーではあるものの、遺体に対するテキストの描写等も素晴らしく、あれこれ想像が膨らんでいきます。
そして、最後にそれらが少女によるものだと判明し、つまりその要素が最後の切り札的に使われているんですね。
しかも、そこで絵日記が効果的に使われたことで、より強いインパクトを与えることに成功したのです。
つまり『狂った果実』という作品は、ストーリーそのものは同系統の作品と大差ないものの、秀逸なテキスト描写でプレイヤーに恐怖への想像を膨らませつつ、最後に大きなインパクトを与えることでプレイヤーの記憶に残る作品となったのです。
他方で、本作ですね。
『可愛い悪魔』の場合は、ありすによる犯行という点が中盤頃には出てきます。
本作の場合、ありすという少女の子供としての無邪気な恐ろしさ、また子供であると同時に女でもあり、その女としての恐ろしさがテーマとなっています。
その少女の凶行に加え、主人公が精神的に不安定という要素も加わり、それらを大林監督がうまくまとめあげたことで、ホラー染みた独特の雰囲気を作り上げることに成功した作品となります。
エンディングも何とも後味が悪く、見た人にいつまでも刺さり続ける作品といえるでしょう。
だからこそ、いまだに語り継がれるわけですね。
今回、DVDを見返してみたわけですが、若かりし頃の秋吉久美子さんが凄く可愛いですね。
そしてあらためて思ったのは、『可愛い悪魔』と『狂った果実』はストーリー自体はとても似ているけれど、味付けの仕方が全然異なるなということでして。
だから『狂った果実』のストーリーは高く評価できないにしても、その味付け部分であるアプローチの仕方を評価するという姿勢は間違っていないのかなと思いました。
残念ながら、『狂った果実』を今からプレイすることは困難となってしまいましたが、本作の方はDVD版を今でも購入することが可能です。
興味のある方は、一度見てみる価値はあると思いますね。

Last Updated on 2024-05-05 by katan
コメント
ブログの移転作業が本当に大変でしょうが、どうもお疲れ様です。
『悪い種子』『可愛い悪魔』『狂った果実』、どれもサイコパスな少女が出てくる印象的な作品ですね。
本作もTV映画ながら、大林監督らしいホラー表現が見られ面白かったです。
『可愛い悪魔』も『狂った果実』も、『悪い種子』がまだ時代故に直接的に描けなかった残酷な表現を描いて、記憶に残る作品になっていますね。
個人的には上記の作品と並んで、映画『エスター』が印象に残っていて、こちらもサスペンス度が高く面白いです。
種明かしがちょっと拍子抜けではありましたけどね。
>yukimuraさん
『エスター』って、そんな感じなのですね。
まだ見ていないので、いつか見てみたいと思います。
https://www.famitsu.com/article/202412/28938
『狂った果実』復刻盤が発売されるみたいです
現代で触れにくいエロゲがよみがえってくれるのはうれしいです
>亜鉛メッキさん
X68000用だと、結局ハードル高そうですね。
その後のWIN用までこぎつけてくれれば、プレイできる人が増えそうですね。