イーリス亭小夜曲

1992

『イーリス亭小夜曲』は1992年にPC98用として、アグミックスから発売されました。

世界設定のしっかりした作品であり、心地よく楽しむことのできた作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
特に詰まることもなく普通に進んでいきますが、マルチエンドになっているので結末も幾つか用意されています。

内容は水戸黄門っぽいといえばそれまでですが、あらすじは次のとおりになります。

ロンバルト王国とアイマール帝国の長きにわたる戦争により、多くの町や村が廃墟になっています。
もっとも、辺境にはまだ戦場になっていない町もあり、コーンウェルの城下町もその一つでした。
その町に、イマールと名乗る一人の流れ者がやってきます。
実はイマールは、ロンバルト王国の名軍事参謀だったりします。
しかし、長い軍隊生活に心身ともに疲れ果て、今は気ままな放浪生活をしているのです。
町に入るのを断られたイマールですが、一夜の宿なら紹介してやるよと声をかけられ、そして着いたのがイーリス亭という宿屋でした。

このイーリス亭は、美しい3人娘が切り盛りしているところ、城下町を牛耳るルジャン代官が手下を従え、暴力でいいなりにさせようとします。
そんな場面を見せられて黙っていては男がすたるとばかりに、イマールが奮闘、代官らは退散していきます。

一度は退いたものの、悪党どもはあきらめず、次々と仕掛けてきます。
そんな状況でイマールは3人を助けイーリス亭を守れるのか、ってのが大まかなあらすじでしょうか。

<感想>

基本的には痛快なアクションシーンを楽しむタイプですが、このゲームの面白さを根底で支えているのは、世界設定という土台がしっかりしていることにあります。

セカイ系やエヴァとかが流行りだしてから、物語の繰り広げられる舞台が、どういった社会から成り立っているのかとか、そういう細かい設定のいい加減な作品が増えだしたように思います。
中には設定や裏設定が凄いと評判の作品もありますが、それらにしても、ほとんどはキャラの設定や根幹たる世界の設定ばかりです。
その個人と世界をつなぐ中間的位置にある、「社会」のような部分が非常に希薄な作品ばかりなんですよね。
本作は、その今は失われつつある点がしっかりしていたのですよ。

まぁ、本作は92年なので、時期的にまだそういう設定を大事にしてた頃とみることも出来るでしょう。
しかし、本作のライターは、菅沼恭司さんといわれていまして。
この方は、『奴隷市場』も作っているんですよね。
『奴隷市場』が2000年であることも考慮すると、このライター自身が、とても設定を大事にする人なんだと思いますね。
『奴隷市場』も背景設定の深い作品で熱狂的なファンを生みましたが、そういう類の作品が好きならば、きっと本作も楽しめるのではないでしょうか。

<評価>

しっかりした土台から繰り広げられるストーリーには、とても安定感があります。
たぶん、誰がやっても良作には感じられるんじゃないかな。
ただ、もう一つ強烈な個性に欠けていたので、個人的には良作にとどめておきたいと思います。

近年もてはやされているライターは、派手な演出で目をひくものの、基礎たる土台が欠けていて、それ故に浅く感じてしまう人が多いです。
本作のライターは逆なんですよね。
土台はきっちりしているのですが、パッと惹き付けられる部分が少々足りなくて、それ故に私も良作に止めてしまったわけです。
このライターが企画や設定を作り上げ、今流行の見せ場を作れるライターが脚本を手がけたら、もしかしたら凄い作品も生まれるんじゃないかって思うわけでして。
そういう点からも、こういうライターは貴重だし、絶対に業界に必要だと思うのですよ。

それにしても、本作が92年で『奴隷市場』が2000年。
ちょっとあき過ぎですよね。
しかも最近は女性向けゲームであるとか、いかにも人を選びそうなゲームを作っていますし。
コンスタントにアダルトゲームを作り続けていれば、もっと高い評価と支持を得られていたかと思うと、ちょっと勿体無い気もしますね。
まぁ、本人には、余計なお世話と怒られちゃいそうですけどね。

ランク:B-(良作)


Last Updated on 2024-08-26 by katan

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