『ボクの彼女はガテン系/彼女がした事、僕がされた事/巨乳妻完全捕獲計画/ボクの妻がアイツに寝取られました。』は、2011年にWIN用としてエルフから発売されました。
ゲーム情報はないし、タイトルは不自然に長いし、しかもDMM独占販売というDL版オンリーなフルプライス作品で、期待と不安の入り混じった作品でしたね。
<感想>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
正式名称は『ボクの彼女はガテン系/彼女がした事、僕がされた事/巨乳妻完全捕獲計画/ボクの妻がアイツに寝取られました。』なので、最初はオムニバス4本なのかという予想もありえたと思います。
結果的には章仕立ての1本につながったシナリオであり、「ボクの彼女はガテン系」「彼女がした事、僕がされた事」「巨乳妻完全捕獲計画」「ボクの妻がアイツに寝取られました。」の順に、プレイヤーはゲームを進行することになります。
もっとも、何年後とか何年前って感じで頻繁に舞台が変わりますので、細かく見れば4つ以上のもっと多くの章で構成されたような印象ですね。
どんな内容なのか、事前情報からはハッキリとは分からないでしょうが、ライターの土天冥海さんは過去に寝取り・寝取られ系の作品しか作ってないし、DL販売をするDMMではジャンル欄に、「巨乳 不倫 人妻 恋愛 アニメーション 寝取り、寝取られ(NTR)」って書いていますからね。
これだけ揃えば、オムニバスでなくつながっていることさえ分かれば、あとは大体推測ができるでしょう。
つまり巨乳のヒロインと恋愛して結婚し、人妻となったヒロインが不倫によって寝取られてしまう作品、そしてHシーンはアニメーションって作品なわけです。
それ以上の目立った仕掛けはありません。
ある意味、寝取られ作品のきわめて王道な作りであります。
王道なんだけれど、素直に面白かったですね。
寝取られ作品の魅力は何だろうって分析した場合、細かな部分はいろいろと出てくるかもしれません。
でも一番肝心な根っこの部分は、魅力的で大事な女の子が他人に犯られてしまう、それを黙ってみているしかない辛さにあるのでしょう。
それが根幹であり本質なのであり、魅力的な女の子を作り出すことと、その女の子が徹底的に犯られることとのギャップを上手く描ければ、それだけで面白くなるのです。
NTRは今ではかなり有名なジャンルになりましたが、逆に作品の多くは低価格でボリュームが少なかったりします。
そこではやれることも限られますし、他との差異を図るために本質部分でなく周辺を飾る装飾部分や、
幹の周りの枝葉部分ばかりに力が入れられていたように思います。
本作はフルプライス作品のボリュームで、まず徹底的に魅力的なヒロイン作りから始めました。
ヒロインについては、『下級生2』のたまきんがガテン系の服を着ているとの第一印象だったのですが、このヒロインである美咲(以下ガテン子)が、プレイを続けるほどに魅力的に見えるわけでして。
本当に優れたNTRを作るには萌えゲー以上に魅力的なヒロインが必要ですが、他所はそれがなかなかできていなかったんですよね。
それをやり遂げた、すなわち主人公とガテン子が幸せになって欲しいと思わせることに成功した、言葉にすると簡単だけど実際にはかなり難しいことを、本作は成功したわけです。
これだけで他のNTRゲーから頭一つ抜き出た感じですね。
また、ガテン子は寝取られていても完全に堕ちません。
いや、心は拒んでも体が完全に受け入れているということで、世間一般の常識的な判断からは完全に堕ちているんですけどね。
あくまでゲーム的なあざとい完堕ちをしないってだけです。
でも、これがヒロインの魅力を最後まで維持しつつもギリギリの悲壮感を生んで、よりリアリティと重みを増しているわけです。
もちろん、ヒロイン作りだけでなく、その上手さは後の展開でも同じレベルを有しています。
特に寝取り側の間男の視点や思いがしっかり描かれたことで、物語の厚みがグッと増しましたし。
こういうのは他所もやってると言えばやってるだけに説明が難しいのですが、結局は土天さんのテキストが上手かったというのが大きいのでしょうね。
従来からテキストに定評のあった方ではありますが、以前は蛭田さんらしい雰囲気や若干の癖もありました。
優れているとされるゲームライターには2種類いて、つまり1つは強烈な癖で一部のファンを信者にするほど魅了するものの、信者以外には嫌われやすいタイプと、癖もなく信者は生みにくいものの読みやすく人を選ばないタイプですね。
土天さんは後者の方向に進化していっているようで、蛭田さんっぽい雰囲気や癖はなくなっていったように思うのですが、その代わりより落ち着いて読みやすいテキストになったように感じました。
そういう意味では、より万人向けになったのでしょうし、この業界内でのテキストの上手さではかなり上位にあると思います。
また、頻繁に時間が飛ぶことで無駄な描写を省き、全体のテンポと纏まりもとても良いものになりました。
上手いライターが本腰を入れてNTRを書いたらこうなるんだよと、その力の違いをまざまざと見せ付けたって感じでしたね。
まぁ野球で例えるならば、他のNTRゲーが緩い変化球でコースばかり狙っていたのに対し、150キロのストレートをど真ん中に投げ込んできたような、そんな痛快さがあったわけです。
NTR好きの求めていたもの、好む部分をズドンと突いてきたわけですから、これはNTR好きにはたまらないでしょう。
ジャンル的には近年最高レベルの名作でしょうし、今後数年は指標になりうる作品だと思います。
また同時に、小細工なしにNTRの魅力をストレートに突いた作品ですから、NTRって何が良いのか分からないって人や、興味はあるけど何からやって良いか悩んでいるっていう、初心者向けとしても優れた作品だと思います。
NTR好きなら絶対にやって損のない作品でしょうし、しばらくはNTR系のオススメを聞かれたらこの作品となるでしょうね。
さて、ここまではほぼ絶賛モードっぽいですが、若干の注意点もあります。
まず1つ目は、作品内に含まれる要素が少ないことです。
個々のHシーンはわりとノーマルですし、過激さもありません。
NTRのシチュに酔える人なら良いのですが、そうでないエロの過激さを求める人だと、若干物足りなくなると思います。
また、流れ的には輪姦や乱交になってもおかしくない場面で、そういう状況になりません。
ここに違和感を感じる人も当然いるでしょうが、それ自体は大丈夫だとしましょう。
でも、輪姦があれば輪姦好きも満足できるのですが、ないから輪姦好きは楽しめない。
万事がそんな感じです。
作品内に含まれている要素が少ないから、NTR好きでない人には楽しめる要素がかなり限られてしまうのです。
含まれる要素が駄目というわけではないので、決してマイナスにはなりません。
しかし点数を稼げる要素がかなり少ないってことなんですね。
フィギュアスケートで例えれば、選んだ項目は完璧にミスなく滑りきったのだけど、項目数が少ないために点のつく部分があまりないって感じなのです。
幹を蔑ろにして枝葉ばっかりにこだわるのは問題ですが、だからと言って枝葉がなさすぎるのも味気ないわけで、多くの人に対応できるようもっと要素を含めても良かったように思います。
これは何も他属性だけの話ではなくて、NTR内部であっても同様なわけでして。
NTR好きの中にはヒロインの堕ちる過程を重視する人もいますし、そうなるとヒロイン視点の存在は大きくなります。
本作にはヒロイン視点がありませんので、その観点からはやや弱くなってしまうのです。
NTR好きであっても好みが分かれうるわけで、ツボにはまればとことん楽しめるけれど、そのストライクゾーンは実は結構狭い作品のように思います。
登場する女性は2人で、しかも実質的なヒロインは一人と言えますし、メインルートのボリュームもそんなにないですからね、
もう少しハッピーであるとか違う展開であるとか、ゲームならではの横の広がりを増やしても良かったように思います。
2つ目は、上で150キロのストレートに例えましたが、決して160キロ超えではない点にあります。
つまりNTRの魅力を再認識させてくれた作品、そうだよな~これがNTRの醍醐味だよな~って、自分がNTRを好きだった理由を思い出させてくれた作品ではあるのですが、新たなNTRの魅力に気付かせてもらうような、そういう未知の要素は含まれていないのです。
私にとってはこれは非常に大きい部分でもあり、この作品で再発見はあっても新発見がなかったのは物足りなかったです。
私は良い意味で、土天さんには狂った部分があると思っています。
YELLOW PIG時代からのファンは、そこに惹かれたのだとも思いますし。
そうした土天さんならではの魅力や、本作品でのNTRに対するこだわりが、もう1つ伝わってこなかったんですよね。
これまではドマイナーな寝取り系作品が多く、今回はそれよりもメジャーな寝取られにシフトし、自力があるから数の多いNTR好きによる支持の声が大きくなるかもしれませんが、本来的には寝取り系の得意なライターのように思いますね。
他には、結局はヒロインが足りないからこういう事態になったのだろとか、主人公がヘタレなのも新鮮味が足りないとか、間男のいかれ具合もライターの過去作ほどではないとか、キャラと展開のオーソドックスさは若干気になりましたかね。
グラフィックも綺麗で、門井絵でNTRを楽しめることに価値を見出せば高得点もあるのですが、アニメーションに関しては媚肉の頃から大きな進歩もありませんし、あの頃よりもインパクトは失われてしまいます。
それと低価格の寝取られゲーよりはボリュームがありますが、実質フルプライス相当の作品にしてはボリュームが少ないです。
他にはせっかくのガテン系ヒロインという設定なのに、それが作中にほとんど活きていない点も残念でした。
女性2人で男性の比率が高いのに女性しか声がないのも、人によっては物足りなさにつながるでしょう。
まぁどれもマイナスになる要素ではないのですが、何かしらもうひと工夫があればプラスになりえただけに、非常に惜しい部分の多かった作品でもありました。
<評価>
基本的に非常に良質な作品ですし、そもそもフルプライス級で楽しめるNTR特化の作品も少ないです。
それ故NTRという観点だけで判断したNTRゲーム的には名作なのでしょうが、全体的な観点からは名作と言いうるにはもう一押し足りないのかなと。
そのため、総合でも名作に近い良作って感じでしょうね。
ランク的には人間デブリと一緒になってしまいますが、あちらは普通のBでこっちはA-に近いBって感じで、媚肉には及ばなかったものの前作よりは満足できた作品でした。
個人的にはそんなところなのですが、とりあえずNTR好きや興味のある人は絶対損しないから迷わず買え、逆にそうではなく他の何かを期待する人は迷わずスルーしろという、まさにNTR好きのためだけの特化ゲーってところではないでしょうか。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-12-16 by katan
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