神愛 ~Shin ai~

2002

『神愛 ~Shin ai~』は2002年にWIN用として、Cycから発売されました。

BLゲーのライターとして有名な草香祭さんの、貴重な男性向け作品ですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

商品紹介・・・
現実の世界と時代や文化の全く異なる3つの異世界を行き来して、ヒロインたちと恋愛を成熟させるアドベンチャー。
ある日、見たこともない写真を手にすると、その写真に写っていた場面へ転送されてしまい、そこで出会ったヒロインたちと関わっていく。
異世界から現実へと戻されてしまうが、異世界で出会ったヒロインと似た容姿の女の子と出会い、親密になると新たな写真を手にする。
ストーリーの流れにあった写真を選んで異世界でのイベントを出現させていくので、現実界でのストーリーの運びがポイントとなる。
神の教えに翻弄する少女たちを救うのは神か、人か……。

<はじめに>

Cyc系列の作品は当初、ゲームデザインの凝った作品が多かったです。
その観点からみた場合、本作では単にマップ上から移動先を選ぶだけであり、他にこれといった特徴もないことから、一見すると地味に見えてしまいます。
そのため当初は、本作の存在を特に気にしておらず、スルーしていました。

しかし、その後、別の作品をやったことにより、この作品をやらねばと思うようになったわけです。
そういう私みたいな人、本作に限っていうならば、たぶん結構いるのではないでしょうか。
というのも、本作のシナリオライターの一人が、草香祭さんだからです。

知らない人向けに捕捉すると、草香祭さんは、本作までは男性向け作品のシナリオを書いていましたが、翌年にはBLゲーの『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』を作り、そこで注目度が一気に上がります。
その後にも『神学校』を作るなどして、BLゲーのシナリオライターとしては、第一人者的な存在でもあるわけでして。
そのライターの男性向け作品ですからね、
ストーリー重視の作品が好きな人ならば、絶対に気になるはずなのです。

<感想>

本作は、現実世界と、異世界(古代日本・中世イスラム・中世西欧がモチーフ)とが、交互に描かれる作品になります。
具体的には、現代の主人公が写真を選ぶことにより、夢の中で、選んだ異世界での話が進行します。
異世界には現代のヒロインとそっくりなヒロインがいて、現実世界と異世界の両方で問題を解決していくことになります。

以上のように、異なる複数の世界観が描かれる作品であり、その題材として宗教も扱っています。
ノベルゲーをやっていると、時にライターの思想や主張が露骨に表れていて、しかもその思想・主張が稚拙であるために、プレイしていて辟易してしまうことも多々あります。
自分が年をとるほど、ライターの浅さに気付いてしまうようで、何とも嫌なんですけどね。
例えば男性向けで某所で点数の高いノベルゲーをやってみると、確かに中高生にはかっこいいと思われたり、受けそうな思想だなとか思っても、だからこそ余計に、自分は楽しめないということが少なからずあるわけでして。
本作の場合、題材が宗教なわけですから、ライターの思想等がより出てきやすいともいえます。
だから、ライターの思想の押し付けが嫌な人は、こういう題材の作品は避けがちでしょうし、私も草香さんの作品でなければ、避けていたでしょう。

しかし、そうした心配は、本作では全くの杞憂に終わります。
各世界における宗教観がきちんと説明されつつも、決して説教くさくならず、ライターの思想を押し付けることもなく、さすが草香さんと思わせるような、実に上手い仕上がりとなっているのです。
だから骨太なストーリーを求める人には、十分おすすめできる作品になっています。

また、背景で空の雲が動くなど、この時期の作品としては凝ったところもありますので、背景とか演出を重視する人も満足できるでしょう。

他方で、本作は、全体的に派手さがなく、とても地味な作品でして。
異世界のストーリーは良いとしても、現実世界の方は異世界選びのための手段の面も強く、システム面での兼ね合いもあり、やや間延びした部分もありますしね。
そのため、キャラ萌えや、笑える日常シーンが好きな人には、あまり向いていない作品だと思います。
ゲームデザインにも凝るブランドだけに、もう一工夫欲しかったですね。

<評価>

総合では良作としておきます。

全体的に、良くできていた作品といえるでしょう。
2002年の中では、少なくともストーリーに関しては最上位クラスだと思いますし。
ただ、上記のようにプレイ中に少し中弛みがあったこと、派手さがないだけに、この中弛みがやや堪えたこと、そして何より、草香さんの本領は、BLゲーでこそ発揮されるのであり、男性向けではその魅力が存分に発揮されていないこともあって、名作には届かずといったところとなりました。

エロゲ市場は、男性ユーザーの方が多いでしょうし、そうなるとBLゲーは、それだけでプレイしないという人も、少なからずいると思います。
正直なところ、私自身もBLが好きというわけではないですからね。
でも、男性向けであれ、女性向けであれ、シナリオが良いものは良いのです。
エロゲにシナリオを求めている人も結構いるわけですから、そうであるならば、BLゲーだからとの理由だけで避けずに、『神学校』とかもプレイしてもらいたいものです。
それで草香さんというライターに興味を持ったら、草香さんの男性向け作品として、本作や『ゴアスクリーミングショウ』に手を出してみるのも、良いのではないでしょうか。
まぁ、本作は入手が難しくなっているのですが、『ゴアスクリーミングショウ』辺りは手に入れやすいですしね。
エロゲに何を求めるかは人それぞれですが、少なからずストーリー性を求めるのであれば、この人の作品を知らないというのは、私は損をしていると思うんですよね。

ランク:B(良作)

Last Updated on 2025-04-27 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
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    要望のあった攻略についてですが、下記のURLで見ることができます。
    https://web.archive.org/web/20060512130324/http://www.sun-inet.or.jp:80/~s-kudo/L_A_M/sa/sinai.html

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