『BEAST ~淫獣の館~』は1990年にPC98用として、バーディソフトから発売されました。
高難度でも話題になった、館モノのコマンド選択式ADVでした。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
舞台となるのは高原に佇む1軒の洋館。
主人公らミステリー研究会の一行は雨に降られたことから、その洋館に宿を求めて訪れます。
翌朝、目が覚めると主人公の周りには誰もいなくなっているため、仲間を探して館内を探索することになります。
<感想>
私がこのゲームに興味を持ったのは、本格的なADVだって噂を聞いたからなんですね。
本作はコマンド選択式のADVなのですが、探索により多数のアイテムが登場しますし、RPG風のダンジョンも良いアクセントになっていたでしょう。
また、難易度も非常に高かったです。
こう書くと、おぉ~何か本格的だな~って気にもなってきます。
しかし問題は、この本格的という、分かったような分からないような言葉でして。
本作の最大の欠点は、難易度の質にありました。
というのも、フラグを立てるために、多くの同じコマンドを何度も試す必要があったのです。
もっとも、繰り返すうちに同じセリフが続いたというのなら、それで打ち止めだな次のコマンドを試そうって判断もつくでしょう。
本作はそうではなく、同じセリフが出てきても、それを何度も繰り返すうちにまた違うセリフになり、それでフラグが立ったりするわけですね。
これはもう、時間稼ぎ以外の何ものでもないわけでして。
この頃のADVは一時期の高難度時代から方向性を転換し、非常に簡単になってきていきました。
その反面、すぐに終わってボリューム不足にも陥りやすかったです。
それはそれでコスパ的にも問題が大きいので、本作のような難易度が高いこと自体は大歓迎なのです。
いくら難しくても、必死に考えてクリアできるのなら、そんなやり応えのある物はむしろ歓迎すべきことでしょう。
しかし、難易度の意味を履き違えては駄目なのです。
一言でコマンド選択式と言っても、その内容は多彩です。
難しそうでもプレイヤーの創意工夫次第でサクサク進むのもあれば、本当に総当りを強いられるものもあります。
サクサク進むのは今の時代なら評価されそうに思うのですが、昔は総当りでも難易度が高いのが良しという、変な価値観も一部でありました。
そのため、良質なのにマイナーという不遇な作品が生まれた反面、出来が悪いのに過大評価されたのもあったことから、どうにも厄介だったんですよね。
本作は難易度こそ高かったのですが、それは総当りを強いる構造によるものであり、コマンド選択式としては全然練られていなかったわけです。
こういうのを本格的とか言い出すから、コマンド選択式と総当りが同義であるかのような、馬鹿げた妄言が出てくるのです。
まぁ、こういうのも慣れているから、個人的には特に大きな支障もなかったのかもしれませんが、これでコマンド選択式はこういうものだって思われるのは、ちょっと納得がいかないってことですね。
ということで批判が長くなってしまいましたが、ボリュームの少ないゲームが増え始めた時期にこういうのが出たことで、易しいゲームは嫌って人には救いのゲームになりえたのもまた、確かなのでしょう。
そして、ストーリー自体は普通であるものの、グラフィックとかサウンドとかは抜群だったわけで、さすがにバーディソフトと思わせる出来でした。
OPからして凝っていますので、自然にゲームに入っていけるんですよね。
<評価>
悪い部分も大きいけど、良いところもあるってことで、総合では佳作としておきます。
たぶん今の人がやればすぐ挫折してしまうだろうし、おそらく私ももう耐えられないと思うのですが、高難度の選択式が好きな人ならかなり楽しめた作品ではあるのでしょうね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2025-02-04 by katan
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