『冬のお伽ばなし』は2007年にWIN用として、シモメマイから発売されました。
何でも、製作期間は10年であるとか。
まさに同人らしい、執念の作品ってところでしょうか。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
もっとも、少し変則的なので後述します。
あらすじ・・・
彼の地は夢かまぼろしか。其はたそかれに属すところ迷いひしもののみおとずれん。
むかし、きずつきし男あり。迷ひて山に入り、雪に路をうしなふ。
やみくもに歩きてみれば、こごえし鶴一羽あり。
男あはれに思ひて鶴かき抱きていればあたりにわかに晴れ、一本杉の峠のあなたに屋敷五つ六つばかりの村、姿をあらわさん。
その村不可思議なるところなり。村びとみなけもののかたちをし、ひとのことばを解す。
其はもののけの地なり。男 魂魄離れし故に、村をでることあたわらず。
いざ紡がん、彼の男のものがたり。
<感想>
同人だからできたというのか、製作期間10年って凄いですね~
本作は「和風けものボーイズラブAVG」と銘打たれていること、及びタイトルからも想像できるように、季節は冬、世界観は和風で、けもの耳を持ったキャラが登場するBLゲーになります。
個々の属性は決して珍しいものではないのだけれど、この組み合わせ全体となると珍しいのではないでしょうか。
本作は、主人公のタツが魂魄を欠いた状態でケモノの村に迷い込み、春までに魂魄値(魂=精神 魄=肉体)を貯めて、現世に戻るのが目的なります。
この作品、とにかく雰囲気が良いです。
キャラデザとか、部分的に見ると微妙だったりするのだけれど、演出を含めたグラフィック全般が統一されていますし、上記のストーリー上の属性も分離することなく、上手く融合していますからね。
この辺の統一された雰囲気作りの上手さが、本作の一番の特徴でもあるのでしょう。
また、シナリオも良かったです。
お伽ばなしというだけあり、日本の昔話もモチーフになっていますが、そこも上手くエッセンスを取り入れられた感じですし。
これが最近の男性向けエロゲとかになると、昔話の内容を露骨に取り入れるような、工夫のないものになりかねないですからね。
全体的に女性向け作品は、童話とかをネタにする作品も多いからか、男性向けより使い方が洗練されているように思います。
まぁ、PC98時代までは、男性向け作品でも、童話とかをネタにしたのも少なくなく、洗練されたものがあったんですけどね。
WIN以降になって登場頻度が減ってから、むしろ使い方が下手になった感じで。
少し話題がそれてしまったのですが、裏ルートの存在も含めて、どのルートも楽しめました。
ただ、いわゆるハッピーエンドで終わる類の作品ではなく、結構切ない感じの作品ですので、その辺で合わないって思う人は出てきてしまうでしょうね。
さらに、ボリュームもありますし、遊び応えも十分です。
<ゲームデザイン>
総じて欠点らしい欠点もないのですが、一つ気になるとすれば、ゲームデザインになるでしょうか。
本作は簡易マップが表示され、そこから移動場所を選択し、移動した先のキャラと会話をすることで進行します。
キャラとのフラグをたてるだけでなく、イベントによっては魂魄値(魂=精神 魄=肉体)が増えますので、そちらも大事になります。
魂魄値を貯めていくということで、一部育成SLG的な要素もあり、人によってはSLGと感じる人もいるかもしれません。
もっとも、私は、部分的に数値が出てきても、ゲームの進行度を可視化させた目安の役割でしかない場合には、ADVとして紹介しています。
そもそも80年代のADVなんかは数値を伴った作品も多いので、数値があるからSLGってならないんですよね。
だから本作も、伝統的な理解に従えば、ADVで良いのだと思います。
本作のような構造の作品は、90年代後半にはわりと見かけました。
本作が発売されたのが2007年で、製作期間10年なんだから、まぁ何となく納得してしまいますね。
ただ、やっぱり10年は長かったよなと思うわけでして。
90年代後半であれば、主流が育成SLGからノベルへ移る過渡期でもあり、両方のファンを楽しませるためにも、中間的な本作のようなシステムもありだと思います。
しかし2007年では、その理由も失われてしまいます。
本作の構造では、各イベントがブツ切れになってしまい、ストーリーラインが弱くなってしまいます。
それでいて、本格的なSLGのような楽しみもないですしね。
最後まで読めば良い作品ではあるのだけれど、かかる構造であるがゆえに、序盤は少し物語内に入っていきにくかったです。
<評価>
少し気になる部分はあったのですが、全体としては独自性も備えた良い作品だと思いますので、総合でも良作とします。
属性的にはややマイナーなものも多いですが、それだけに合う属性が多い人ほど楽しめる作品だと思いますね。
Last Updated on 2026-03-23 by katan


