『蛇のシンデレラ』は2018年にWIN用として、禁飼育から発売されました。
サークルらしさを維持しつつも、演出が進化した作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
清掃員として働く季雪さきは、夢や希望といったすべてを諦め、質素な生活を送る三十路干物。
いつもの満員電車で通勤中、痴○冤罪で捕まりそうになった男、酸ノ宮を助け、しかも同じ会社で働く者同士、すぐ打ち解け仲良くなり、彼のおかげで少しずつ前向きに生きてみようとするが…?
<感想>
コンセプトは長身細身悪人男×三十路干物幸薄女だそうで。
簡単にいうと、いろいろあって上手くいっていない三十路の女性に、男の人との出会いがあったと。
ただ、普通と違うのは、その男性がヤンデレだったことなのです。
ヤンデレを扱ったノベルゲーは少なからずありますが、本作は18禁の乙女ゲーということもあり、男性の方がヤンデレで、主人公を無理やりやってしまうという感じですね。
ストーリー展開、テキストの質、演出等、全部まとめて端的に言うならば、いつもの禁飼育という感じになるでしょうか。
禁飼育の作品が好きならば、本作も間違いなく楽しめるだけの品質を有していると思います。
いつもの禁飼育と異なるところとしては、2点ほど挙げられるでしょうか。
まず1点目は、CGの枚数と、それに伴う演出の幅の広がりですね。
これまでの禁飼育の作品も、価格からすれば相応かそれ以上のCG枚数がありました。
そのため、特に気になったこともありませんでした。
しかし本作は、1100円という価格に対し、基本CGが100枚以上、差分込みだと730枚以上にまで増えました。
フルプライスのエロゲの10分の1程度の価格で、同等かそれ以上の枚数です。
一枚絵の数が格段に増えたということで、客観的な部分で過去作を大幅に超えてきたわけですね。
この圧倒的な物量を用いることで、演出の幅も広がりました。
禁飼育の魅力というのは、一言で表すとギャップなのでしょう。
上げてから落とすストーリー展開だけでなく、細かい上げ下げも含め、大小様々なギャップというか、緩急のつけ方が上手いのです。
シリアスな場面、真綿で首を締めるようにヤンデレがじりじりと迫りくる場面もあるかと想えば、下の画像のように、白黒でデフォルメした絵で和ませてみたり。
そういうところが良いのです。
本作ではCG枚数が増えたことで、サークルの持ち味を、これまで以上に見せつけることに成功したといえるのでしょう。
こういう明らかに進化したと感じられるケースって、意外と少ないですからね。
ここは十分評価されて然るべきでしょう。
ただ、しいて苦言を呈するならば、私個人の感覚としては、物量は増えたものの、新たな発見というか、新鮮な驚きはあまりなかったかなと思いました。
まぁ、単に私がここの作品に慣れすぎたからかもしれませんので、一概には言えないかもしれませんけどね。
次に2点目としては、まぁ2つ目と言えるのかは本当は怪しいですけどね。
それまでの禁飼育の代表作って、ファンタジー世界とか、現実世界を舞台にしていても、設定が本来はありえないとか、どこか非現実っぽいところがありました。
しかし本作の場合、主人公は社会人であり、普通にOLとして暮らしているわけでして。
まぁ、現実路線の作品は他にも出しているのですが、私はここの初期の作品はあまり楽しめなかったので、楽しめるようになってからの現実路線の作品としては、本作が初になるのです。
それで、過去の代表作とは異なる印象を受けたということですね。
こういう現実路線の作品って、正直なところ、私はあまり好みではありません。
しかし、本作のメインターゲット、主なプレイヤー層って、女性プレイヤー、しかも18禁であることから最低でも18歳以上ということで、それなりに平均年齢も高めになっていると思います。
本作をプレイする方の多数派からすると、親近感や共感を抱きやすい設定なのかなと思うわけでして。
そうなると、いつも以上に、メインターゲット層には刺さりやすいジャンルといえるのかもしれませんね。
<評価>
総合では、少し悩みました。
作品としては、私は『異端審問官の愛寂』の方がインパクトがあって好きでしたし、それを本作は超えていないように思います。
そのため、当初は良作かなとも考えました。
しかし、こういう現実路線のガールミーツボーイな作品、一組の男女の関係性だけを描いた作品は、女性向けの同人の中ではたまに見かけるものの、私が名作と判断した作品はなかったわけでして。
このタイプの代表作を一つ挙げるとなると、それは本作になるのかなということで、その点を評価したのと、あとはCG枚数という客観的な部分での明確な進化という点も考慮すると、これはこれで名作と言って良いように思えました。
したがって、総合でも名作とします。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2025-02-23 by katan
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