大江戸探偵 神谷右京

1993

『大江戸探偵 神谷右京』は1993年にPC98用として、アルテシアから発売されました。

神谷右京シリーズの最初の作品であり、TAKERU専用として販売されていました。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

あらすじ・・・
探偵である神谷右京は事件を依頼されるのですが、その依頼者が殺されてしまいます。
遺書に右京の名前があったことから、大学時代からの友人である検事のハンコから連絡を受け、右京は真相を追求することになります。

<神谷右京シリーズ>

いつか書こうと思いながらも、ずっと後回しになってしまっていた「神谷右京シリーズ」。
根強いファンもいたシリーズであり、唯一無二の魅力を持っているのだけれど、それだけに筆が進まなかったもので。
まぁ一部作品は既に扱ってはいますが、本格的に紹介となると、なかなか厄介でもあったのです。
とはいえ、これ以上遅くなると記憶が薄れるだけですし、更に書けなくなってしまいます。
そこでようやく書こうと思った次第です。

さて、神谷右京シリーズは、正式な作品としては、純粋なリメイクを除けば、おそらく6作品が発売されたと思います。
『真説 大江戸探偵神谷右京』と『真説 神谷右京2』がPC98で発売され、3~6作目までがWIN用としての発売でした。

その最大の特徴はセミフィクションであるということで、これはノンフィクションとフィクションが混ざった作品を意味していました。
より厳密にいうならば、シリーズのシナリオ及び原作を担当した藤堂信昭氏は、当時現役の弁護士でして。
それで自身が携わった実際の事件を、守秘義務に反しない範囲で題材とし、アレンジを加えてゲーム化したのが、神谷右京シリーズだったのです。

まぁセミフィクションと言っても、これがまたややこしいのですけどね。
『真説 大江戸探偵神谷右京』と『真説 神谷右京2』の二つ、つまりPC98版の最初の二つは確か40%がノンフィクションで、残りがフィクションだったはずです。
それ以降の「真・真説」と呼ばれる3~6作目は2%がフィクションであり、残りはノンフィクションだったそうで。
つまり名称変更や分岐でフィクションが混ざるだけで、それ以外は実話ベースだったということですね。

そして更にややこしいことに、PC98時代には『大江戸探偵 神谷右京』と、『大江戸探偵 神谷右京2』という2作品がありました。
この2作品は『真説 大江戸探偵神谷右京』より前の発売であり、TAKERUという自動販売機だけで販売されていました。
面倒なので、以後はTAKERU版と書いてしまいますが、真説以降が18禁であったのに対しTAKERU版は一般販売であり、内容もTAKERU版は完全にフィクションで、価格も低価格での発売という違いがありました。
当時のアダルトゲームを掲載した書籍でも、『真説 大江戸探偵神谷右京』以降は載っているのですが、TAKERU版は載っていません。
18禁でなくても、それに類する作品であれば掲載されていたことから、おそらく本作は同人としての扱いだったのでしょう。
シリーズとしても真説からカウントされていますので、TAKERU版は前史的な扱いとなるのでしょうね。

今回扱うのはTAKERU版の1作目であり、前史的な存在ではあるものの、世に始めて探偵・神谷右京が登場した作品となります。

<感想>

あらすじにも書きましたが、基本は殺人事件の解決を目的としたシナリオになります。

今と異なり昔は推理ものは一杯あったけれど、他の推理ものと神谷右京シリーズが異なるのは、やっぱりそのリアリティなのでしょう。
上記のようにシリーズの後の作品はほとんどノンフィクションですし、本作はフィクションではあるものの、藤堂さんの実体験で得た経験・知識を元にしていますからね。
専門用語なども出てきますし、雰囲気が全然違うのですよ。

ちなみに、主人公の神谷右京は、高田馬場のW大学法学部出身です。
真説では西新宿大学とかぼかした名称に変更されていましたが、制作協力におもいっきり早稲田大学と書かれてありますし、つまりはそういうことですね。
そして、右京は司法試験には合格しているのですが、修習には行かないで探偵になったという設定でした。
なお、司法試験に合格しても、すぐには弁護士になれません。
司法修習を経て二回試験に合格した後に、ようやく弁護士・裁判官・検事になることができます。
この二回試験は、ほとんどの人が合格する試験ではあるのですが、それだけに落ちたらというプレッシャーが大きいですし、そもそも試験を受ける人は全員が司法試験合格者ですから、決して侮ることはできません。また、試験時間もとても長く、お昼ご飯を食べながら書き続けるような試験でして。少なくとも体力的には司法試験以上であることから、司法試験以上に2度と経験したくないと言う人がいるような試験です。
右京は、二回試験を受けていないはずですので、仮に探偵に飽きたから明日から弁護士やろうって思っても、すぐにはできないということですね。

他にメインで登場するキャラとして、ハンコというヒロインがいます。
ハンコは右京の大学時代の友人であり、当時は一緒に司法試験サークルに所属していて、現在は司法試験に合格して検事をやっています。
また右京の事務所でただ働きさせられている美奈子も、右京の後輩としてW大学法学部に通って法律を学んでいます。

そういうキャラたちばかりなので、通常の会話にも専門用語が混ざりますし、ギャグにすら混ざる場合もあります。
これが付け焼き刃の知識で書いたらいろいろボロも出るところですが、本シリーズは専門家が書いているので、全く問題ないわけですね。

・・・でも、そう考えると、自分は理解できていたから問題ないけれど、人によっては意味が分からないってこともありえたでしょうね。
だからなのか、後の真説とかでは用語辞典が用意されていました。
本作は後の作品ほど専門的な言葉はないので支障はないはずだけど、逆に用語辞典がないことから、この手の世界に全く無縁な人には少し分かりにくかったかもですね。

まぁその辺は知っていれば更に分かるというだけで、本作に関しては分らなくてもノリで何とかなりますけどね。
今更このシリーズに興味を持つ人がいるか分からないけれど、もし興味を持つ人がいたとしたら、むしろ厄介なのは主人公のノリかもしれません。
というのも、主人公は下ネタが好きな青年であり、書いている人の関係か、ぶっちゃけオッサン臭いわけです。
もっとも、当時のアダルトゲームでは、蛭田作品などそういう主人公が多くいたのも確かですし、本シリーズの場合は主人公の年齢も高いので、作品としては違和感はないのですけどね。
でも、今の二十歳前後の若いユーザーがやったら、そして学園ものくらいしか知らないようであるならば、オッサン臭いと思っちゃうかもしれませんね。

まぁ、当時のエロゲスタンダードな主人公に近いこともあり、個人的には何ら気にならずに楽しめましたし、下品さの中にも知性を交えた会話は好きだったのですけどね。
また今のノベルゲーにように描写しすぎるのではなく、行間を読ませるというのかな、分ってはいるけどあえて言葉にしないところなんかは非常に好きでした。

本作自体は低価格商品ということもあり、ボリュームは少ないです。
ただ、短いながらにも、他とはまるで異なる雰囲気の推理ものということで、インパクトは大きかったように思います。

ちなみに、上記のように本作は一般作でして。
真説とかは過激だったり猟奇的で残虐なシーンもあるのですが、TAKERU版には過激なシーンはなく、ちょっとしたお色気程度でした。

<グラフィック>

TAKERU版で注目する点、後のシリーズと大きく異なる点としては、グラフィックの存在も挙げられるのでしょう。

真説以降はセミフィクションとしてリアル志向になったからか、背景は実写を加工したものになります。
このシリーズの場合、実写加工というのにも、実はある種の楽しみがあるのですが、その辺は別の機会で、「真説2」の時にでも書きたいと思います。
とりあえず真説以降は実写加工で、キャラも微妙なデザインになっていき、グラフィックはマイナス要素になりかねない出来でした。

もっとも、その、シリーズの弱点はグラフィックという認識も、実は真説以降の話でしかないのです。
本作は普通のADVと同じように描かれた背景ですし、キャラも目パチ口パクありでしたし、背景のオブジェやキャラのちょっとした動きなどにも、時々アニメーションが入っていたんですね。
イメージとしては、当時のエルフのADVのようでもありました。

真説以降は、よりリアル志向になり、シナリオに重みが増し、それはそれで魅力的ではあったものの、どんどん地味になっていって、一般受けしにくくなっていきました。
万人が楽しいと思えるような、見た目でも楽しませようというエンタメ性という観点で考えるならば、むしろTAKERU版の方が上と言えたでしょう。

<評価>

シリーズ通して決して派手さはないけれど、こういうのがあるのかということで、存在自体にはインパクトがありました。
とはいうものの、本作自体は非常に小粒ということもありますし、本格的にシリーズらしさが出てくるのも次作以降ということで、総合では良作としておきます。
まぁ、評価という観点からは伸びにくい作品でもあるのでしょう。

当時は特別好きというわけでもなく、何となく好きという程度のシリーズだったのですが、今のアダルトゲーム市場では存在しえない方向性だけに、時々無性に懐かしくなってきます。
というか、派手なシーンやトリックを好んだ若い頃よりも、むしろ今の方が良さが理解できるように思います。

後の真説以降がリアル志向になったこと自体は構わないのですが、できれば本作のような演出も維持してあれば、もっと良かったのになと、その点だけは勿体なく思いますね。

ランク:B(良作)

Last Updated on 2024-09-24 by katan

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