『Fugue(フーガ) ~きみとぼくのうた~』は2000年にWIN用として、シーズウェアから発売されました。
地味ながらも独特の雰囲気のある作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
ちょっとした転寝のつもりが、深夜三時までしっかり眠ってしまっていた“門谷正樹(主人公)”。
グータラな生活がたたってしまったかと思いながらも、そういう自分が好きだったりもする正樹である。
二度寝するには頭が冴えて眠れない。
退屈しのぎに雑誌でも読もうかと思っていると、窓の外で人の気配が……。
カーテンを開けてみると、電灯に照らされ、ひとりの少女が佇んでいた。
声をかけると、彼女は、中学時代の同級生“西村双葉”だった。
話を聞くと、家出中だというのだ。
平凡な生活に辟易していた正樹は、無理やり彼女の家出に着いて行くことにした。
そして、辿り着いた先は、田舎の廃校で、彼女以外にも数人の女の子の姿が…。
かくして正樹は、双葉ら女の子達と奇妙な共同生活をすることになるのだが…。
このゲームは田舎の廃校を舞台にした少女達との共同生活をモチーフにしたアドベンチャーゲームです。
かつての同級生との再会をきっかけに辿り着いた場所で、新たな出会いが主人公を待っています。
彼女達はそれぞれの事情で家に帰りたくない理由を抱えています。
あなたがその心の傷を癒してあげて下さい。
<感想>
90年代中盤頃の、PC98~WIN初期を知っている人であれば、当然知っているかと思うのですが、あの当時のシーズウェアの勢いは凄かったです。
一時期は、エルフ、アリス、アイデスに次ぐくらいの勢いがありましたから。
WIN時代に入ってからも、アニメーションや音声を早期に導入し、演出面でも優れた作品を幾つも作っていました。
ただ、WIN初期の作品はバグが非常に多く、次第にユーザーが離れていきました。
まぁ、ファンが離れた理由としては、菅野ひろゆきさんがエルフに移籍した等の事情も大きいかもしれませんけどね。
菅野ひろゆきさんが抜けた後も、話題性の高い作品を発売していましたが、転機となったのは99年の上半期になるのでしょうか。
シーズウェアは、99年の上半期に、『散櫻 ~禁断の血族~』と、『ADAM THE DOUBLE FACTOR』を発売しています。
『散櫻 ~禁断の血族~』は、タイトルから分かるとおり、93年に大ヒットしシーズウェアのデビュー作兼出世作となった、『禁断の血族』シリーズの3作目になります。
2作目の『GLO・RI・A ~禁断の血族~』(1996)も注目度が高かったので、3作目に注目が集まるのも当然と言えるでしょう。
最近だと、シーズウェアというと菅野作品ばかり注目されがちですが、当時の感覚だと、禁血シリーズも双璧の存在といえました。
『ADAM THE DOUBLE FACTOR』は、タイトルだけだと分かりにくいですが、菅野ひろゆきさんの代表作でありアダルトゲーム史に残る傑作の『EVE burst error』の続編になります。
(正確にいえば、シリーズ3作目であり、菅野さんはノータッチです。)
シーズウェアの代表作が何かと聞かれると、ストーリー重視ならば『EVE burst error』となるでしょうし、エロ重視やブランドの歴史重視ならば、デビュー作でありつつ、出世作でもあった『禁断の血族』となるのでしょう。
その看板タイトル2つの続編が出たわけですから、99年上半期のシーズウェアは、勝負に出たと言えるわけです。
しかしながら、どちらも決して悪い作品ではないものの、良くも悪くも普通の作品でしかありませんでした。
普通のブランドが普通の作品を出すのであれば、特に問題はないのでしょう。
しかし、シーズウェアの看板タイトルの続編がこの出来では、もう期待できなくなると思った人は、少なからずいたのではないでしょうか。
少なくとも私は、この時点でシーズウェアへの興味がなくなりました。
本作が発売されたのは、2000年の4月になります。
シーズウェアへの興味が薄れた私は、当時はスルーしました。
大分後になって、たまたま安く売られているのを見て、手を出した作品でした。
他のファンが私と同じように考えたとは限りませんが、それでも99年下半期以降のシーズウェアの作品の注目度は、以前よりは大分低くなったように思います。
本作は、そんな注目度が下がった時に発売された作品だったのです。
さて、本作をプレイし始めて、最初に思ったことは、これは本当にあのシーズウェアの作品なのかということでした。
98年頃の作品には、アニメーションが含まれていたり、音声が付いていたりしたはずです。
それなのに本作には、音声はありませんし、アニメーションもありません。
UIとか、これ以上減らせないくらいにシンプルです。
バグはなく安心して遊べることは良いことなのでしょうが、様々な面で過去作より退化しており、過去のシーズウェア作品を知る身としては、悲しくなってしまいました。
ただ、あくまでも過去のシーズウェア作品を知っているからこそ、悲しくなってしまっただけのことであり、本作がつまらないかというと、それはまた別の話でして。
私、結構この作品の持つ雰囲気、好きなんですよね。
確かに地味だし、ボリュームもそんなにないし、当時うけていた萌えとは縁遠い作品ではあるのでしょう。
しかし、廃校でのヒロインたちとの共同生活が、他の恋愛ゲーと似ているようだけどちょっと違う雰囲気を醸し出していて、そこが好きだったのです。
画像を一枚載せましたが、そのCGからも、何となくよくある恋愛ゲーと異なる雰囲気は伝わるのではないでしょうか。
<評価>
総合ではギリギリ佳作とします。
何も知らないで本作をプレイすると、UIとか何て不親切なのだと思うでしょうし、プレイしても何も感じられないかもしれません。
ただ、シーズウェアの変遷を知ったうえで本作をプレイすると、いろいろな感情がわきあがってくるという作品でもあるわけでして。
昔のシーズウェアは好きだったなぁ、でも、最後の方の作品はそういや全然知らないやっていう人には、本作をプレイしてみてもらいたいですね。
ランク:C-(佳作)
Last Updated on 2025-01-29 by katan
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