『Five Years』は、2001年にWIN用として、AIR PLANTSから発売されました。
この時期には珍しくなった推理ゲームであり、AIR PLANTSの最後の作品でもありました。
「5年という時間は長いのだろうか、短いのだろうか」という言葉が、何とも印象的でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
高校時代、夢や恋を真剣に語り合った仲間たち。
5年たち、再開を果たした彼らに思いがけない事件が起きるのだった。
再開の場でラジオから流れてくる殺人事件。
その容疑者は主人公だった。
彼の容疑を晴らそうと、事件解決の協力を申し出る仲間たちの姿に、失われていない確かな友情を感じる主人公。
だが捜査が核心に迫るにつれ意外な犯人が・・・・・!
<感想>
AIR PLANTSは、1998年から2001年まで活動していたブランドです。
2000年前後のわずか4年間だけなので、知らない人も多いかもしれません。
代表作は何ですかね、『Snow Memoria』あたりになるのでしょうか。
そんなAIR PLANTSの最後の作品が本作になります。
本作は、5年ぶりに帰国した主人公が、帰国直後に殺人事件の容疑者にされてしまいます。
そこで、事件の真相を探ることになるという、いわゆる推理ゲームになります。
もっとも、本作は、謎解きがメインではありません。
「5年という時間は長いのだろうか、短いのだろうか」という言葉が、本作の中で出てきます。
本作は、この言葉に全てが集約されているのでしょう。
主人公は高校卒業後に渡米し、5年後、それなりに成功して戻ってきます。
高校卒業からの5年というのは微妙な年月であり、将来の夢をかなえるには短い時間であることから、友人らの多くは夢を叶えきれていません。
他方で、5年という歳月は、挫折する経験や嫌な経験をするには、十分すぎるほどの期間でもあります。
それなりに成功して戻ってくる主人公に対し、出迎える友人らは、表面上はにこやかにしていても、過ぎた5年の間に挫折等の暗い過去を経験しているのです。
本作は、謎解きとか動機とかはメインではなく、事件の真相を追う過程で、5年の歳月の中で何があったのかを突き止める作品なのです。
私は、昔から推理小説は好きですが、あまり謎解きとかには興味がなく、事件の奥にある登場人物らの想いとかの方に興味があるタイプでして。
そのため、私は、本作のようなタイプは好きな部類に属するのですが、推理ゲーは謎解きこそ最重要と考える人ですと、本作は期待外れに感じてしまう可能性が高いでしょうね。
また、このタイプの作品としてみた場合、普通には楽しめるし、私もそれなりに楽しめたのですが、ブランド最後の作品であり、あまり時間をかけて作ることができなかったのか、ストーリーの構成というか見せ方とかに改善の余地はあると思いましたので、ストーリー自体はそれほど優れているとはいえないでしょうね。
ところで、本作が他のエロゲと異なる点として、画面の表示の仕方があります。
通常は他のノベルゲーと同じなのですが、3人以上のキャラが会話をする場面では、テキスト欄が中央に表示され、画面の上下にキャラのフェイスウインドウが表示されます。
主人公が歌手で、帰国直後に殺人事件の容疑者とされて、それでこの画面表示方法ですからね。
大傑作である『MISTY BLUE』(1990年)を連想したのは私だけでしょうか。
ただ、『MISTY BLUE』の場合は、この画面表示がゲームデザインと連動していたのですが、本作ではゲームデザインに何も反映されていません。
その辺り、どうしても形を真似ただけの劣化版に見えてしまいます。
このブランドはちょっとしたゲーム性も入れるブランドだったので、時間があれば、ゲームデザインと連動させていたかもしれません。
ブランドに体力があれば、もっと良くなったかもしれないと思うと、ちょっと残念に思います。
まぁ、昔の推理ゲーはコマンド選択式が大半でしたからね。
推理ゲーは好きなのだけれど、コマンド選択式はもう嫌という方も結構いるでしょう。
また、90年代末からエロゲは恋愛ゲーばかりで、特に本作の発売された頃は、泣きゲーブームと、泣きゲー崩れの鬱ゲーばかりが発売されていた時期でもあり、推理ゲーは既に絶滅しかけていました。
そのため、流行の恋愛ゲー(鬱ゲー)ではなくて、昔ながらの推理ゲーがプレイしたい、でも、今更コマンド選択式ではなくて、今風のノベルゲーでプレイしたいというユーザーにとっては、本作は貴重な作品といえるのでしょう。
それもあって、私はそれなりに楽しめたように思います。
<評価>
いろいろ作り込みが甘い部分もあり、決して完成度は高くないのでしょう。
しかし、今では珍しくなった萌え要素と無関係の推理ゲーという内容に、ちょっと昔の少女漫画風というかレディコミ風というか、流行の萌え絵でないキャラデザの存在も相まって、本作が当時のエロゲの多数派と一線を画していたのは間違いありません。
その辺も考慮し、総合では佳作とします。
内容も絵柄も多数派のエロゲと大きく異なる内容ではありますが、80年代や90年代からのユーザーとかですと、懐かしさ等も相まってプレイできるのではないでしょうか。
Last Updated on 2025-03-01 by katan
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