『Forest』は2004年にWIN用として、ライアーソフトから発売されました。
古典文学やミュージカル等のパロディーで構成された、独特な雰囲気の作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
概要・・・現代の新宿を舞台に、謎の異空間・森に呼ばれた男女5人が、その森から提示される謎・リドルに立ち向かって行く、エキセントリックな雰囲気のAVG。
本作の物語は「不思議の国のアリス」や「ピーターパン」「ナルニア国物語」等の児童文学や古典文学、ミュージカルから引用したパロディーが幾重にもちりばめられ、非常に混沌とした異様な世界観を構築している。
また表示される画面もその世界観にマッチした独特の構成になっており、演出面でも奇抜で実験的な試みが数多く見られ、従来の18禁美少女ゲームとは違ったプレイ感覚を味わえる。
<感想>
ライアーソフトに関しては『腐り姫』以後注目していました。
そうした中、インテリなゲームとか人を選ぶと作品だという話を聞いて、それで自分好みかなって思い購入した作品でした。
さて、本作が上記のような評判を得た理由は、イギリスの古典文学等から多く引用しているところにあります。
好みの問題と言えばそれまでかもしれませんが、いろんな古典作品の引用が多い作品が好みという方であれば、本作も楽しめる確率は高くなるでしょう。
しかしながら、私はそれだけでは評価できないわけでして。
古典文学からだろうとアニメからだろうと、パロディはパロディですから。
しかも本作では知らない人へのフォローもないですからね。
ネタを知らないパロディほどつまらない物もないですが、そのことは本作にもあてはまるかと思います。
それとも関連するのですが、本作のライターは、やろうと思えばいくらでも分かりやすくできそうなところを、わかりにくいままにしています。
まるで専門用語で話すオタク同士の会話みたいですが、人に読ませるものでそれは駄目ではないかと思います。
どんな物であれ、本当に優れた文章は一読で了解できるものですから。
当時のノベル系のゲームに関しては、むだに小難しくすれば評価される傾向がありましたのですが、私はそれは間違っていると思います。
まぁ、オタク同士の会話であるとか、内輪ノリをあえて意図していたのであれば別ですけれど。
また、パロディ要素に頼りすぎで、ストーリー自体も単独で纏まったものでもありませんでした。
いろいろネタに使うのは構わないけれど、そこから如何に自分の作品に仕立て上げるかが腕の見せ所だと思うのですが、肝心な部分が手薄なんですよね。
私は個性を好む方ですが、本作の良いとされている部分は他所からの引用であり、個性と言うべきプラスアルファ部分が薄いのですから、さすがにこれは素直には評価しがたいかなと思うのです。
もちろん、本作には他にも魅力はあります。
1つはグラフィックでしょうか。
これまた流行りの萌え路線とは全然異なり癖がありますが、独特の絵柄はそれだけで独自の雰囲気を醸し出していました。
ストーリーともマッチしていましたし、サウンドも相まって無性に楽しいって雰囲気にさせてくれるんですよね。
そういう意味では、本作は世界観を楽しむのが一番って感じですね。
もう1つは、画面に表示されるテキストと流れるボイスが異なるなどの、ちょっと変わった演出方法でしょうか。
たしか本作発売当時は、この点で高く評価していた人の方が多かったと思います。
この演出が、ストーリーの理解を妨げる一因になった面は否定できないでしょうが、私としては、本作のカオスな面を表現する上では非常に効果的だったと思います。
こうした手法はPCのADVでは既に見られた方法でありましたが、アダルトゲームでは初めてだったかもしれませんね。
そのため、もしアダルトゲームしかやってないような人ならば、結構インパクトが大きかったかもしれません。
だからこの点をもって高く評価する人も気持ちは分かるのですが、ただ、私は既に経験していたので、他の人よりあまり驚かなかったということになります。
<評価>
う~ん、こういうゲームはね、基本的に好きなんですよ。
試み自体は高く評価したいんです。
でも、これはまだまだ素材にすぎず、悪い言い方をすれば出来損ないなんですよね。
もうちょっと煮詰めれば、きっと化けたんでしょうけど・・・
こういう発想、こういうアイデアが出てくる点では、非常にセンスが良いと思うのですが、ゲーム作りという点では逆にセンスに欠けてるように思います。
ライアーのゲームは方向性は好きなんですが、プログラムのバグ等も含めて、いろんな面で不完全なゲームが多いんですよね。
いつもいつも、本当に勿体無いです。
そういうわけで惜しい点は多数あったものの、個人的には明確な長所を感じられなかったので、楽しくはあったけれど佳作止まりなのかなと思います。
まぁ、独特の雰囲気とパロディ作品が好きで、変わった演出方法が好きならばオススメってところでしょうか。
インテリ風とか言われると誤解しちゃいそうですが、緻密にストーリーを練り上げるというより、感性に訴えかけるタイプのゲームだと思います。
そこを履き違えちゃうと、あまり楽しめないかもしれません。
少し厳しい言い方をするならば、本作を絶賛する人というのは、エロゲしかプレイしないタイプの方なのかなと思います。
いろんな作品を知っている人ほど、本作をプレイしても驚かないでしょう。
だから過度に期待すべきではないと思うものの、条件さえ揃えば刺さる人には刺さる作品だとは思うわけでして。
してがって、他人がどうのというのではなく、本作の特徴をみて、自分に合いそうかもって思ったら、プレイしてみる価値はあると思いますね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-06-10 by katan
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