『フラワーズ』は2003年にWIN用として、アアルから発売されました。
一見すると普通の恋愛ゲームなのですが、こんな作品があったのかと思わせる異質な作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
喧騒の街中で出会った、たった一人の少女。
その瞬間から、ささやかな恋と愛の物語が始まったのだった・・・。
文人墨客に愛された古い街、和澤(あいざわ)。
主人公、鳴登海は、この土地にある朋美学園に通う2年生である。
ゴールデンウィークの最終日、海は地元の楽器屋へと赴く。
はじめての楽器を買う為だ。
『音楽を始めたい』
かねてから、そう思っていた海が、その想いを行動に移したその日、今はもう日本有数の観光地である和澤は喧騒の中にあり、街は人で溢れかえっていた。
その中に居た、たった一人との出会いが、海の日々の色彩を、少しずつ変えていく事になる。
出会いと、続いていく毎日と。
ささやかな恋と愛の物語が、その瞬間から始まったのだった。
<感想>
かつて、Aaru(アアル)というブランドがありました。
デビューはPC98末期の96年です。ここの作品は、刺さらない人には全然好さが理解できないけれど、刺さる人には最高の作品になりうる、そんな大きな棘を持った作品が幾つかありました。
例えばデビュー2作目の『M HARD』なんかもそうですよね。
マゾ向け作品の増えた今となっては、逆に理解できないかもしれませんが、当時のSMゲーというと、もっぱらS向けの作品ばかりでした。
ユーザーの大半もS向け作品が好きな人ばかりでした。
だから、M向けの『M HARD』が発売されても、多くのプレイヤーはその魅力を理解しきれず、一般的にはあまり高い評価にはなりませんでした。
しかし、数少ないM向け好きから、殿堂入りのような扱いを受けており、まさに、大半のユーザーには理解できないけれど、その道が分かる人には最高となりうる作品だったのです。
作品のジャンルが変わろうとも、アアルの本質はそこにあると思います。
さて、本作は、2003年に発売された作品です。
アアルは2004年に『コ・コ・ロ…0 』を発売しており、それがブランド最後の作品となります。
『コ・コ・ロ…0 』がシリーズものであることをふまえると、本作が最後の完全オリジナル作品とも言えるかもしれません。
その本作、一見すると普通の恋愛ゲームに見えます。
個性的な作品ばかりを作ってきたアアルが一体どうしたのかと、熱狂的なファンであれば不思議に思ったかもしれません。
私は熱狂的なファンではなかったですが、あらすじだけを見た場合、過去作に比べて平凡な作品に見えたことから、最初はスルーしていました。
しかし、そこがアアル。
やはり他とは違っていたのです。
本作は、あらすじを見ても、ストーリーの説明をしたとしても、学園を舞台にした恋愛ゲームとなるのですが、他の作品にはない空気感を持っている作品でして。
いわゆる普通のエロゲとは、異質な存在なのです。
これを上手く説明するのは難しいのですが、ブランド側の説明文によると、本作は、「端的に言うならば、邦画+少女小説+エロコメ+レディコミのミクスチャー」だそうです。
少女マンガ・レディコミ的な雰囲気を持ちつつ、あるキャラに関してはアメリカンホームコメディ的なノリを織り交ぜ、そこに「間」や「流れ」を意識した演出が加わり、更にはエロゲらしからぬサウンドが相まって、全く他とは異なる恋愛ゲームが出来上がっているのです。
つまり、野球でいうと、ど真ん中のストレートかと思ったら、ゆらゆら揺れる凄いクセ球だったみたいな感じでしょうか。
いろいろ混ぜると、統一感のないバラバラな作品になりがちですが、本作がそうならなかったのは、主人公に一本きちんと筋が通っているからなのでしょう。
たとえば、この主人公、極度のシスコンでもあります。
妹は妹で、極度のブラコンです。
お互いに、愛してると言いあうくらいですしね(注:なお、攻略対象ではありません。)。
性的対象として妹を見るシスコン主人公ないし炉利好き主人公は、エロゲには、いくらでもいます。
しかし、そうした作品は、小さくて可愛い子が好きという表面的なものが多く、主人公と妹とのつながりをきちんと描けている作品は少ないです。
他方、本作の主人公は、自分の精神形成の主要部分を妹に負っているわけで、そうしたバックボーンしっかり描けているから、その言動にも説得力が生まれてくるのです。
いわゆる恋愛系エロゲと、やっていることは同じようにみえるはずなのに、ここまで異質な空気を生み出すというのは、本当に凄いです。
面白い面白くないはともかく、これこそオンリーワンなのでしょう。
こういう主人公がしっかり描けている作品は好きです。
他方で、本作が埋もれた理由としては、やはりそのグラフィックが挙げられるでしょう。
パッと見た感じ、ヒロインらのキャラデザは、当時の流行りの絵と比べると、とても貧弱に見えます。
キャラデザに癖がある点は私も同意見ですし、お世辞にも上手い絵とは言えないのかもしれませんが、イベントCGを見ると、場面をきちんと描こうとしていますので、プレイしてみると、私はわりと好印象を抱きました。
そのほか、当時賛否が分かれた点としては、「間」や「流れ」を意識した演出がキャンセル不可だったことがあります。
私は、基本的にキャンセル不可の演出は嫌いです。
作り手のエゴでしかないですからね。
しかし、本作の場合、この演出が独特の空気感を作っているのも確かなので、私はこれはこれでありかなと思いましたが、本作の持つ異質さに気付けなかった人には、ただ煩わしいだけに見えたかもしれませんね。
また、テキスト表示について、私は最近のエロゲの、テキスト欄に一文しか表示されないという状況に疑問を抱いています。
テキスト欄は3行は表示できますし、実際昔は3行分表示していました。
作品によっては、もっと表示していた作品もありますしね。
本作は、今では当たり前だけれど、当時としては珍しく、イベント以外の通常時は、一文しか表示されない作りでした。
最近のユーザーなら、あまり気にしないかもしれませんが、当時のユーザーの中には、一文しか表示されないことにストレスを感じ、それで悪い印象を抱いた方もいたようです。
私も基本的に同じような考え方なので、一文しか表示されないエロゲには、あまり良い印象を抱けないことも多いです。
ただ、本作の場合、「間」や「流れ」を意識しているのは明白ですから、そこに気が付いてしまうと、本作に限っていうならば、一文だけの表示はありなんだろうなと思います。
<評価>
これ、当時の平均的なエロゲーマーの好みと全然異なりますからね、
当然売れないだろうし、なかなか理解もしてもらえなかったでしょうね。
もっとも、本作の持つ異質さを感じ取れた方には、オンリーワンの忘れられない作品になったのではないでしょうか。
この路線で他の作品も見てみたかったです。
弱い部分もあるので、総合ではギリギリ良作としておきますが、駄作と言う人がいても不思議ではない反面、名作と言う人がいても不思議ではない、そんな雰囲気を持つ作品であり、エロゲにはまだまだ可能性があるのだと思わされた作品でしたね。
Last Updated on 2025-08-29 by katan



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