『ファイナルファンタジータクティクス』は1997年にPS用として、スクウェアから発売されました。
当時は結構話題にもなりましたが、『タクティクスオウガ』で有名な松野さんがスクウェアに移籍し、最初に制作したSRPGになります。
<概要>
ゲームジャンルはSRPGになります。
あらすじ・・・私はイヴァリースの中世史を研究しているアラズラムと申す者…
貴君は“獅子戦争”をご存じかな?
かつて、イヴァリースを二分して争われた後継者戦争は一人の無名の若者、ディリータという名の若き英雄の登場によって幕を閉じたとされている…
ここで暮らす者ならば誰もが知っている英雄譚だ。
しかし、我々は知っている。目に見えるものだけが“真実”ではないことを。
ここに一人の若者がいる。当時、騎士たちの棟梁として名高い名門ベオルブ家の末弟だ。
彼が歴史の表舞台で活躍したという記録はない…
しかし、昨年公開された(長年、教会の手によって隠匿されていた)“デュライ白書”によれば、この名も無き若者こそが真の英雄だという…
いやいや、教会によれば、この若者は神を冒涜し、国家の秩序を乱した元凶そのものだとか…
どちらが“真実”なのか?
さあ、私と共に“真実”を探求する旅へと出かけよう
<感想>
SFCのゲームで傑作或いはそれに準じると判断したゲームは少ないのですが、RPGで最も好きなのは『FF5』であり、SRPGで最も好きなのは『タクティクスオウガ(TO)』でした。
どちらも素晴らしい作品ではありましたが、それでも一長一短はあります。
より素晴らしい作品を求める場合に、素人的な単純な発想とは思いつつも考えていたのは、両方足せば良いんじゃね?ってことでした。
そんな私にとって、『ファイナルファンタジータクティクス(FFT)』はまさに願望が適った作品と言えるでしょう。
仮面ライダーで「技の1号、力の2号」、両方を合わせてできたのがV3と言われましたが、『FFT』は本当にそんな作品でしたね。
『FF5』の持つジョブ&アビリティシステム。
このシステム自体にも根強いファンが多いし、後のFFにも採用されています。
もっとも、今はイメージが先行したり美化されたりしてますが、実は『FF5』の頃はまだ単純な構造でした。
そして何よりRPGだったので、システムを十分に使いこなせなくても、レベルを上げることで解決してしまうことも多々ありました。
発想は素晴らしかったけれども、まだ完全には活かせてなかったんですよね。
『FFT』では、このジョブ&アビリティシステムの強化がなされています。
加えて、ゲームがRPGからSRPGになることで戦術性もあがり、システムをより使いこなす必要性もでてきました。
したがって、この『FFT』によって、ジョブ&アビリティシステムが完成に至ったと言っても、決して過言ではないのでしょう。
他にもFFの名を受け継ぐに相応しい、素晴らしいグラフィックとサウンドも兼ね備えていました。
特にグラフィックは、FF7のようなCG+ポリゴン路線に抵抗があった人には、こちらの方が馴染みやすかったでしょうね。
もっとも、ここまでなら『FF5』の後継作的な意味しかありません。
こここまでであれば、『FF5』より完成度はましたけれど、インパクトは劣るとの評価に落ち着いていたこともありえます。
しかし、本作の場合、『タクティクスオウガ』を作った松野さんが制作することで、そこに重厚なストーリーや松野節が加わりました。
『FF5』は他の要素に比べると、ストーリー部分が若干弱かったですからね、このストーリー強化によって、より完璧に近いゲームへと昇華していったのです。
システムの『ファイアーエムブレム』、ストーリーの『妖獣戦記2』、そして育成・総合力の『FFタクティクス』。
SRPGは数多くありますが、まさに最高峰の1本と言えるのではないでしょうか。
ところで、本作に関しては捉え方もいろいろあるのかもしれませんが、FFとTOの両方を受け継いだという本質を忘れてはいけないのでしょう。
私の友達にも熱狂的なTOファンがいましたが、似ているところを見つけてはパクリと叫び、似ていないところがあればTOはこうだったのにFFTは違うと文句を言う。
聞かされる方は真似て欲しかったのか欲しくなかったのか、一体どっちなんだよって思うわけでして。
※まぁ、友達の場合は松野さんがスクウェアに移籍したこと自体が感情的に許せなかったみたいなので、何も見てもケチをつけたかっただけなのでしょうが、でも、このケースでは、そういう人が少なからずいたように思います。
制作者が同じだからストーリーやテキストの雰囲気は似てきます。
でも、それは松野さんのストーリーのファンならば、逆に喜ばしいことではないでしょうか?
少なくとも私は、また松野さんのストーリーを楽しむことができて、素直に嬉しかったですよ。
違うとして言われがちなのは、まずは戦術面なんでしょうけどね。
SRPGと言っても、その種類は一つではありません。
タクティカルコンバットを用いただけの限りなくRPGに近いのもあれば、逆に限りなくSLGに近い作品もあります。
初代FEなんかは、かなりSLG寄りで、TOはそこまでいかなくとも比較的SLG寄りの作品と言えたでしょう。
逆に『アマランス4』とかは、かなりRPG寄りになるでしょうか。
他方で本作は、RPGである『FF5』と融合することで、RPGとSLGの中間的な位置に存在するんですよね。
少なくとも、『TO』より更にRPG寄りに作られた作品と言えるかと思います。
そうなってくると、当然面白さのベクトルは異なってきます。
『FFT』には『TO』程の戦術的面白さはないかもしれません。
でも育成する過程の楽しさは、様々なアビリティを取得していける『FFT』の方が数段上です。
『FF5』と『TO』を足したのが『FFT』であり、そのどちらが欠けても駄目なのです。
また、どちらかの要素だけで判断するのもナンセンスと言えるでしょう。
そのことはくれぐれも忘れてはいけないと思うのです。
その観点から見れば、本作はとても満足して遊べることでしょう。
それと、基本的に松野作品は発想は良くて私好みなのですが、細かい作りこみ・ゲームバランスって点はあまり上手くないんですよね。
戦略・戦術的な緻密さを求めるなら、どうしてもPCのSLGの名作の方に分があるような気がします。
SRPGに限るとしても、よりSLG寄りな『FE』の方が、その点では部があるようにみえます。
そういう意味でも緻密さの要求されるSLGより、ややアバウトなRPGっぽい作りの方が合うような気がしますね。
だから私には、『TO』は戦術性重視のようでいながら、その部分が長所になりきれていない作品であり、だからと言って、育成部分にもまだまだ改良の余地があるということで、厳しく言うならば、『TO』はどっちつかずの中途半端な作品に見えていたのです。
逆に『FFT』では、その足りなかった育成という部分が新たな長所として加わったので、『FFT』の方が楽しめたのです。
次に、分岐の要素ですか。
『FFT』は分岐がないから駄目っていう意見もありますが、私には本当にそうなのかなと疑問に思えてくるわけで。
分岐の要素によりプレイヤーの自由度は増しますが、ライターの主張したいこともぶれてしまうおそれがあります。
ストーリーが弱い場合は分岐要素は単純にプラスにもなりえるかもですが、松野さんのような個性の強いライターの場合、必ずしも分岐はプラスに働かないんじゃないかなって。
むしろ1本道の方が、松野さんの考えがストレートに伝わってくると思うんですよね。
また、『TO』は分岐と言ってもADVのそれよりも数も圧倒的に少ないし、質も伴ってなかったですよね。
実際、ルートによってはチグハグでしたし。
分岐の楽しさを味わいたいなら、ADVをやった方がずっと楽しいです。
そんな中途半端な要素を入れるくらいなら、いっそ入れずに松野さんの考えを端的にズバンと示すのもありだと思います。
まぁ、ここら辺は好みも大きいですけどね、
例えば、『ラングリッサー2』も、リメイク版の『デアラングリッサー』では分岐要素が加わっていますが、この場合も、後者の方が良いという人もいれば、前者の方が良いという人もいますから。
でもいずれにせよ、決して1本道が非難される要素とは思えないのです。
加えて、本作はグラフィックも良かったですね。
『TO』のドット絵を評価する人もいますが、中途半端に立体的なために正直見辛かったです。
本作は画面を回転することができるので、そのストレスがなくなったことは大きかったです。
サウンドも良かったし、ボリュームもありました。
やりこみに関しても『TO』より減ったとの意見もありますが、とは言っても『FFT』だって1周で100時間は遊べますからね。
並のゲームの倍は遊べるわけです。
私は、それで十分じゃないかなって思います。
少なくとも長所にこそなれ、決して欠点ではないでしょう。
また、『FFT』では、オマケ要素でサウンドノベルも付属していました。
このストーリーも良く出来ていて、結構楽しめました。
<評価>
ゲームのどこに重点を置くかで評価も変わってくるとは思いますが、私はSRPGの中では一番満足できた作品でしたね。
そのため、文句なしに名作といえるでしょう。
ゲーム部分では今でも『ファイアーエムブレムが』一番と考えていますし、ストーリーやキャラなら『妖獣戦記2』が一番と考えますが、全ての要素を含めると、やっぱりこれかなって思うのです。
ランク:AAA-(傑作)
Last Updated on 2024-12-09 by katan
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