ドラキュラ伯爵

1992

『ドラキュラ伯爵』は1992年にPC98用として、フェアリーテールから発売されました。

アダルトゲームの一つの可能性。
異端・異質な存在ながらに工夫の凝らされた良質な作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはポイント&クリック式ADVになります。

内容について入る前に、本作については、少し当時の状況から説明すべきなのでしょう。
近年はアダルトゲームの規制が厳しくなりだして、それで悲観的に捉える人もいるかと思います。
しかし規制は厳しくなったり緩くなったりと常に変化するものであり、アダルトゲームの存続の危機も1回限りのものではなく、過去にも何度かあったのです。
それについて書き出すと長くなるので今回は割愛しますが、有名なものとして、91年の沙織事件と翌92年のソフ倫発足があります。
事件のあおりを受けてか、92年のアダルトゲーム、特に事件の直接の影響を受けてしまったアイデス系のゲームは、一般作であったり18禁でもぬるめの作品が多くなりました。

たとえば92年の作品の中でも、『卒業写真/美姫』や『殺しのドレス3』、『デッドオブザブレイン』、『電撃ナース』あたりは一般作でした。
他方で『きゃんきゃんバニープルミエール』や『狂った果実』など、アダルトゲーム扱いの作品もありました。
もっとも、アダルトゲーム扱いの作品でも、エロ要素は薄かったです。
つまり、どれもエロの観点からは薄くなっているのですが、そのわりには名作・良作として名高い作品ばかりです。
エロに頼れなくなった分、その他の部分で工夫していたからなのでしょう。
前置きが長くなりましたが本作もまた、そんな中の1本になります。

<ストーリー>

主人公はドラキュラ伯爵。
ということで、本作はいわゆる吸血ものですね。
伝奇ものブームの再来で最近ではかなり増えましたが、当時は伝奇ものは下火になりつつあった印象があり、一般的にも少なくなっていたし、アダルトゲームではほとんどなかったように記憶しています。
その中で出てきたのが本作ということもあり、アダルトゲームで吸血ものというと、とっさに浮かんでくるのは今でも本作だったりします。

さて、本作のストーリー自体は復讐劇になります。
ゲームは主人公であるドラキュラ伯爵が、墓地で目覚めたところから始まります。
目覚めてはみたものの、伯爵は記憶を一部失っています。
記憶を取り戻そうと自身の屋敷に戻ると、そこにあったのは、かつて愛した者達の白骨化した無残な亡骸でした。
何故こんなことになってしまったのか、そして原因を知り復讐を誓った伯爵は、そこから過去を辿る苦難の旅へと向かうのです。

ところで、吸血ものには主人公が襲われるというタイプのもありますが、本作ではドラキュラ伯爵自身が主人公なので、むしろ襲う側です。
そして、ここからが本作の最大の特徴でもあるのですが、普通のアダルトゲームはHシーンがありますよね。
でも、主人公は吸血鬼ですので、Hシーンのかわりに血を吸うのです。
性的欲求を満たす行為が吸血行為とされているのですよ。
つまりハードなHシーンを吸血行為に置き換えているのです。
何も事情を知らないと意義が見いだせないかもしれませんが、規制に対する苦肉の策として生まれてきた発想という点も考慮すると、吸血鬼であることを上手く利用した良いアイデアとも思えますよね。

<ゲームデザイン>

システムはポイント&クリック(P&C)式のADVになります。
P&C式と言っても、実は変遷や細かい違いは多数あります。
その中でも本作は、まず画面上部のアイコンを選択し、それから画面をクリックするタイプになります。
私は直接画面クリックの方が手間が少なくて好きなのですが、本場のルーカスアーツ系も2段階型のシステムを長く使用していましたので、人によってはこっちの方が好きなのかもしれませんし、馴染みのある人もいるのでしょう。

この場合の利点としては、何をしているかのメリハリを付けられるとか、上手くシステムを使いこなせれば、ゲーム性に幅を持たせられることが挙げられるでしょうか。

まぁ、本作はそれ程ゲーム性が練られていたとも思えませんでしたので、どちらかと言うと前者の意味合いや、あとはコマンド選択式に慣れた人が親しみやすいようにってとこですかね。

P&C式は、アダルトゲームでは画面クリック式と表現する人も見かけることがあります。
確かに、アダルトゲームだけに限るならば、画面をひたすらクリックするタイプのゲームも多いです。
もっとも、本場のP&C式ADVは、ゲーム性を出すために多数のアイテムを攻略に用います。
それらアイテムは拾得後、いったんインベントリーに収納され、必要な場面で使用することになります。
海外のP&C式ADVにおいては、インベントリーは不可欠の存在であるものの、アダルトゲームでは必ずしも用いられていません。
むしろ、ほとんどないとすら言えるでしょう。
本作では、アイテムやインベントリーが存在しますので、物語の内容と相まって余計にも洋ゲーっぽく感じられましたし、その分、他のアダルトゲームよりゲーム性が増していました。

ところで、以前コラムでも書いたのですが、海外のP&C式ADVのほとんどは、主人公の姿が映るタイプ(3rd person perspective)です。
逆に国産のP&C式のほとんどは、主人公の姿が映らないタイプ(1st person perspective)です。
本作も後者に属するタイプで、主人公の姿が映りません。
移動場面では、矢印のカーソルで横スクロールします。
MYST系のADVなんかでは頻繁に見かけられるタイプかもしれませんが、アダルトゲームでこういうパターンはかなり珍しいように思います。

本作では横スクロールで移動しアイテムを取得、戻ってそれを使用ってのが一つのパターンになります。
練り込み具合は別として、アダルトゲームでこのプレイ感覚を味わうことは珍しく、中々に新鮮なものと言えたでしょう。

また、オマケモードではCGモードのほかに、ちょっとした着せ替えモードもありました。
画像にも写っていますが、メアリちゃんの服を脱がせたり後ろの別の服を着せたりってことです。

ちなみに私は、KISSの同人ソフトとかも良く購入していたような人間なので、お遊び程度であっても、こういうのがあるのは嬉しかったですね。

<感想>

グラフィックは、キャラは可愛いし(最初に見たのは白骨状態だけどw)、それでいてスプラッタな映像があるのも好みでした。
ただ、ここは好みも分かれるかもしれませんけどね。

この年のアイデス系のゲームは、嫌いな人は嫌いなのかもしれません。
何と言っても、エロ薄でボリュームも少ないのが多かったですから。
それはそれで一理あるのでしょう。

本作にしてもいろいろやっていますが、練り込みは他の傑作級ゲーム程ではありません。
でも、ストーリーや設定、システムをいろいろ工夫しようとした姿勢は、素直に評価して良いと思うんですよね。
新鮮な気持ちでゲームをプレイできるというのは、今も昔も変わらず大事なことだと思いますし。

特にシステム面での変化を追求したエルフやアリスと異なり、アイデスは物語方面での多様性を追求する傾向が強かったです。
本作もアダルト性に対する新たなアプローチという、物語方面での追求という側面を有しつつも、
インベントリータイプのP&Cという、システム面での挑戦も含まれていたわけでして。
両者で頑張るのは、アイデス作品の中でも珍しい方でしょう。

<評価>

本作は、個々の要素は必ずしも斬新とまでは言えないのですが、全体の組み合わせ方がADV全体を通じても非常に珍しく、とにかく新鮮に感じられるのです。
そのため、誰がやっても、「お!これ何か面白いぞ」って気にさせてくれるんですよね。
本作のような作品は今でも他にはないですし、その独創性は全くもって色褪せていません。
発売当時の事情も加味すると、更にその意義は大きくなるのでしょう。
したがって、総合でも名作といえるでしょうね。

エロゲ市場も様々な波がありますが、大きな規制のあった時こそ、『ドラキュラ伯爵』のような発想の転換が望まれるのかもしれませんね。

ランク:A(名作)


PC-9801 3.5インチソフト ドラキュラ伯爵

Last Updated on 2024-08-28 by katan

コメント

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    これはフェアリーテールハードカバーで移植されるだろうと期待していたけど結局でなかったなぁ
    マリアに捧げるバラードもでなかった。
    むしろ、ネクロノミコンがギリギリWindowsに滑り込んでくれてうれしい。

  2. SECRET: 0
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    この路線は好きな人も潜在的な需要もまだあると思うんですけどね。
    このまま埋もれさせるのは勿体無いし、アイデス系の資産は他にも一杯あるのですから、DL版か何かで気軽にプレイできる環境が整ってくれることを望みたいですね。

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