『Charm (シャルム)』は1992年にPC98用として、アシッド企画から発売されました。
当時としては非常に珍しい百合特化のオムニバス形式のノベルゲームで、淡い色合いが印象的な作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
形式としては全5話からなる、オムニバス形式でした。
ちなみに、オムニバスのノベルゲーということで、公式上のジャンル名は「ディスクノベルズ」となっています。
「ノベルズ」と複数形にはなっているものの、アダルトゲームで公式にノベルゲーの表記をした作品は、私が覚えている中では本作が最も古い作品となります。
大雑把なあらすじとしては、主人公の名前は英里子で、彼女にまつわるエピソードがショートストーリーという形で5本入っていて、好きな物から読んでいくことができました。
内容的には、百合ないしレズを題材とした学園ものになります。
<グラフィック>

まず目に付くのは、やっぱりグラフィックになるでしょうか。
とても淡い感じの色合いで、ちょっと独特な雰囲気を醸し出しています。
似た雰囲気の塗りは、本作の発売された92年の作品の中には、一応他にもありますけどね。
しかし、それ以前となると、ちょっと記憶にないです。
80年代のPC88時代ではなく、PC98時代になったことで、それでようやく出てきたと言えるのかもしれませんね。
その従来は見かけなかったタイプのグラフィック上で、女性である英里子視点のテキストが表示されますので、より一層独特で味のある雰囲気になっています。
この女性視点というテキストと絵柄が非常にマッチしていたわけで、エロさはあまり感じられないかもしれませんが、百合ゲーとしての作品の完成度を高めるという観点からは、相乗効果も生まれていて非常に良かったと思います。
<感想>
ストーリーは英里子の日常の一部分を描いたもので、基本的に出てくるのは女性ばっかりです。
アダルトゲームなのでHなシーンも含まれているのですが、当然ながら女性同士となります。
上記のように、本作には5本のエピソードが収録されています。
エピソードの中には、PC88時代から定番ジャンルであったレズものも含まれているのですが、一部でプラトニックな百合の雰囲気のエピソードもありました。
一応補足しておきますと、レズは女性同士の肉体の結びつきを主にしたもので、百合は女性同士の精神的結びつきを主にしたものだと思っています。
男性向けで例えるならば、レズゲーはナンパゲーとか陵辱ゲーであり、百合ゲーは純愛ゲーとなるのでしょう。
だからレズと百合は似て非なるものなのです。
その百合っぽいエピソードなんかは、個人的には特にお気に入りでしたね。
「百合+淡い絵+女性視点のテキスト」という組み合わせが実に新鮮であり、かなり良かったです。
厳密には、ストーリーそのものが良かったというのではないのでしょうが、今でいう雰囲気ゲーというのか、全体の雰囲気が凄く良かったんですよね。
この雰囲気こそが他では得られない、本作における1番の特徴なんだと思います。
もっとも、他では得られない本作ならではの個性・魅力は、マニアックであるがゆえに不遇な扱いを受ける原因ともなりました。
つまり、物語としては淡い百合テイストの雰囲気を楽しむノベルなので、重厚なストーリーを求める人には合わないでしょうし、男性主人公でなければ駄目という人にも合いません。
また、当時多かったであろうゲーム性を求めるユーザーに、本作のようなノベルが受け入れられないことも当然のことなのでしょう。
当時の他のアダルトゲームとも全く趣を異にしますので、ユーザーに良さを理解してもらえないおそれすらあります。
もう少し詳しく述べますと、本作は百合であるが故に精神面を強調し、それ故、肉体的で濃厚なエロがあるわけではありません。
もちろん、百合好きには良い作品なのですが、本作の発売は92年であり、百合ブームなんてのは、まだまだ先の話です。
百合ゲーがジャンルとして正確に認識されるのなんて、10年以上先の話ですからね。
確かにPC88時代から、レズゲーは定番ジャンルとして存在したものの、レズとは区別される百合という概念が、まだまだ定着していない時代でした。
むしろ、なまじレズゲーがアダルトゲームにおける定番ジャンルとして定着していただけに、百合ゲーに対してもレズゲーの尺度で考えてしまう人も多かったでしょうし、そうなるとエロ薄の駄目なレズゲーにしか映らないでしょう。
だから当時の多くのプレイヤーは、本作ならではの魅力に気付けなかったのではないでしょうか。
なまじレズだけが定着していた時代だけに、それでかえって偏見で誤解された可能性もあるということですね。
そもそも本作に関しては、個人的には今はかなり好きなのですが、正直なところ、私自身も初プレイ時には良さがあまり分かりませんでした。
良さを理解したのは後のことであり、後に百合属性に目覚めて、それでやり直したら、何だこれ凄く良いじゃんって思ったんですよね。
もちろん、私の見る目がなかったことも否定しませんが、本作が出た時代的なものも考慮すれば見落としても仕方ない面もあり、私同様に本作の魅力を見落とした人も多かったのではないでしょうか。
そういう意味では、ちょっと世に出るのが早すぎた作品かもしれませんね。
<ゲームデザイン>
概要にあるように、本作はノベルゲーになります。
コマンド等の類は一切なく、また開始時にエピソードを選んだ後は選択肢も全くありません。
本当にただクリックして読み進めるだけです。
本作の公式ジャンル名は「ディスクノベルズ」であり、オムニバスで複数の物語を扱っていることから、「ノベル」ではなく「ノベルズ」にしたのでしょうね。
「ズ」の有無に意味があるとも思いませんが、どっちも同じだろと考えるならば、おそらく公式でノベルと称したアダルトゲームは本作が最初なのでしょう。
ノベルゲームの起源云々に関しては以前にもコラムで扱いましたし、ここではこれ以上は割愛します。
ただ、構造的には80年代からノベルゲームは存在したのであり、ノベルという単語そのものではなくとも、似た説明のされた作品はあります。
またアダルトゲームでジャンル名にノベルと名付けた作品も、遅くとも92年の本作から既にあるわけですね。
だから96年のビジュアルノベル云々で語ることは完全に誤りなのです。
なお、形式面にこだわる人もいるので一応書いてはいるものの、私自身は「ノベル」という言葉を用いたか否かという形式面には、全く価値を見出していません。
本作が仮に初めてノベルと称した作品だったとしても、実質的に同様の構造の作品を過去にプレイしているわけですから、その点で高く評価することはないです。
ところで、上記のようにノベルゲー自体は存在していたものの、今のエロゲ市場でも紙芝居ばっかと言われつつ少数ながらもRPGやSLGがあるようなもので、当時のノベルゲーは、存在はしていても少数であり、今のように主流の存在ではありませんでした。
そして作品数の多寡は、その時々のユーザーの意識も反映しています。
人気ジャンルは、当然ながら数が増えていきますからね。
当時のユーザーは、ガッツリとハードで難しい、若い人に言わせれば面倒臭いと不評なタイプのコマンド選択式を好む人もいましたし、それは昔になればなるほど多かったのでしょう。
読むことが中心のノベルゲーがもてはやされる時代は、もう少し先の話であり、この当時は読むだけの作品は大して評価されませんでした。
それこそRPGやSLGのようなゲーム性を求める人には、そもそもゲームとして認知すらしてもらえないこともありましたし、ADVファンであっても難易度の高いコマンド選択式を好む人が多い中では、単なるヌルゲーとして見向きもされなかったのでしょう。
読むことだけに特化したノベルが認められ普及していくには、実は結構な年数を要したのです。
本作はノベルゲーが本格的に普及していく前の作品ですから、ゲームデザインの点でも早かったのでしょう。
たぶん、今なら良さを分かってくれる人もいるかと思いますが、当時はどうしても人気が出るタイプではなかったでしょうね。
まぁ、決定的に流れを変えた『河原崎家の一族』が93年末ですから、せめて一年半でも遅ければ多少は違ったのかもしれません。
いや、ここは捉え方次第ですかね。
本作だの『鏡 ~mirror~』(1992)だので下地が出来ていたから、『河原崎家の一族』のヒットにつながったとも考えうるでしょうし、鶏と卵ではないですが難しい問題ですね。
<評価>
グラフィック・テキスト等、全体の雰囲気は非常に良い作品でした。
他に百合ゲーがなかっただけに、その個性は際立っていましたし。
だから全部ひっくるめた雰囲気は良かったのですが、百合エピソードも一部だけということもあり、単純にボリュームが少ないうえに、良かった部分はさらにその一部分だけとなります。
そうなると、どうしても小粒な良作という印象になるでしょうか。
どちらかと言うと完成度がどうのって作品ではなく、他人はともかく自分は好きなんだってタイプの作品なのでしょう。
いろんな意味で異端だったんでしょうね。
マイナーブランドから発売され、ノベルという構造面からも、百合という内容面からも、当時の状況では埋もれるべくして埋もれたみたいな。
今なら珍しくもないジャンルになるのだろうけれど、発売時には極めて意欲的で挑戦的な作品だったのです。
欠点もあり名作とは言い切れないのでしょうが、レズだけではない当時ではかなり貴重な百合作品ということもあり、主観だけで判断するなら文句なしに名作でしたし、評価以上に個人的には非常に好きな作品でした。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-08-28 by katan




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