同窓会again

2001

『同窓会again』は2001年にWIN用として、F&Cから発売されました。

20年の歳月を経て、ようやくプレイすることになった本作。
私にとってそれはまさしく、ヒロインたちと久しぶりに再会できた、同窓会でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
淡い青春の日々を共に過ごした仲間達。
その友情と葛藤を描き人気を博した『同窓会』の続編が『同窓会again』となって帰ってきました。

前作より1年半が経過した師走の慌しい中、彼らの住まいである町内を舞台にストーリーは展開。
忘年会や新年会スキー旅行といった年末年始の催しを共に過ごし、微妙に変化する心。
彼らは都会に降る雪を見ながら、一体何を思うのか?

<はじめに>

『同窓会again』は2001年に発売された作品です。
私の記事は、古い作品を扱うことも多いのですが、記事を書いたり掲載したりするのが最近なだけで、プレイ自体はリアルタイムとか相当前というケースが大半です。
その中にあって本作は、極めて例外的であり、これを掲載する2021年になって初めてプレイしました。
発売されてから、実に20年経って、ようやく初めてプレイすることになります。

もっとも、本作は別にプレミアゲーでもなければ、発売当初から入所困難だったとかいう事情もありません。
もちろん、私が知らなかったなんてこともありません。
それどころか、初代『同窓会』は名作だとすら思っています。
ただ単純に、私がこの作品に対し、気になりつつもプレイする意欲が沸いてこなかっただけです。

では、なぜ本作をプレイする気になれなかったのか。
その理由は3つあります。
1つ目は、本作が続編であることです。
1作目の『同窓会 ~Yesterday Once More~』は、1996年にWIN用として発売されました。
初代『同窓会』は、今振り返ってみると不遇な作品だったと思います。
恋愛ゲーではあるのですが、その内容は、どちらかと言うとPC98ゲーマー向きであり、その後のWIN時代に増えていった、恋愛シナリオゲーマー向きではなかったからです。
PC98ユーザー向きであるにもかかわらずPC98用ではないので、PC98ユーザーは初代『同窓会』を、リアルタイムでプレイすることができませんでした。
評価してくれるであろう人がプレイできなかったというのは、作品にとって不遇と言わざるを得ません。

とはいえ、他人はともかく、私は初代『同窓会』が大好きでした。
しかし、初代『同窓会』は、それだけで完結した作品です。
完結した作品の続編は、大抵うまくいきません。
まぁ、私がそんな風に否定的になりがちなのも、他社の作品ではありますが、EVEシリーズのショックなんかが少しは影響してたかもですね。
それでそんな完結した作品の続編を、しかも5年近く経ってから出すなんて、一体何を考えているのかと思ってしまったのです。

2つ目は、1つ目に関連しますが、2000年には、アダルトゲームのほとんどがノベルゲーになり、特に恋愛系のストーリー重視の作品ばかりになっていきました。
詳しくは後述しますが、本作の特徴や魅力は、そこにはありません。
しかし、当時の私は、世間の流行に沿うような形で、key作品をはじめとした恋愛系のストーリー重視作品にはまっており、本作のような「ジャンル」の作品への関心が薄れていたのです。
そのため、本作を発売当時にプレイをしても、楽しめないであろと推測できました。

3つ目は、何と言ってもグラフィックですね。
本作の原画は、水谷とおるさんです。
水谷とおるさんは、甲斐智久名義でも作品を出しており、その代表作が『センチメンタルグラフティ』(1998年)になるのでしょう。
『センチメンタルグラフティ』は1998年の1月発売でしたが、発売はブームの終焉でもあり、実際に一番盛り上がったのは1997年でした。
少なくともオタクの間では社会現象と呼べるほどの人気で、それくらいキャラに人気があったんですよね。
繰り返しになりますが、当時は今のように誰でもPCのある時代ではなく、PCゲーをプレイできるのも、限られた人だけでした。
『同窓会』が気になるけどプレイできないという人の話も、何度も聞いたことがあります。
その水谷さんのキャラでアダルトゲームを先にプレイできたわけですから、『同窓会』を発売日にプレイできたということは、ちょっとした優越感を味わえますよね。
私は、熱狂的なファンというほどではなかったですが、それでも水谷さんの描くキャラは大好きでした。

しかし、本作のキャラを見ると、顔の下半分が少し膨れているようで、なんか違和感を覚えました。
私の大好きな原画に、堀部秀郎さんがいますが、堀部さんも『臭作』(1998年)の頃に比べると、『鬼作』(2001年)のヒロインは顔の下半分が膨れています。
もしかしたら、これがこの時代のトレンドであり、単に私がついていけてないだけかもしれないですが、理由は何であれ、この時期のこの膨れたような顔に、あまり魅力を感じることができず、それでプレイする気になれなかったのです。

<感想>

さて、ここからようやく本題に入りますが、率直な感想としては、同窓会はやっぱり同窓会だなと、懐かしくもあり、そしてある意味新鮮でもありました。

なぜ懐かしかったのか。
それは本作が変わっていなかったからです。
そしてある意味新鮮というのは、それは本作の特徴に関連します。
本作をプレイすると、ヒロインらの親とかも普通に出てきます。
本作の一番の特徴は、主人公やヒロイン等のキャラたちの人間関係が、しっかり構築されていることにあります。
メインのキャラたちの横のつながりや縦のつながりが出来上がっており、そこに一つの社会を感じ取ることができるのです。

恋愛ゲーの形は、いろいろあると思います。
そして、どの形が正解というものでもないのでしょう。
しかし、何かをきっかけとして、流行が生まれることはあります。
私自身、当時、恋愛系ストーリー重視作品にはまりましたし、その系統の優れた作品が一杯出てきたのは事実でもあるのでしょう。
だから決してそれらを否定するつもりはないのですが、他方で功績ばかりではなく、功罪共にあったと思うのです。

こうした恋愛系のストーリー重視作品は、一部ではシナリオゲーとも呼ばれていますが、この当時、いわゆるシナリオゲーが増えるにしたがい、ゲームデザイン的には個別ルートのある作品が増えました。
それにより、キャラ同視の横のつながりの薄い作品が増えていきました。
そして、内容的には、セカイ系作品が次第に人気を得ていくという時代でした。
セカイ系は主人公とヒロインの認識が世界を決めるというものであり、言い換えるならば、社会を、縦のつながりを無視したジャンルです。

繰り返しになりますが、私自身、シナリオゲーにもセカイ系にもはまったし、魅力も一杯あると考えています。
ただ、その一方で、当時のシナリオゲーの蔓延により、主人公とヒロインの関係や認識を如何に濃く描けるかだけがもてはやされ、キャラ同士の横のつながりや縦のつながりといった社会の部分が、過度に軽視される時代となりました。
その事実は、決して忘れてはいけないと思います。

このシリーズは、その軽視された社会の部分に力を入れているのであり、私を含めた当時のユーザーに受ける内容ではなかったのです。
しかしながら、上記のとおり、その時代その時代の流行はあれど、恋愛ゲーの形に正解はないはずです。
社会を無視した作品が主流とはいえ、その部分を重視した作品があっても良いはずであり、その意味では、このシリーズは今なお色褪せることがないのです。

もちろん、本作も良いところだけではありません。
上記特徴は、前作の時点で既に基礎が出来上がっているわけで、本作は、そこに時代の流れに合わせたストーリー性も加えようとしたのかもしれません。
しかし、奇跡もファンタジーもない現実的なストーリーは、他所の奇跡やファンタジーにまみれたノベルゲーと比べると地味であり、シナリオゲー好きが好むような派手な展開ではないことから、新規のファンを増やすことにはつながらなかったように思います。
前作と異なる本作ならではの価値を生み出すという観点からは、ここを強化するしかなかったと思うのですが、その点に関しては及第点止まりだったように思います。

・・・という風に解釈して書いてみましたが、そもそもストーリーの強化とか、そんなことは考えてなかったかもしれませんね。
続編というより、本作はその後を描いたファンディスクであり、あのキャラたちのその後の姿をもう一度見せてくれた、そういう作品なのかもしれません。
当時はミニゲーム的なファンディスクはいろいろありましたが、後日談等の物語をきちんと描いたファンディスクは一般的ではなかったと思います。
だから続編という扱いにしたのかもしれませんが、今であればファンディスクとして発売されていたでしょうね。
まぁ、ストーリーが地味で濃くないことにかわりはないですが。

なお、上記のようなファンディスク的な性質の作品ですので、キャラたちの人間関係を把握できていないと、本作の良さは理解できないでしょう。
そういう意味では、前作のプレイは必須といえます。
というか、前作への想い入れがあるかどうかで、本作に対する印象は全然かわってくる作品だと思います。

それから、前作では、正統派ヒロインの小早川瑞穂がメインヒロインの位置にあったように思います。
前作の頃だと、お嬢様っぽい小早川瑞穂がメインとなるのも当然でしょう。
他方で本作は、一応瑞穂と鮎がメインではあるのでしょうが、前作よりも幼馴染の若林鮎がプッシュされた印象を受けました。
この変更は何だろうと一瞬考えましたが、本作の発売時期を考えると、幼馴染キャラを推すというのも自然なのかなと思いますし、その辺りにもトレンドの変化を感じますよね。

<グラフィック>

キャラデザに関しては、上記のとおり、個人的には前作の方が好きです。
ただ、個人的な好みを除いて考えてみると、構図や塗りは良かったと思います。

それから、特に大事なのは口パクの部分ですね。
PC98時代には、口パクのある作品も割とありました。
しかし、次第にユーザーも慣れていったことから、労力がかかるわりにユーザーの驚きや満足度につながりにくいようで、WIN時代に入るとほとんどなくなっていきました。

確かに、音声のない時代の作品であれば、口パクがなくても特に違和感はありません。
しかし、音声のある作品では、音声だけ聞こえて口が動かないのは、やっぱり違和感があります。
本作と前作の大きな違いは、音声が加わったことなのでしょう。
そして本作は、きちんと口パクも装備されていたんですね。
しかも立ち絵だけでなく、一枚絵のところにもきちんとあるのです。

立ち絵で口パクがあるのに、一枚絵のCGになると、まったく口の動かない作品も結構あります。
一枚絵で口パクを入れるのは大変なのかもしれませんが、重要な場面で表示されるはずのCGで急に口が動かなくなると、まるで不自然な作り物のように感じられ、途端に興覚めしてしまいます。

本作は、立ち絵だけでなく、一枚絵のCGでも口パクがあるので、とても自然な形でプレイできるのです。
派手に目立つものではありませんし、労力のわりに報われないかもしれませんが、丁寧に作品を作ろうという姿勢は伝わってきます。

一枚絵で口パクがあるのは、必ずしも本作が初ではないですが、この時期のアダルトゲームで定期的にこれを実装していたのは、F&Cだけではないでしょうか。
この時期のF&Cには興味を失っておりましたが、こうしてあらてめてプレイをしてみると、他所のブランドにはない良さが伝わってきます。

<評価>

本作が続編であり、事実上のファンディスクでもあり、その魅力の多くが前作で形成されていること、本作ならではの名作足りえるほどの特徴と呼べるものは乏しいことから、名作には届かないといえるのでしょうが、それでも十分良作と言えるでしょう。

本作には、当時の流行路線である奇抜な行動や口癖の萌えキャラはいません。
派手な演出やストーリー展開もありません。
本作が力を入れている部分は、当時のネット上のレビュアーうけするものではありませんでした。
だからこの作品が、高い支持を得られなかったのも、ある意味理解はできます。
しかし、こういう作品を理解できる人が減り、本作のような系統の作品がなくなっていったことこそ、アダルトゲームの多様性を失わせ、窮屈になっていたことの証左ではないでしょうか。

20年の歳月を経て、ようやく私は本作に向き合うことができました。
そして、それは決して古臭さを感じさせるものではなく、あらためて恋愛ゲーム、ノベルゲームについて、考えるきっかけを与えてくれました。
敬遠するままにしなくて良かったし、プレイして本当に良かったです。
そして何より、約25年ぶりに再び鮎たちに会えて良かったです。

ランク:B(良作)


DL版

Last Updated on 2025-02-25 by katan

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